当教室の授業の様子を公開いたしますね。前にもご紹介しました小学校高学年の生徒さんです。学力や学歴は学問的でない | 星くず算数・数学教室 (hoshikuzumath.com) と 数学とは「コミュ力」のない人間の伝達手段ではないのか | 星くず算数・数学教室 (hoshikuzumath.com) に続き、3回目の登場となる生徒さんです。掲載に当たり、ご本人と親御さんの許可は得ております。
(なお、私がとくに「同じ生徒さんの話です」と断らなかった場合は、異なる生徒さんのお話ですので、そのようにお読みくださればありがたいです。)
学校の成績は振るわないそうです。塾での成績も振るわないそうです。しかし、そのことでお子さんを責めたりなさらない親御さんで、ありがたいです。
半年以上前に「面積」から学び始めましたが、だんだん学ぶ学年は下がっていき、いまでは小学1年生まで戻り「数ってなんだろうね」というような、おしゃべりのような授業をしております。ご本人も親御さんもこのように「学年を戻る」ということを嫌がらないかたで、これもありがたいです。
3回目の記事を載せることにしたのは、1か月くらい前に、そのおしゃべりのような授業で、以下の「名言」が出たからです。
「自分が得意だと思ったことは得意だ。まだ小学生だから。決めつけないで」。
私はハッとさせられました。私は「得意・不得意は他者との比較で決まる」というブログ記事をすでに2つも書いています。(律儀にお読みになる必要はございませんが、いちおうリンクをはりますね。やりたいことよりも向いていることをしましょう | 星くず算数・数学教室 (hoshikuzumath.com) 自分に向いているもの | 星くず算数・数学教室 (hoshikuzumath.com) )
私のこの話は(手前みそですが)どうやら好評らしく、Quoraでこれを書いたときはだいぶバズったものです。しかし、この生徒さんは、私が書いたようなことはすでにご存じでした。大人になったら、得意・不得意は、他者との比較で決まることをよくご存じなのです。自分はまだ小学生だから、他者との比較でなく、「自分が得意だと思ったら得意だ」と主張なさっていたのです。
私はこのところ「好きなものは好きだと言う」「嫌なものは嫌だと言う」「暑いときは暑いと言う」「つらいときはつらいと言う」「怖いときは弱音を吐く」といったことに注目していました。長いこと私に欠けた要素だったのです。「得意なものは得意だと言う」というのはこういったものの典型的な一種でした。他者との比較ではないのです。
その「自分の得意だと思ったことは得意だ」と言えた生徒さんは、きっと親御さんからたくさんの愛情を受けて育っておられるのだろうなあ・・・と勝手に想像しています。
すみません。長い記事になっていますが、少しだけ「算数・数学ブログ」らしいことも書きますね。先日は、この生徒さんと「比べられないもの」というテーマでおしゃべりをしました。「数とはなにか」という問いで、数(実数)とは「比べられる」ものですので、「では比べられないものはなんだろうか」という話題をしたのです。この生徒さんは「プライド」と即答なさいました。それから「時間」。「長く感じられる1分と、長く感じられない1分とあるでしょ」とおっしゃいました。これも、われわれが暗黙のうちに「正確に」時を刻んでいると思っている「時計」よりも、自分の感覚のほうを大切にする姿勢の伝わるお返事です。
そのほか、この生徒さんは、「基本的に世の中のものは比べられないことばかり」という暗黙の前提に立っておられることに気づかされました。なんでも数値化して比較したがる大人と比べて、どれほど健全な精神をお持ちでしょうか!このまま健やかに育っていってほしいなあ。
この親子との出会いは貴重だったと改めて思わされています。こんな授業もあるのです。
じつは、本日の午後に、またこの生徒さんとの授業があります。本日は、「自由なおしゃべり」をすることになっています。親御さんのご希望です。どんな話になるか、楽しみです。