ものの個数とお金は比例していないのに教科書だと比例している話

私の住んでいるところの近くの薬局でアイスを売っています。税込みで1個ほぼ100円です。簡単のためにぴったり100円としましょう。2個で200円、3個で300円です。ところが、3個で300円しないときがあります。3個セットで割引価格になって、300円より少し安くなっているときがあるわけです。

こういうものの売り方はよくあります。たくさん買うとお買い得になるケースです。チータラ(チーズ鱈)も、お徳用を買うとたくさん入っています。電車も初乗り料金が210円でも、2駅乗ったら420円になるわけではありません。しばらく210円で、そのうち240円とかになるわけです。

アイスの話に戻ります。アイスがどうやって作られてお店に売っているのか、私は知りません。しかし、たとえば私は若いころ、北海道で、その牧場の牛の乳で作られたというソフトクリームを食べたことがあります。どなたかが牛の乳をしぼっておられて、加工されて、運ばれて来て、お店でそれを冷やしていて、トータルのかかるお金で1個100円になっているのでしょう。ここで、「運ぶ」という手間賃について考えてみます。

私は、「ついで」になにかをするというのが苦手です。たとえば、3階にいて、1階に降りて3つの用をこなして再び3階に戻るという仕事では、しばしば3往復してしまう場合があります。しかし、多くの場合、アイスを1個、運ぶ手間の3倍の手間が、3個のアイスを運ぶときにかかるわけではないだろうと考えられます。お金というものが、たくさんものを買うほどお得になる理由のひとつとして、このようなことが考えられると思った次第です。

小学5年生の算数の教科書では、比例という概念を以下のように導入します。高さ3センチのレンガがあります。このレンガを、2個積むと、高さが6センチ。3個積むと、高さが9センチです。この場合、レンガの個数を倍にすると、高さが倍になります。こういうとき、レンガの高さは個数に比例していると言うわけです。教科書はあっさり4ページくらいで比例の説明を終えて、次の「小数のかけ算」の説明に入ります。

1メートル80円のリボンがあります。私はリボンの相場を知りませんが、知っている人によるとこれはだいたい妥当な値段だそうです。教科書のイラストには、手芸屋さんと言いますか、リボンを売っているお店があり、そこに子供たちがやって来て「リボンください」と言っています。1メートル80円で、2メートルで160円。3メートルで240円。リボンの値段は長さに比例しています。では、リボン2.3メートル(つまり小数)の値段は?という問いが載っているのです。

レンガの2.3個というのはあり得ませんでした。それで、レンガでまず比例を導入してから、2.3メートルというものがあり得るリボンの値段の話になり、小数のかけ算の話になっていくように教科書は書かれていました。

リボンについて知っている人の話によれば、リボンは2.3メートルという中途半端な長さでも売ってもらえることが多いようです。ただし、そこまで律儀に比例した値段となるかどうかはわからないようです。教科書では、80円かける2.3メートルで、184円になっていますけれども。

また、教科書では、リボンを9メートル買った場合も、80円の9倍で720円になるというのが答えになっていますが、これも、実際におそらく9メートルも買ったら割引されることが多いであろうことが想像できるわけです。

このように、お金というのは、商品の個数と比例しないのが自然であるということがだんだんわかって参ります。算数の教科書で最初にお金が出るのがどこか、よく観察してみますと、それは小学3年生の、わり算のところであるとわかります。3個で60円のチョコが、1個いくらか、という問いが載っているのです。教科書としては、60わる3で、1個20円が正解です。しかし、3個で60円のチョコは、1個20円で買えない可能性が大きいのです。3個60円というのは、3個でお買い得の価格である可能性が高いからです。しかし、教科書ではこういう場合、1個20円というのが正解になっているわけです。

お金は比例しないのが自然であるとわかりました。比例するお金として、たとえば消費税があります。消費税は、1000円買うと100円、2000円買うと200円で、倍にすると倍になっており、比例しています。ほんとうは、消費税みたいにお金をパーセントで取るものについては、お金というものの本来の性質からして、不自然だったということがわかります。

というわけで、算数の教科書ではお金が商品の個数に比例していましたが、それはお金の本質からしてあまり自然ではなかったということに気づかされた次第です。本日は以上です!

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