ストコフスキー指揮のマーラーの交響曲第2番「復活」

これはまたクラシック音楽マニア話ですが、よろしければどうぞお付き合いくださいませ。

高校3年のときにストコフスキー編曲・指揮のムソルグスキー「展覧会の絵」のCDを聴いてたまげ、ストコフスキーのファンとなった私は、それから31年が経過する48歳のいまでもストコフスキーのマニアですが、大学に入り、東大オケの皆さんが、マーラーが好きであることに圧倒されました。私はマーラーのよさなどわかっていなかったのです。とにかくマーラーの曲を聴こうと思いました。当時はインターネットなどほとんどなく、音楽を聴くとしたら、生演奏かラジオ以外では、CDを買って聴くしかありませんでした。私は、ストコフスキーの指揮したマーラーの録音は、交響曲第2番「復活」と、第8番「千人の交響曲」があることを知り、その2種の音楽のCDを買い求めようとしました。第8番も買いました。第8番の話はかつてこのブログでも書いたと思います。(東大オケの仲間でもストコフスキー指揮のマーラー8番のCDを持っているマーラー好きはいたと記憶します。)第2番「復活」も買おうと思いました。フィラデルフィア管弦楽団を指揮したCDがあるらしい。大学1年生の私は秋葉原の石丸電気に行きました。そこにはたくさんのクラシック音楽のCDがありました。ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団のマーラーの「復活」はありました。しかし、同時に目に入ったものは、ストコフスキー指揮ロンドン交響楽団によるマーラーの「復活」のCDでした。私はロンドン交響楽団のほうを買うことにしました。これが結果としてそのあと30年くらいにわたって愛聴するマーラー復活のCDとなったのでした。

それでも私が長いことマーラーのよさがわからなかった話も何度か書いていると思います。とはいえこのマーラー復活のCDは私のコレクションとなりました。いまでもよく聴いています。1枚にマーラーの「復活」が収められています。私の持っているのは1963年のプロムスでのライヴ録音で、ここにプログラムの写しがありますが、7月30日の演奏会で、レイ・ウッドランドのソプラノ、ジャネット・ベイカーのアルト、BBC合唱団、BBCコーラス・ソサエティ、ゴールドスミス・コーラル・ユニオン、ハロー・コーラル・ユニオンというソリストと合唱でした。

CDには「復活」のみが収録されていますが、プログラムによると前半にバッハの「パッサカリアとフーガ」(ストコフスキー編曲)が演奏され、マーラーの第1楽章のあとに休憩がはさまっています。これはのちに2001年3月25日に東京楽友協会交響楽団で、生で「復活」を聴く機会があったときに、指揮の家田厚志先生が第1楽章のあと、合唱とソリストの入場のとき、マイクで「通の皆さんは、ここでマーラーが5分以上のあいだをあけるようにスコアに書いているのをご存じでしょうが、われわれはあけません」とにこやかに語られたことで知ったマーラーの指示です。ストコフスキーはこの指示に忠実だったことになります。

ほか、ストコフスキーのこの曲のCDはいろいろあるのであり、たとえば、私が石丸電気で買わなかった1967年11月7日のフィラデルフィア管弦楽団のライヴ録音では、前半にバッハのマニフィカートの抜粋を演奏しています。それで「復活」の第1楽章で休憩としたのです。(この日の実況録音も結局は購入しています。)それから、1971年のアメリカ交響楽団の「復活」。これは、ショスタコーヴィチの前奏曲(ストコフスキー編曲)を前プロとしています。それくらいストコフスキーはこのマーラーの指示に忠実でした。

ストコフスキーのこの1963年のプロムスのライヴは秀逸な演奏であり、その2年後のデリック・クック(マーラーの交響曲第10番の補筆をした人物)によるインタビューでも触れられています。すばらしい演奏です。(ストコフスキー本人は、合唱がすばらしかったと言っています。)それから、ストコフスキーは最晩年に、これと同じロンドン交響楽団を指揮して、「復活」のビクターへのレコーディングが収録されることになります。これは1974年となります。それぞれの演奏に一長一短がありますが、私はこの、石丸電気で大学1年のときに買ったプロムスのライヴ録音のCDを長く聴き続けている次第です。

私が購入したのは、IntaglioというCDでした。ずっとのちに、BBCからもっと正式なものが出ました。2024年現在、これはストコフスキーのBBCのレコーディング6枚組としてリリースされています。これは、ストコフスキーマニア歴30年の私が認める名演奏の宝庫であり、高い買い物かもしれませんが、お求めになって損はなさらないと断言できます。その今年に入って出たストコフスキーのライヴ録音集の内容は以下です。

Disc 1
このマーラー「復活」
Disc 2
ショスタコーヴィチ 交響曲第5番ニ短調 ロンドン交響楽団 1964年9月17日
ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第8番ニ短調 BBC交響楽団 1964年9月15日
Disc 3
スクリャービン 法悦の詩
ベルリオーズ 幻想交響曲 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1968年6月18日
Disc 4
ブリテン 青少年のための管弦楽入門
ベートーヴェン 交響曲第7番イ長調 BBC交響楽団 1963年7月23日
ファリャ バレエ音楽「恋は魔術師」 グロリア・レーン(メゾソプラノ)、BBC交響楽団 1964年9月15日
Disc 5 
クレンペラー メリー・ワルツ
ヴォーン・ウィリアムズ タリスの主題による幻想曲
ラヴェル スペイン狂詩曲
ブラームス 交響曲第4番ホ短調
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1974年5月14日
ノヴァチェック(ストコフスキー編) 常動曲 ロンドン交響楽団 1964年9月21日
Disc 6
ラヴェル 「ジャンヌの扇」ファンファーレ
フランク 交響曲ニ短調
プロコフィエフ カンタータ「アレクサンドル・ネフスキー」
オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団 1970年8月22日

どれをとってもすばらしく、買って損はないです。私がこのほかに、パソコンに取り込んで授業前の「時間調整音楽」として使用しているものとしては、ヴォーン・ウィリアムズの交響曲第8番と、フランクの交響曲ニ短調があります。前者については、これも大学1年くらいから持っている長い付き合いのCDがあります。この日のBBC交響楽団への客演の記録についても、いずれ記事が書きたいと思っていたところでした。2001年に東京楽友協会交響楽団で聴いた「復活」は、私がこの曲を生で聴いたいまのところ唯一の機会となります。それのプログラムも残っており、その記事もいつか書きたいと思います。病気をする直前、修士論文提出直後に聴いた演奏会ということになりますね。仲間が乗っていました。本日は、ストコフスキーのマーラー「復活」についてのオタク話でした。いい曲、いい演奏です!

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