受験をいっさい経験していない大人の生徒さん
当教室での授業の様子のご紹介をいたしますね。掲載にあたりご本人の許可は得ております。
もう1年近く前にご入門くださった大人の生徒さんです。毎週、欠かさずご出席になります。
この生徒さんは、受験をいっさい経験しておられません。中学の途中から学校へ行かなくなった、とのことでした。最初に、えいやっと決めた小学3年生の教科書に沿って算数を学び続けられ、半年くらいで終わりました。引き続き小学4年生の算数を学んでおられます。
この「受験をいっさい経験していない」ということが、この生徒さんの強みであることが、授業を開始してほどなくしてわかりました。
私はかつて私立中高の教員でした。その学校はいわゆる「自称進学校」でした。そのせいで私は、「勉強とはすなわちテスト勉強である」と無自覚的に認識しておられるかたが大半である状況で長く仕事をしてきていました。この生徒さんは、「勉強すなわちテスト勉強」という観念がまったくない生徒さんであったのです。純粋に小学校算数を「学問」として認識して楽しく学んでおられます。毎回、新しいことの発見の連続です。私も非常にいい刺激になっております。
こんなに小学校算数は楽しいのか!
ここまでお読みくださっておわかりの通り、この生徒さんは、日本で最も低いと言われる最終学歴をお持ちです。多くの場合、それは「賢くない」ということを意味します。しかしそれは「学力テストにすばやく正確に答える能力」の話だけで「賢さ」の一面でしかありません。私には、この生徒さんは、非常に賢いように思えます。私の大学時代の学友は全員が東大生ですが、この生徒さんのほうが彼らよりはるかに賢いと思うこともしばしばです。
あるとき、小学3年生の教科書に、直線で囲まれた2つの池の絵がありました。われわれは周りの長さをコンパスで測りました。この生徒さんは、周りの長さが長いほうが「大きい」とおっしゃいました。本当でしょうか。小学3年生は面積を習っていませんが、周りの長さが長いほど面積が大きいとは限りません。(池の深さまで考えるとますます「大きい」という言葉の定義が異なってきます。)
その点を指摘いたしますと、この生徒さんは、よく考えたすえ、「周りの長さと面積の関係」について自分の考えに到達なさったのです。こういう生徒さんなのです。面積の求め方として「タテかけるヨコ」を知っている人よりも、円の半径の大きさから円の面積を求められる人よりも、積分を知っている人よりも、本質的に「面積とはなにか」という問いに向き合われた生徒さんだと言えるかもしれません。
というわけで、当教室で算数や数学を学ばれるにあたって、学歴や学力は関係ありません。「受験の経験がない」ことが強みとなって表れる場合もあるわけです。どうぞ躊躇なくお問い合わせをくださればと思います。歓迎いたします!