学力や学歴は学問的でない

ときどき、当教室に入門しようとなさるかたが、入門のハードルが高いとお感じになっておられることを感じるようになりました。以下に、初公開ですが、実際にどのような生徒さんがおられ、どのような授業を受けておられるのか、具体例もまじえて、ご紹介したいと思います。(ご本人の許可を得て掲載しております。)

ある小学校高学年の生徒さんです。半年と少し前くらいに入門なさいました。学校での成績は振るわないそうです。塾での成績も振るわないそうです。

しかし、ありがたいことに親御さんが理解のあるかたで、そのことでお子さんに厳しく迫ったりはなさらないようです。

半年ほど前に、その生徒さんは「概数(だいたいの数。「四捨五入」などを習う分野です)」の勉強を希望なさいました。小学校4年生の教科書から、概数を学び始めましたが、まず教科書に載っている、島根県と栃木県の面積の例が理解できないご様子でしたので、しばらくして、面積の勉強をすることになりました。

ところが、面積の勉強もよくわからないようでしたので、どんどん学年は戻っていきました。面積とは「広さ」です。広さは数で表せます。しかし、だんだん「数で表されるものはなにか」というところに戻っていき、現在では、小学1年生の「長さは比べられます」というところまで戻って「単位ってなんだろうね」「長さってなんだろうね」というところから、のんびりとおしゃべりをするような授業をしております。

おかげさまで、その生徒さんは、私に心を開いてくださっており、友達に話しかけるように私に話しかけてくださいます。数週間前にはなぞなぞを出されました。「東京スカイツリーは何県何市にあるでしょう」。こういう質問をお受けするのは初めてでしたが、こういうのは真剣にお答えしないとアンフェアであることに気づかされました。真剣に考えましたが正解できませんでした(正解は「きけん たちいりきんし」でした)。

さて、あまり賢くない小学生さんだと思われたかもしれません。しかし、この生徒さんにはたくさんの長所があります。あるとき私が「10個のいちごと4個のいちごは、どちらが多いですか」とおたずねすると「大きければ4個」とお答えになりました。これはおそらく実際のいちごを頭に思い描いているものと考えられます。

また、この生徒さんは、お料理や買い物をよくなさるようで、料理等が不得意でやらない私と比べて、「お米1合」の量の感覚や、「ぶどう1房の相場」などはよくご存じです。実体験を伴って理解なさっています。つまり、数というものが、いい意味で抽象化していないのです。

親御さんは、どうしてもお子さんの「賢さ」を点数で測ってしまいがちになると思います。しかし、人間の賢さというものは、学力テストでは測れないものがあります。いちご10個よりいちご4個のほうが多い場合もあるのと同様に、テスト100点のお子さんよりも、テスト40点のお子さんのほうが賢い面もあろうかと思います。

どうぞお気軽にご入門ください。学校の点数が低くて入門を躊躇なさることはありません。そもそも学力とか学歴とははなはだ学問的ではありませんから…。

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