2回目の学部3年生のときに聴いた印象に残るN響定期演奏会(1997年5月29日)

これはまたクラシック音楽オタク話となりますが、よろしければどうぞお付き合いくださいね。いまから27年前の思い出話です。
この1年前である1996年の4月に私は東大オケをやめてしまい、翌月に統合失調症の症状を出して学業と音楽活動を1年間休みました。この1997年の4月から学業を再開し、音楽活動も再開しています。そういうタイミングで聴いたN響の定期公演です。
この日の朝は、寮の「早朝ソフトボール大会」でした。6時に起きています。私は運動おんちであり、こういうとき、参加すると足を引っ張るので参加はしませんでしたが、勝ちました。講義(多様体)にはやばやと着いてしまっているようです。午前が講義で、午後が演習でした。このころは、午前の講義のあと、午後の演習までのあいだの時間に昼食を取るのですが、私は、当時、まだ新しかった「スーパーカップ超バニラ」というアイスを買って食べるのが好きでした。このアイスはいまでも売っていますね。いまでもよく食べます。そして、午後の演習のあと、学生会館で楽器の練習をしています。いっしょに聴く友人に会いました。
これは駒場キャンパスでのことです。東大数理(大学院)は駒場にあり、それに伴って理学部数学科も駒場で授業をしていたのでした。NHKホールはこの近くにありました。N響定期公演は、学生は1,500円であり、いつ行っても当日券があるのでした。そのようなわけで、われわれはかなり気軽にN響定期公演を聴いたものでした。この日のこともよく覚えています。いまここにプログラムがあります。ここに載せますね。
指揮 イルジー・コウト
ピアノ イヴァン・モラヴェツ
コンサートマスター 堀正文
ウェーバー/歌劇「オベロン」序曲
ヒンデミット/ウェーバーの主題による交響的変容
モーツァルト/ピアノ協奏曲ハ長調 K.503
モーツァルト/交響曲第39番変ホ長調 K.543
書いてある通りに写しましたが、このモーツァルトのピアノ協奏曲は、いわゆる「第25番」と言われるものです。
これは、5月28日と29日に行われた定期演奏会です。われわれが行ったのは29日です。N響定期演奏会は、初日を全国放送しています。ということは、われわれは全国放送されなかったほうの演奏会を聴いたことになるというわけです。
ちなみに、これはBプログラムです。ついでに、われわれは聴いていませんが、AプログラムとCプログラムも書いておきましょう。いずれもNHKホールで、イルジー・コウトさんの指揮です。
Cプログラムは以下です。
5月16日・17日
スメタナ/「わが祖国」(全曲)
Aプログラムは以下です。
5月22日・23日
ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死(字幕つき)
ワーグナー/楽劇「ワルキューレ」第1幕(演奏会形式/字幕つき)
このようなところですが、われわれはBプログラムを聴いたのでした。
4曲とも、プロの生演奏で聴いた唯一の機会だと思います。
指揮者のコウトさんは、1937年のお生まれ。このとき60歳でした。ネット検索によると、現在、86歳です。
ウェーバーの「オベロン」序曲は、冒頭のホルンソロが美しかったです。
ヒンデミットの「ウェーバー変容」は、よく知っている曲でした。なぜかと言いますと、この前の年、1995年の東大オケのサマーコンサートで、最有力候補に挙がっていた曲だったからです。曲決め総会までに、部室にあるスコアを見ながら何度も聴いたものでした。結局、この曲には決まりませんでしたが、一緒に行った友人ともども、なじみのある曲だったことになります。
指揮のコウトさんは、最後の最後で、大きな見せ場を作りました。大きくテンポを動かしたのです。ここで、楽譜を書いてお見せしたいところですが、ヒンデミットのこの曲は、まだ著作権の保護期間にあるようで、出すのをためらいます。(「引用」という形ならば著作権の侵害にならないことは知っているのですが。)いつかこのときのコウトさんの芸を楽譜でお見せできる日を気長に待ちたいと思います。
(ヒンデミットは、たとえば「画家マチス」の著作権は消滅していたりします。一説によると、ヒンデミットがどの国で作曲したかによって著作権の扱いが違うのだとか。)
休憩後は、まずモーツァルトのピアノ協奏曲第25番です。これは、プロアマ問わず、生で聴いたのが唯一の曲です。ソロはイヴァン・モラヴェツさんです。非常に美しい音をしておられました。モラヴェツさんは1930年のお生まれ、ネット検索によりますと、2015年に亡くなっています。
ずっとのちのことですが、この曲は、30歳から勤めた学校におられた数学の先生で、お好きなかたがおられました。ご一緒にYouTubeで内田光子さんの演奏を聴いたりなどしたものです。その先生は数年前に亡くなられました。この曲もその先生の思い出の曲となっています。
そして、モーツァルトの交響曲第39番です。これは非常によく聴く曲ですね。しかし私はこの曲をプロの演奏で聴いた唯一の機会です。これもコウトさんのワザが出た場面があります。これは著作権が消滅した音楽なので、堂々と楽譜が書けます。以下のような演奏だったのです。第4楽章です。

ホルン2本とヴァイオリンを書きました。この楽譜で7小節目ですが、ここで思い切りホルンを大きく吹かせるという演出だったのでした。とてもユーモラスな感じがして、よかったです。いっしょに聴いた仲間も、ヒンデミットでの演出とともに、喜んでいました。
この日は食事をして帰っています。充実したある学部3年の日の出来事でした。