素人の手料理と一流シェフの料理はどちらがおいしいか

あるネットで見た記事があります(記憶による引用で申し訳ございません)。新婚の奥さんの手料理と、一流シェフの料理と、どちらがおいしいか。何十年か前にこれをテレビでやっていたそうです。そのときは一流シェフの圧倒的な勝利だったそうです。私はその番組を見ていないのでなんとも言えませんが、直観的に「必ずしもそうはならないだろう」と思い、この記事を書いています。
私の出身高校は、伝統ある男子校でした。冷房どころか暖房もないくらいの蛮カラな校風だったと思います。私はオーケストラ部員でした。オーケストラの最大の見せ場は、9月の文化祭のステージでした。高校3年生は最高学年として夏休みはすべて部活に明け暮れていたものです(ずっとのちに中高の教員となり、「高3の夏休みは受験の天王山」と言われていることに驚いたものです。われわれは高3の夏休みはオーケストラ尽くしでした)。へたなオケでしたが、みんな全力で取り組んでいました。
われわれのときには、ムソルグスキー=ラヴェルの「展覧会の絵」をやりました。すべてを出し切って、本番を終えました。自分たちの先輩の様子も見て来てはいましたが、終演後、卒業生はみんな「男泣き」になるのです。感激のあまり。そのときは「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」の難しいトランペットソロを決めた高校2年生まで泣いていたものです(彼はまだあと1年あるのに)。
卒業して2年後、2個下の文化祭のオーケストラの発表を聴きに行きました。(1個下のを聴かなかった理由は思い出せません。)私のときの高校1年生が3年生になっており、最高学年になっていました。チャイコフスキーの交響曲第5番をやっていました。確かにへたです。しかし、彼らの情熱は痛いほど伝わってきました。「ぼくたちはこう演奏したいのだ!」というのが伝わって来ました。終演し、客席が三々五々するなかで、私はずっと残って見ていました。みんな「男泣き」を始めました。それほど、彼らは打ち込んできたのです。
ここに、ある世界的指揮者、世界的合唱団、世界的名門オケによるモーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」のCDがあります。この作品は(モーツァルトの作曲の腕は冴えわたっていますが)演奏技術的には「かんたんな」曲のうちに入ります。この演奏は、明らかに手を抜いた演奏であることがわかります。モーツァルトの「レクイエム」の「ついで」に入っているもので、文字通り「ついで」に録音したのでしょう。みんな寝ながら弾いたのではないかと思われる出来です。うまいけど。
また、ここに、ラドヴァン・ヴラトコヴィツという世界的ホルン奏者、ジャン=ジャック・カントロフという有名な指揮者によるサンサーンスの「ロマンスop.36」のCDもあります。これも、技術的にはとてもやさしい音楽です。しかし、これはまったく手を抜いていないことが聴いていてわかります。プロの演奏でもこういったものはあります。
というわけで、素人の作った入魂の料理と、一流シェフの作った料理で、必ず後者が圧倒的な勝利になるとは、私には思えないのです。
