逆が成り立つ定理

※この記事は、中学校くらいの数学の知識をお持ちであるかた向けに書かれています。当教室のブログで、こういったものは多くないと思います。もし、難しいとお感じになりましたら、どうぞほかの記事をお読みくださいね。
以下の問いは、本稿執筆時で2週間ほど前に、当教室で、三角比を学んでおられる生徒さんと、正弦定理の証明についてお話をしているときに思いついた問いです(いきなり正弦定理というものが中学数学ではなくてすみません。どうぞお気になさらずお読みください)。私はときどき「いい大学入試になりそうなもの」を思いつくことがあります。最後に紹介するブログ記事もそのひとつになりますが、そのようなうちのひとつを、約2週間前にも思いついた、ということです。
以下です。
(1)円に内接する四角形は、向かい合う角の和が180°であることを証明せよ。
(2)向かい合う角の和が180°である四角形は、円に内接することを証明せよ。
もちろん、中学数学ですから、ユークリッド幾何でのお話です。
信頼できる何人かのかたにおたずねしました。自分で言うのは手前みそなのですが、いい問題みたいです。私は最初、大学入試のような問題ではないかと思ったのですが、ある、物理・数学の有名なオンラインの先生(私の同業者のようなかた。東大の物理を出ておられる)によると、高校入試ではないかということでした。東京あたりの名門私学の高校が入試で出しそう、とのことでした。確かに中学までに習った範囲で解ける問題ですね。でも、大学入試で出るかもしれません。これから、記述式の入試の出る高校の受験、また大学の受験を考えておられるかた、また受験指導をなりわいとなさっているかたには、チャレンジしていただけたら、と思います。(この記事の最後のほうで「種明かし」をしてしまいますので、本気でチャレンジなさるかたは、この記事は最後までお読みにならないことをおすすめいたします。遊びで読んでくださっているかたは、どうぞ最後までお付き合いくださいね。)
現在、当教室において、全国模試5番の優秀な生徒さんが、この問題に取り組んでくださっています。本稿執筆時において、その生徒さんは、まだ解けていません。
この問題は、明らかに(2)が(1)の「逆」になっています。中学で習う定理のなかで、逆がちゃんと扱われていないのではないかと感じられるものとして、たとえば三平方の定理があります。三平方の定理は、以下の2つを主張しています。直角三角形の3つの辺の長さを${a,b,c}$としたときに、${a^2+b^2=c^2}$が成立することと、3つの数${a,b,c}$があって${a^2+b^2=c^2}$を満たしているとき、3つの辺の長さを${a,b,c}$とする三角形は、直角三角形になることです。これはあまり意識されていないのかもしれませんね。
そのほか、小学校の算数の教科書で、「比例のグラフは原点を通る直線になります」(小学校では原点という言葉を習わないほか、負の数を習わない関係で${xy}$平面はいわゆる第1象限だけになりますが)ということを、(どうにかして)認めた直後に「グラフが原点を通る直線になるならば、それらは比例しています」ということを使ってしまっています。小学生に、暗黙のうちに逆が成り立つことを雰囲気で認めさせてしまっています。これは中学の教科書でもあり、三角形の相似条件(2つの三角形が相似になる条件。2組の角の大きさが等しいことなど3種)を(どうにかして)認めた直後に「以下の7つの三角形を相似な三角形の組にわけなさい。また、そのとき使った相似条件をいいなさい」という問いが載っていたりします。「三角形の相似条件を満たさなかったら相似でないっていうことは習っていないぞ!」と突っ込む鋭い中学生がいてもおかしくはありません(笑)。かくも「逆」というのは扱いが軽んじられている気がしたりするわけです。
さて、逆が成り立つ定理はほかにもあります。後で触れる円周角の定理、また、そこから従いますが方べきの定理、また、メネラウスの定理などです。「同じことを違う言い方で、しばしばより簡単な言い方で、言い換える」というのが必要十分条件というものを考える意義だったりもしますので、当たり前なのかもしれません。「3次元球面は、単連結な3次元閉多様体である」ということも、逆の成り立つ性質でした。(私が院生であった、2003年ごろに、100年ぶりくらいで証明されました。3次元ポアンカレ予想です。)
さて、以下に先ほどの問題の「種明かし」(証明の方向性)を書きますね。(1)は、中学の教科書に載っている有名な性質でして、教科書がどういった論理で書いてあるか、頭のなかで整理されている人には解ける問題でしょう。(2)が肝心な問いですね。これは、円周角の定理の逆と同じことを主張していますので、円周角の定理の逆の証明と、同様な証明となるわけです。円に内接しない四角形の向かい合う角の和は180°にならないことを示すことになります。中学の教科書に載っている、円周角の定理の逆の証明が、私の知る限り、すべてそうなっていますので、それよりうまい証明はないのだろうと推測します。(1)を使うことになりますね。採点者の力量も問われそうな気がします。(採点がめんどくさそうということですね。)
さて、最後に、今年(2023年)の3月に思いついた「大学入試の良問」みたいなものを書いたブログ記事のリンクをはって終わりにしますね。数学的帰納法を使って | 星くず算数・数学教室 (hoshikuzumath.com)
それではまた!本日もお読みくださりありがとうございました!
※2023年10月28日の付け足しです。本日、教科書を読んでいて気が付いたことですが、この(2)も、高校の教科書に載っている、という点です。「数学A」の教科書に載っていますね。しかも、私が上に書いた証明よりもちょっとだけ「鮮やか」です。四角形をABCDとしまして、三角形ABCの外接円上に点D’をとって、円周角の定理の逆を使うのです。1本取られました。我ながら恥ずかしいですが、逆に申しますと、以下のようなことも言えます。すなわち、この問いは、Quoraを含め、あちこちで宣伝し、あちこちの「数学自慢さん」に聞いて回ったわけですが、どなたも「それは教科書に載っていますよ」とおっしゃらなかったということです。皆さんけっこう教科書を読んでおられないな(私もですけど)、ということがわかってしまいました。以上です!
