「価値」の数値化が「金額」?

先日、久しぶりにある付き合いの長い友人とオンラインで話しました。彼は、私の5歳くらい下の、教会での友人です。私が20代前半、彼が10代くらいからの付き合いではないかと思います。細い糸のようなつながりが続き、2015年くらいに「ぼくはクラシック音楽が好きになったんだよ!」という連絡をもらって付き合いが「復活」しました。(私は若いころからクラシック音楽が好きでした。)私は2年と少し前に仕事を失いましたが、そのころから彼のアドバイスには頼っていました。離職票のこと、ハローワークのことなど・・・。

そして、彼の私への最大のアドバイスは「きみは勤めること自体が向いていない!」という一言でした。これは私を客観的に見た場合、明らかな事実だったようですが、自分で自分は見えませんからありがたいアドバイスでした。この一言で、私はつぎに勤めること自体をあきらめ、自営業の道へと進んだのでした。

それで、先日、久しぶりにしゃべったわけです。話すことがワンパターンである私は、最近の発見である「好きなものを好きと言えないとお金の価値はない」ということを話しました。彼は「それはみんなが当たり前に思っていることをあえて言葉にするとそうなる」と言っていましたが、以下のような例を挙げてくれました。

彼は最近、あるプロのオーケストラを生で聴いたそうです。A席で2,000円だったようです。彼は、2,000円を払って映画を見ることはないそうです。しかし、2,000円を払ってクラシック音楽のオーケストラのコンサートを聴くことはあるわけです。また、アマチュアオーケストラで500円または無料のコンサートもあるが、やはりプロの演奏はさすがであって、きちんとお金を払ってプロの演奏を聴く価値はあること。それから彼は、最前列の席が好きだと言っていました。クラシック音楽のオーケストラのコンサートだと、通常、真ん中あたりの席がよいとされていて、その辺の席が実際に高いが、自分は最前列の席が好きだと。その理由として、迫力があること、指揮者の聴いている音そのものであること、一般には人気のない席であることから当日でも買えたりすること、また、足を前に出して聴くことができることなどもあると言っていました。

これはお金の価値です。好きなものを好きと言うことによって存在するお金の価値です。世の中にはもちろん2,000円を払って映画を見るかたもおいでになるでしょう(だから映画2,000円の商売が成り立つのです)。2,000円を払ってオーケストラのコンサートを聴かないかたも少なからずいらっしゃるわけです。これは「映画よりもオーケストラのコンサートが好きだ。最前列の席が好きだ」ということが言えないとお金の価値はない、ということになります。

賢さの数値化が、点数とか成績とか偏差値とか学歴と言われるものでしょうか。数値化されると比較できるのか、比較するために数値化するのか、とにかく実数というものは数直線と同一視できますので(${\mathbb{R}}$と書いて実数全体を表し、位相が入っているものとみなすと数直線を意味します)、「大きい/小さい」「高い/低い」でもなんでもいいですが、直線上の点として、比較ができてしまいます。人間の賢さが数値化できるはずはないのですが、あえて(比較するために?)数値化したのが成績であったりするわけです。これと同じくらいナンセンスなものが、「価値の数値化」である「金額」であったりすると思われるわけです。

どろぶねに乗っている人ほど、人と自分を比較して自分が下だとどろぶねから落ちますので、たとえば2,000円を払って映画を見る人をバカにしたり、逆にクラシック音楽のコンサートに2,000円の価値を見出す自分を自慢したり、また、最前列に座ることを喜んでいる人をバカにしたりしがちです。価値が金額で数値化されて数直線の上に一列に並ぶとしたらそうです。大船に乗っている人ほどこういった「比較」とは無縁であり、自分と人とは違う、ということを暗黙の前提としています。子供が3人いたら、三者三様のキャラを持っているので、三者三様の育て方をすることになります。

彼の「最大のアドバイス」もそうでした。「ぼくは勤めないと食えないタイプだけど、きみは勤めることそのものが向いていない」。彼は、自分が自営業として成功したから私にも自営業をすすめてきたわけではないわけです。むしろ、自身は自営業が向いていないタイプで、かつ、私に自営業をすすめてきたわけです。「自分と人とは違う」のです。

これは、当たり前に思えている人からしたらひたすら極めて当たり前な話であるわけでした。

つい先日、テレビのバラエティ番組で、日本のアニメが世界でどれだけ愛されているか、というのをやっていました。どういう計算か知りませんが、経済効果として「3兆円」という金額が挙げられていました。私は「また価値を金額で数値化したな」と思って見ていました。アニメの価値とは「進撃の巨人おもしろい!」とか「ドラゴンボール大好き!」というものであるわけです。でも、数値化して比較するのが人間のさがなのかもしれませんね。

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