「数学Ⅲ」かと思ったら小学5年生の算数だった(JASRACに払う著作物使用料の計算)

本日は、「無限等比級数」などが出て来て、一見、高校の「数学Ⅲ」の内容である気がしますが、実際には小学5年生の算数ですので、そのつながりを楽しんでいただけたら、という思いで記事を書きたいと思います。よろしかったらどうぞ寄って行ってくださいね。

一昨年(2022年)、仕事を失いました。どうにか生計を立てようとして、少し回り始めた仕事が「採譜」(耳コピ)でした。私には、耳で聴いた音楽をそのまま楽譜に起こせるという突拍子もない特技があります。(クオリティは間違いないです。とくに完コピは神経をすり減らしますのでちょっと高いですけどしっかりやります。)それで、ココナラで、検索で上位に来るようになり、友人の弁護士に教わりました。著作権については、JASRACに言ったほうがよいこと。私は、JASRACに正直に言って、それまでの著作権侵害を見逃してもらう代わりに、2022年9月6日より、法的にホワイトな採譜者となったのでした。

JASRACには国内作品と国外作品の区別があります。国外作品のほうがずっと著作物使用料が高く、また手続きも複雑でした。つい最近、はじめて国外作品を手がけましたが、高いのでだいたいご予算とマッチしません。国内作品については、「売り値の10パーセント」が著作物使用料であると定められています。この計算について、JASRACさんは、電話をしてくるようにおっしゃいました。私は電話をしました。これは、理解するのに少し手間を要した話です。

簡単に申しますと、定価を10,000円とした場合に、国内作品ならば、著作物使用料はその10パーセントで、1,000円となるわけです。これは、あくまで売り値の10パーセントです。たとえば、私が定価を10,000円としますと、ココナラであれば、ココナラさんが仲介手数料22パーセントをお取りになりますので、2,200円はココナラさんのものとなり、私の手元に入って来るのは7,800円となります。ここで著作物使用料は780円とはならず、あくまで1,000円となるわけです。ここで、税とか振込手数料みたいなものを考えなければ、私の収入は6,800円となるわけですが、ここはあくまで仲介手数料もなかったものとして、それでも私には即座にはJASRACの計算は理解できなかった、というお話をしたいと思います。

そのとき、お客様はたまたまおられました。仮にわかりやすく、私は10,000円を欲しかったとしましょう。私は、1,000円を上乗せすればよいのだ、と思いました。定価は、11,000円です。これも何度もJASRACに問い合わせました。これの場合ですと、売り値が11,000円となってしまうため、その10パーセントは、1,100円となってしまいます!100円足りない!というわけで、11,100円を定価とすると、今度は売り値の10パーセントは1,110円となります。いたちごっこです。これは、いわゆる「無限等比級数」がどこに収束するか、という問いになります。高校生でも理系が学ぶ「数学Ⅲ」の知識になると思いました。実際、私は無限等比級数の公式を用いて計算したものです。少し原理をご説明いたしますね。

${S=10000+1000+100+10+1}$としますね。${S}$は和のSUMの頭文字です。ここで、${0.1S}$を考えますと、${0.1S=1000+100+10+1+0.1}$ですね(両辺を${10}$で割りました)。この2つの式の左辺と左辺、右辺と右辺を引きますと、${S-0.1S=10000-0.1}$となります。途中の${1000+100+10+1}$は打ち消しあうわけです。そこで、${0.9S=9999.9}$となり、${S=9999.9\div0.9=11111}$となって計算があいますね。

ここで、この和が果てしなく続くものとして、どこに近づいていくかを考えます。どこかでやめれば近似の値が出ます(この11,111円で充分な近似ですけど)。これを律儀に計算しますと、さきほどの${10000-0.1}$という式の${0.1}$が、果てしなく${0}$に近づいていきます。そこで、その和を改めて${S}$としますと(同じ字を用いてすみません)、${S-0.1S=10000}$となるわけです。無限等比級数です。

しかし、何度もJASRACに聞くうちにわかりました。ようするに、JASRACに10パーセントを取られるのですから、0.9がけの金額をいただけるわけです。つまり、0.9をかけて欲しい金額にする、つまり、欲しい金額を0.9で割ったものが定価になるべきなのです。ここで、この計算は、無限等比級数から、小学校5年生の「小数のわり算」になりました。確かに${10000\div0.9}$となって、同じ計算になります!なんということ!いま初めて書きましたが、私は小学校5年生の「小数のわり算」もわかっていなかったのです!無限等比級数の和の公式まで出して考えてしまった!!

JASRACには「9,000円が欲しいときは、10,000円の値段をつければいいのですね。10,000円から10パーセントの1,000円を引かれて9,000円ですから」と言いました。JASRACさんは「その通りです。ただ、手渡しでもない限りはなんらかの仲介手数料があるでしょうけどね」とおっしゃいました。その通りです。確かにこれはわかりづらいので、電話をかけさせられたのも無理はないですね・・・。(私はたまたま専門が数学でしたけど、多くの音楽家の皆さんはそうではないでしょう。かくいう私もぽんこつでしたが)

さっきのように、ココナラに22パーセントを取られて、かつJASRACに10パーセントを払わねばならないときは、定価の68パーセントが実際の収入となります。これは欲しい金額を0.68で割ったものを定価とすればよいのです。するとだいたい5割増しですね。0.68はだいたい${\frac{2}{3}}$ですからね。

だいたいここまでですが、あと二言、付け加えますと、1つは、このように算数の教科書で、お金というものを割合で考えるようにされていると、それが当然に思えてくるわけです。キリスト教でときどき聞く「十分の一献金」、収入の十分の一を献金せよという教えみたいですが、これは当然、貧乏な人が収入の十分の一も出したらきついのでありまして、逆にお金持ちはもっと出しても大丈夫です。しかし、こういう定めのある旧約聖書の「律法」を見ましても、聖書をやや斜めから見ますと、「坊主丸儲け」に見えます。当時の「祭司」がすべて儲かるように書かれているとも言えるわけです。当時は、献金とは税でした。いまも消費税が「十分の一税」です(10パーセントだから)。これは、お金を取る側としては都合のよい計算であるわけです。お金を割合で考えること。皆さん、だまされぬように気を付けましょうね。

そして、2点目。お金というのは、払うほうももらうほうもハッピーになってこそです。ついきのうも私はココナラで採譜のご依頼をいただきました。マッチしませんでしたが、定価を示して、大幅に値切っていいことを書きました。結婚披露宴の出し物として、楽譜が欲しいとのことのようでしたが、私としては、良質の楽譜を提供してお客様に喜んでいただき、なおかつ謝礼もいただけると、そういうのが「お金」であることに気が付かされつつあります。お金の価値をきちんと理解したいと思います。

というわけでありまして、数学Ⅲの無限等比級数かと思ったら、小学校5年生の「小数のわり算」だったというお話でした。小学校の算数はあなどれませんね!

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