筆の勢いと微分係数

小さいころ、動物の図鑑を持っていました。ぼろぼろになるまで読んだものです。動物の走る速さが書いてあるページがありました。最も速いのがチーターで、時速100キロ以上が出ていたと思います。ウマが時速80キロくらい、キリンが時速51キロ、ゾウが時速40キロ。人間は時速36キロでした(100メートルを10秒とするとちょうど時速36キロですね)。これらが、速い順に載っていました。しかし、この絵は幼心にも少し違和感がありました。チーターが先頭にいるのです。先を走っているのが最も速いのだろうか。

たとえば、前を走っているけれども、たったいまゆっくり走っている人と、後ろのほうを走っているけれども、たったいますごいスピードの出ている人と、どちらが「速い」と言えるのでしょうか。あるいは、たくさんのお金を持っているけれども、たったいまそれほど稼いでいない人と、いまの所持金は少ないものの、たったいますごい勢いで稼いでいる人と、どちらがより稼いでいるのでしょうか。高熱が出ている人と、たったいますごい勢いで熱が上がりつつある人の関係も同様です。小学校4年生で「折れ線グラフ」というものを習います。「変わり方」の問題ですね。

「筆の勢い」という言葉があります。たったいま、すごい勢いが出ている人の文章は迫力があります。私もこうしてブログなどを書く経験から少しだけ知っています。知識の量は少ないときでも、たったいますごい勢いで理解しつつあったときの文章の「熱量」が高いという経験です。私には5年前の著作である「永遠の命」という本があります。(サムネをご参照ください。)いまとなっては恥ずかしいくらいなにもわかっていないころの本ですが、そのときは全力を出したのです。筆の勢いのある本だと思います。

名チェリストの故・ロストロポーヴィチが言っていました。バッハの無伴奏チェロ組曲を弾くたび、新しい発見があると。確かに、経験の蓄積だけで弾いていたら、マンネリ化して、おもしろい演奏はできなくなるのでしょう。私も、東大オケのツアーでの演奏のことを思い出します。ツアー中も、常に練習をするのです。常に「瞬間最大風速」みたいなものが出ないといい演奏にはならないということだといまになって思います。

位置を時刻で微分すると速度になります。「位置」と「速さ」の関係は、このようなものです。「たったいま猛烈に体温が上がりつつある」というのは、瞬間の変化率であり、微分係数が高いということになります。「筆の勢い」とは「微分係数」のことだったのです。

先日、社協に電話しました。まとまったお金が社協から借りられると聞き、その条件を聞いたのです。おもに3つ、ありました。①現在の所持金が少ないこと、②収入が少ないこと、③返せるあてがあること、でした。③は、たとえばいま病気をしているが、半年後には回復していて、働けるという医師の診断書などが必要になるということでしょう。半年後には返済がはじまるそうです。ここまでお読みくださったらお分かりいただけるかと思いますが、おおざっぱに言って、①の所持金を微分したものが②の収入だと言えます。これは、後ろのほうを走っていてしかもたったいまのスピードが遅い人に、お金を貸しますよ、という制度であることがわかるわけです。

というわけで、ほんとうに困っている人は、社協からお金が借りられるのです。こういうことは学校ではなかなか習いません(納税の義務はやたら習いますけど…)。こういったことを知らないばかりに、月末や、とくに年末に自殺をなさるかたがおいでになります。多くは支払いができないゆえでしょう。どうぞ絶望なさらず、ヘルプを出してください。どこかから助けが来るでしょう。私もその作戦でどうにかこの星くず算数・数学教室をやっています。ある種のあつかましさは大切ですね。

そのようなわけで、本日は、筆の勢いと微分係数のお話でした。(この記事は「瞬間最大風速」がでている記事ですかね?)

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