「大人の発達障がい」セミナーでスターになった話(2019年11月22日)

前に勤めていた学校で、休職と配置換えを繰り返し、2019年度から総務で働くようになった年の話です。私は2016年、40歳で発達障害の診断がくだりました。このいまから5年前の時点で診断がくだって3年にはなっていました。それで、総務で「大人の発達障がい」という人事向けのセミナーの案内が来たのです。私は上司に行きたいと言いましたが、上司には、職場に還元できないと言われ、有休を使って自腹を切って参加したのでした。

当日、行きました。ワークの多い研修会でした。前に座っていた大会社の人事のおふたりの女性、および隣の社労士の男性と4人でチームとなりました。日記には「講師の先生の話は知っていることが多く、あまり新しく知ることはなかったが、おもしろかったのは、その4人のなかで私は『スター』になってしまったことである!」と書かれています。まず、3年半前に発達障害と診断された当事者で、自腹を切って有休をとって来ていること、すぐにレジュメの誤植をたくさん指摘したりしている時点でスターでした(ほとんどの皆さんは会社に「来させられている」人事などの人でした。つまり、雇用する人に発達障害のある人がいる、という立場の人)。

たとえばケーススタディで、暗黙のルールが分からず、通行してはならないところを通行したAさんを上司が注意したら深く落ち込んだという件がありました。皆さんこのセミナーに集まっている時点で、障害者への理解を深めたいという人ばかりなので、真剣に考えすぎに私には見え、私が「そのくらいしかたないではないか、私は普段からもっといろいろ厳しいことを言われているし、その上司の注意はごく普通の対応ですよね」と申し上げたら、皆さん目からウロコが落ちたみたいでした。

この会場でいっしょうけんめい考えても、会社に持って帰れなかったら何の意味もない、と発言してまた「スター」になりました。

忘れ物には持ち物のメモ、締め切りが守れない人にはスケジュール帳、というのも私の「スター」発言となりました。

次のケースでは「本人は一生懸命がんばっていますが、上司の言うことが理解できないことが多く、ゆっくり育てようとしている上司や周囲も疲れ気味です。本人も上手くいかなさから、自分には何か障害があるのかもしれないと相談に行っていることは伝え聞いています」と資料に書かれてあり、ご覧の通り、相談に行っているのが本人なのか上司なのか、主語が抜け落ちていて、まさに空気が読めない私には理解不能でした。「しかしそういう誤解を招かないようにすることが、このセミナーの意味なのではないか」と日記には書かれています。

その社労士さんの話で、社員に発達障害がいますが、いかにしてクビにできますかという相談ばかりと聞き、世間は厳しいなあ(その時点でまだ私は勤めており、ダメ事務員で、まさにクビを恐れていました)と感じたりしていました。

最後に事前に集めた質問が10個載っていました。その2番目を引用します。「障害者雇用の一環で、発達障がい(ASD)の部下がいます。診断名はASDですが、それ以外にも、LDやADHDのような傾向も感じています。発達障がいの症状は非常に多様であり、濃淡がありますが、いくつも併発していることがありますし、それが起こるプロセスも複雑と思います。文献で得られる『ASDはこのように対応したらよい』との知識が一概に当てはまらないと感じており、部下の特性が十分に理解できず、指揮命令に苦労しています。本人の障がいや多様性(や雇用上の留意点)をどのように多面的・客観的に把握するか、また周囲にどのように理解してもらうか、雇用管理と働きやすい職場づくりに向けた工夫をお伺いできたらと思います」という質問について、私が「めちゃくちゃに理解のある上司ですね」と言ったらもう完全にスターでした。(だって私の職場にこんな上司はいなかったですもの。)

10の質問のうち9番目と10番目は私の書いたものでした。100人くらいは参加していた会場で、質問が10のうち2も載る(しかもラス2と大ラス)は「なかなかすごいだろう」と日記には書かれています。私の質問を引用します(少し講師の先生の手が入っていますが、資料から写しますね)。

Q9「発達障がいには『強み』があり『弱み』があります。障がい者の特性を活かして会社の戦力にできれば、障がい者にとっても会社にとってもよいことでWin-Winだと思われますが、それは理想であって、現実にはどれくらいの企業が、障がい者の「強み」を活かし、「弱み」をカバーしてやっておられるのでしょうか?たまに成功例をテレビで見たりしますが、それは、わざわざテレビで放送するぐらい、まれなことではないでしょうか?」

Q10「『うちの企業は障がい者に配慮しています』とうたっている会社が、配慮していると思っていたとしても、実際にはまったく障がい者に配慮出来ていない、というケースが結構あるような気がしますが、いかがでしょうか?障害者手帳を持っている人たちの中には、他の社員には手帳を持っていることを知らされていないにも関わらず、事務的にはカウントされ、雇用率にカウントされるケースがあります。これでは、雇用率の意義はないと言えるのではないでしょうか?(少なくとも、これでは障がい者への配慮というものがなされません。なぜなら誰も、誰が障がい者か分からないからです。)」

われながらなかなか鋭いようですが、これは当時、まったく理解のない職場で苦しむ私の心の叫びであったとも言えます。

日記には「私が当事者の視点から見ていると、そのうち自ら当事者の視点で見るようになったかたもあり、私が人の役に立った!」と嬉しそうに書いてあります。当時、10年以上にわたって理解のない職場におり、「人の役に立つ」ことがほとんど皆無だった私の心の声でした!

最後、私が質問の列に並んでいると、ワークでご一緒だった3人のかたが、それぞれごあいさつに来られました。ずいぶん私がスターだったからです。当時としては破格にありがたいことでした。

ちなみにこの日は金曜で、まだコロナは流行る前であり、このあとリアル教会の金曜の夕礼拝に行き、牧師が説教で「天の国の鍵」と言うべきところで「教会の鍵」と言っていて、それも指摘してヒーローになっていたりします。こういうところで、散発的に自己肯定感を上げて、職場のダメダメな自分を少し「持ち上げ」るしかなかったのでした。それにしてもありがたい日でした。こういう日の積み重ねののちに、現在の私があります。感謝して歩みたいと思います。本日は5年前の「大人の発達障がい」セミナーで、「スター」となってしまった話でした。

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