棒グラフはなぜ棒か

当教室での授業の様子をご紹介したいと思います。ご本人の許可を得ています。

小学4年生の生徒さんです。ご入門時は3年生でした。最初は「教科書にない楽しい算数」を習っておられました。楽しかったです。しかし、だんだん、その小学生さんは、非常に「賢い」生徒さんであることがわかって参りました。

小学4年生の最初のころ「グラフのなぞ。棒グラフはなぜ棒か」というご質問をいただきました。とてもいい質問でしたので、私もよく考えました。これは統計というものの本質にかかわる根源的な問いでした。棒グラフを習うのは、小学3年生です。その生徒さんは、1年近く、この問いを考え、また疑問を言語化なさっていたのでした。私は「小学1年生で長さは比べられることを学び、小学2年生で長さは数で表されることを学ぶ。そして棒グラフとは、その逆に、数を(棒の)長さで表すものだ」とお答えしました。とても納得してくださいました。ある大学の数学の先生の言葉で「質問で得られるものは、その質問をする前にどれだけ考えたかによる」というものがありました。この生徒さんの問いはまさにそれでした。

また、「正三角形は二等辺三角形の一種か」という話題であったときにその生徒さんは「赤えんぴつはえんぴつでない。お湯は水でない」とおっしゃいました。確かに正三角形は二等辺三角形の一種なのかもしれません。同様に「赤えんぴつ」を「えんぴつのうち赤いもの」ととらえれば赤えんぴつはえんぴつです。しかし、たとえば先生に「えんぴつ持ってきて」と言われて赤えんぴつを持って行ったら「違う」と言われそうです。確かに赤えんぴつはえんぴつではないのかもしれません。「お湯」と「水」の関係も同様です。暗黙のうちに冷たいものを「水」と呼ぶのかもしれないからです。柔軟かつロジカルなご意見でした。

それからこの生徒さんには「1.5は奇数だ」という発言もありました。(まだ学校で「偶数」「奇数」を習っておられませんでした。)これは非常に賢い人の間違い方です。私も大学院までいろいろな人を見て参りましたが、明解な人ほど明解に間違うのです。頭脳明晰な人ほど明晰な間違いをすると申しますか。ここで私は思わず理由を聞かずに正解を言ってしまいましたが(私の失敗です)、想像するに「2で割り切れる数を偶数と言う。そうでない数を奇数と言う。1.5は2で割り切れない。よって1.5は奇数だ」と思っておられたのかもしれません。

このようなわけで、単純に学力テストで測れないような賢さを持った生徒さんがときどきおいでになります。この生徒さんは、「3けた足す3けたの足し算」のような計算練習だけの勉強はお嫌いなようでした。この生徒さんの真の賢さを理解するのに、お互いに半年くらいかかりましたが、ご入門を躊躇しないでいただきたい生徒さんです。どうぞご入門ください。大歓迎いたしますよ!

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