ブルックナーの交響曲第5番を初めて生で聴いた(2025年2月7日)

これは私がしばしば書く演奏会の感想の記事ですが、珍しく、何十年も前の話ではなく、最近の話です。今年(2025年)の2月7日に、サントリーホールで読響(読売日本交響楽団)の定期演奏会を聴いた話です。とてもいい演奏会だったのです。なるべくマニアックになり過ぎないように書きたいと思います。
ブルックナーの交響曲第5番は、学生時代から好きな曲でしたが、生で聴く機会がなぜかなかった曲です。私は最近ようやく、自分の好きなことに時間とお金を使おうという気になっていました。それで、このコンサートを知ったわけです。当日の2か月ほど前に、チケットを買いました。奮発してS席を買いました。そのかいあってのいい演奏会だったのです。
ブルックナーの作品を生で聴いた過去の記録を書きます。
1997年3月6日 交響曲第8番ハ短調 (朝比奈隆指揮N響)
1997年12月22日 ミサ曲第1番ニ短調 (高階正光指揮、緑会合唱団、東大オケ)
1999年1月22日 交響曲第6番イ長調 (早川正昭指揮、東大オケ)
1999年10月7日 交響曲第7番ホ長調 (曽我大介指揮、ワセオケ)
これに加えて、1999年11月20日に、東工大のオケで、お亡くなりになった学生さんの追悼演奏で、交響曲第7番の第2楽章の一部が演奏された(末永隆一先生の指揮)のもあわせて、すべてでした。つまり、このたびの2025年2月7日というのは、21世紀に入って初の、ブルックナーの作った曲を生で聴く機会だったことになります!(いま、自分でも調べて驚いたところです!)
改めて、プログラムは以下です。
ブルックナー 交響曲第5番変ロ長調
ロータ―・ツァグロゼク (指揮)
当日は、授業をはじめ、予定をいっさい入れませんでした。それで、開演は19時でした。金曜日でしたので、お勤めの終わった皆さんにあわせた演奏会と言えるでしょう。あとから、その日の明るいうちに、友人の家に行く予定を入れました。当日は、その友人宅へお菓子を持って行って、おしゃべりをしたのち、ホールに向かったわけです。
早く着きすぎる懸念はありました。実際、早く着きすぎました。しかし、私は歯磨きがしたくなりました。直前にお菓子を食べたためです。ホールの近くにあったスーパーで、歯磨きセットを買い、近くのトイレで歯磨きをしました。それで中途半端に時間があまり、付近のスタバで、ミネラルウォーターを飲みました。それで改めてホールに行きました。
読響の何人かのかたは、事前に出演を調べて行きました。チェロの遠藤真理さんは、出演されているはずでしたが、指揮者の死角になって見えませんでした。
指揮者のツァグロゼクさんは、初めて見る指揮者でしたが、82歳の(おそらく長身の)ドイツ人で、力いっぱい、指揮棒を振り下ろすタイプの指揮者でした。考えてみると、こういう指揮は、かつてよく見た、古典的な指揮でした。久しぶりに貴重なものを見たことになります。
冒頭を聴きながら、以下のことを改めて思いました。以下の楽譜は、コントラバスの冒頭です。この2小節目の頭の音(ミ)は、4弦のコントラバスの最低音です。このために、ブルックナーはこの曲を変ロ長調で書いたのかもしれない、とも思いました。少なくともこのイメージはあったはずです。

それから、以下に、第4楽章の主題と、連続して、同じブルックナーの交響曲第9番の第3楽章の主題を書きました。これは、上下が逆なだけで、ほぼ同じ主題です。これも、改めて思いました。(交響曲第9番も生で聴いたことのない曲です。東大オケで降り番の経験はあるのですが。いつか9番も生で聴きたいです。)

このブルックナーの交響曲第5番は、80分くらいかかる長い曲で、この日もこれ1曲のプログラムだったわけです。ありがたいことに、眠くもならず、トイレに行きたくもならず、集中して音楽が聴けました。最後、以下にティンパニと第1ヴァイオリンのパートを書きますが、この楽譜のようにティンパニのかたは演奏されていました。おそらく指揮者の指示なのだろうと思います。印象的でした。

終わったあとは、しばらく静寂が続きました。(皆さん感動して拍手を忘れたかのようでした。)そのあと、拍手が起きました。私は少しして去ってしまいましたが、私が預けた荷物やコートを受け取るあいだも、ずっと拍手は続いていました。私はあまり気に入らずにさっと去った人のように見えたかもしれません。しかし、私は心底、満足していました。
(8,000円の席でした。よく考えてみれば、このホームページから分かります通り、だいたい皆さんが私に払ってくださる1回ぶんの月謝の値段よりちょっと高いくらいであるわけです。皆さん私の授業に、こういう演奏会と同じくらいの価値を感じて受講されていることを考えると、背筋の伸びる思いがいたします。改めて、一生懸命授業をせねば、という思いにさせられます。ありがたい気づきです。)
私も、勤めていたあいだは、とてもこんな時間も取れず、聴く余裕もなかったわけです。青春時代に生で聴けなかった好きな曲を、ついに生で聴いたわけです。学生時代の終わりから20年近くが過ぎ、私は残りの人生を楽しもうとしています。ありがたい日々だと感謝しています。
(サムネイルは、この曲の第2楽章に出る印象的な和声進行をコードネームで書いたものです。)
