マーラーの交響曲第9番を聴いた(2025年11月22日)

先月、サントリーホールで、マーラーの交響曲第9番を聴いて参りました。学生時代から好きな曲で、このたび初めて生で聴いたのです。
マーラーの音楽は、長いことよさがわかりませんでした。高校までに知ったマーラーの音楽の思い出は、家にカセットテープで交響曲第1番「巨人」があったことと、あるとき「大地の歌」のCDを買ったことです。前者は、第4楽章の途中で、ハ長調から急にニ長調に転じるところがおもしろかった以外に興味をひかれることがなく、後者もさっぱりよさがわかりませんでした。大学に入り東大オケに入りますと、仲間はませており、皆さん「マーラーはいい」「マーラーやりたい」と言っていました。東大オケは全乗り制といって、全員が出演できるようにプログラムを組むので、なかなかマーラーの交響曲のような長い曲はやれないのですが、皆さんマーラーは好きなのでした。私は、仲間の大学オケの演奏でしばしば1番や5番を聴き、自分でも、「復活」や8番のCDを買いました。ある仲の良い友人が、バーンスタイン指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の交響曲第9番のCDを貸してくれたりしましたが、どうしてもマーラーのよさはわかりません。96年には東大オケで、五月祭で交響曲第7番の第3楽章をやることになり練習し(このときは東大オケを途中でやめたため出演はしていません)、また97年にはある社会人オケで、巨人をやりましたが、やはりよさはわかりません。「マーラーのよさなどわかってたまるか」というような気持ちでいました。そして98年、私は院試を控え、精神状態が不安定でした。日記によりますと、98年の7月25日、渋谷のHMVでマーラーの交響曲第9番のCD(クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団)を買い、高田馬場で数学科の3年4年合同ボウリング大会に参加してから寮に帰り、これを聴いたときに、「この曲のすべてに共感できる!」と思ったのでした。これが私のマーラー開眼でした。
ただ、私はこの曲を生で聴いたことがなかったのでした。生でマーラーを聴いた経験としては、これも日記によりますと、97年9月11日にスヴェトラーノフ指揮N響で交響曲第7番(先述の通りマーラー開眼前で、ちんぷんかんぷんでした。第3楽章はやったことがあるため知っていましたが)、2001年3月25日にすみだトリフォニーホールで東京楽友協会交響楽団の「復活」(出演する友人から招待券をもらいました。第2楽章の前で合唱の皆さんが入場する中、指揮の家田厚志先生がマイクでにこやかに「通の皆さんはマーラーがここに5分以上の休みを入れるように書いていることをご存じでしょうがわれわれは5分の休みを入れません」とおっしゃったのが印象的でした)、2003年2月1日、東京芸術劇場で大友直人さん東響、6番(招待券、前のほうの席であり、ワセオケの後輩とともに聴いて非常に感動しました。マーラー開眼5年ですが、まだこの曲になじんでいなかった証拠に、ハンマーを二度とも見逃しています)、確かこれよりあとにやはり友人の出演する「大地の歌」(招待券、与田朝子さんほか)などがありますが、9番はないのです。これも日記によりますと、1999年11月20日に東工大のオケで「展覧会の絵」ほかを聴き、そのとき東工大の次の曲はマーラー9番だと聞いていて、行きませんでした。聴いた友人によると大変すばらしい演奏だったそうです(行けばよかった)。また、2000年9月2日に仲間の結婚祝いの飲み会で、ある当時の仲間がこの1週間後くらいにマーラー9番をやると言っていましたが、これも行っていません。就職してから、2011年ごろ、その地のアマチュアオケが1年か2年かけてマーラーの全交響曲を交代でやるという企画があり、テレビでは見ましたが、生では行っていません。今回の演奏会は、1年くらい前から行きたいと思っていました。半年くらい前からチケットを買っていました。チケットは以下です。

S席の障害者割引で半額です。ありがたいことに東京にはいくつかの障害者割引のあるオケがあります。前プロとして武満徹の「セレモニアル」があるのも魅力的です。武満徹は高校時代から好きな作曲家です。高校のときに買ったCDで、「ア・ストリング・アラウンド・オータム」(今井信子、小澤征爾、サイトウ・キネン・オーケストラ)が気に入ったのです。武満さん存命時から、「ヴォイス」や「ユーカリプス」のCD(ニコレ、ホリガー)を聴いて楽しんでいました。セレモニアルは、武満さんが亡くなったとき、「エア」(武満最後の曲とされた)とともにCDに収録されていました。そのCDと同じ、宮田まゆみさんの笙で聴けるわけです。
この半年はいろいろあり、行けないかと思っていましたが、行くことができました。行ってみると予想以上にいい席でした(やや上手寄りの中央の前のほう)。武満徹のセレモニアルでは、オルガンのあたり(こちらから見てオルガンのすぐ右)に宮田さんが立っていました。10分くらいの極めて静かなゆっくりした曲です。武満徹のオーケストラ曲を生で聴くのも初めてです。セキがたくさん聞こえましたが、たくさんのお客さんがおられたのでやむを得ません。すばらしい曲です。休憩はなく、指揮者の譜面台が除かれる等のチェンジがあったのち、マーラーです。右側に第二ヴァイオリンが座り、左奥にコントラバス、右奥にハープ、という配置でした。
指揮のジョナサン・ノットさんの有能ぶりは明らかでした。「ここはコントラバスのピチカートを強調するところですよ」「ここはホルンのゲシュトプですよ」「ここはゆっくりですよ」「ここは速いですよ」と、非常にやるべきことが明確で、しっかり練習したのが伝わってきます。学生時代の経験からも、マーラーは7番にも1番にもたくさんの指示をドイツ語で書いていましたが、そのことを思い出します。オーケストラの皆さんも集中力にあふれた演奏で、すばらしいです。長いことCDでしか聴くことのなかった曲を生で聴けました。いつの間にか、セキも聞こえなくなりました。皆さんつりこまれたのでしょう。武満徹さんはすごい作曲家ですが、マーラーさんはそれをも上回る大作曲家なのかもしれません。最後は消え入るように終わり、しばしの静寂ののち拍手となりました。すばらしかったです。
ノット氏は2014年から東響の指揮者とのことで、私もかつて勤めていた中高のオケで2014年から3年間、指揮者でした。このたび、ノット氏は東響の指揮者を引退するそうで、このたびのプログラムは2014年の就任披露演奏会と同じなのだそうでした。記念日のような演奏会を聴いたことになります。
この、静かな曲ばかりの緊張する演奏会ののち、少し気がゆるんだのかもしれませんが、何度か入ったことのある韓国料理屋さんで、頼んだあさりのスープで、少し砂が残っており、ガリっと砂をかみ、少し歯がかけたかもしれません。だんだんおじいさんになる日々です。先日の演奏会のことを書きました。
