棚からぼたもちのように聴いた演奏会

本日のブログ記事はクラシック音楽オタク話です。すみません。なるべくおもしろく書けたらと思いますが、つまらなかったらごめんなさいね。(最近、調子に乗って、マニア話ばかり出しています。)

1998年、院試(大学院入試)を終え、11月3日に高校のOBオケに出演しました。当時の日記を読むとたいへん充実した日々を送る自分の姿が描かれています。翌11月4日は、東京に帰るついでになにげなく新宿にあるムラマツ楽器に寄ったら、ツェラーらしき人がいたと書いてあります(ツェラーはベルリン・フィルのフルーティストで、おそらく来日中でありました)。そしてその日の夜、東大オケのある友人が、司法試験に受かったという電話をくれたと日記に書いてあります。私が高校のOBオケの出演のために帰省していた間も何回も電話をくれていたようです。(1998年当時は、携帯電話もメールもほとんどありませんでしたからね。固定電話に何度も電話する必要があったということです。)

その翌日、11月5日に、学校(駒場キャンパス。渋谷が近い)で、「輪講」という、数学の本を仲間と読む勉強をしたのち、これもまた何気なく渋谷に歩いて行きますと、前日に電話をくれた友人の彼にばったり会いました。(渋谷というところはたくさん人がいて、知人とばったり会うことなどめったにないところです。私がいまいる地方都市では、けっこう町で知人に会ってしまいますが。)じつは、彼は司法試験に合格したお祝いで、ご親戚からN響(NHK交響楽団)のS席のチケットを2枚持っていて、それで一緒に行く人がいなかったのでした。NHKホールは渋谷にあるわけです。これが「棚からぼたもちのように聴いた演奏会」であります!こんなことがあるものでしょうか!

その日のプログラムもいま手元にあります。N響さんからブログでの使用許可が出ませんでしたので、残念ながら載せられませんが、故・ヴォルフガング・サヴァリッシュさんの指揮で、以下のようなオール・シューマン・プログラムでした。

シューマン 「マンフレッド」序曲

シューマン 交響曲ニ短調(交響曲第4番の初稿)

シューマン 交響曲第2番ハ長調

サヴァリッシュはこのとき、N響を指揮して、4つのプログラムでシューマンの4つの交響曲を含むシューマンづくしの演奏会シリーズを行っており、そのうちのひとつだったことになります(これがAプログラム)。私はサヴァリッシュの指揮を生で聴いたのもこのときだけであり、いつも学生席で聴くN響をS席で聴いたのも唯一の機会です。貴重なものが聴けたことになります。

ちなみに他の3つのプログラムは、Bプログラム:序曲、スケルツォとフィナーレ/ピアノ協奏曲(ソロ:イェフィム・ブロンフマン)/交響曲第1番、Cプログラム:「ゲノヴェーヴァ」序曲/チェロ協奏曲(ソロ:マリオ・ブルネルロ)/交響曲第3番「ライン」、オーチャード定期:序曲「ヘルマンとドロテア」/4本ホルン・コンチェルトシュテュック(ソロはN響の皆さん)/交響曲第4番、であったと書いてあります。

さて、こんなに間近にN響を見るのははじめてです。最初の曲は「マンフレッド」序曲です。この曲には思い出があります。われわれが東大オケに入ったばかりのころ、先輩がたが練習しておられた曲なのです。はじめて本郷の第二食堂の上の練習場に通されたとき、先輩がたがこの曲を練習しておられ、そのうまさに「おのぼりさん」であった新入生の私は衝撃を受けたものです。一緒に聴いた司法試験合格の彼も同じときに新入団員でありました。聴き終わって、この曲は懐かしいねという話をしました。

2曲目の「交響曲ニ短調」は珍しい曲でした。交響曲第4番の初稿なのです。正直に書きますと、「交響曲第4番のできそこない」を聴いているかのようではありました。でも、珍しかったので、のちにこの公演をラジオで聴いて録音していた人にカセットテープを借りてまた聴いたりしたものです。(当時はインターネットもないわけですので、こういう珍しい曲は、CDを買わないとしたら、聴くのはかなり困難でした。このたび、この記事を書くにあたり、ナクソス・ミュージック・ライブラリで、アクセルロッド指揮ブカレスト交響楽団で聴きました。これです!ナクソス・ミュージック・ライブラリは、近所の図書館で無料会員になっています。)ところで私はこのときの機会を除くと、シューマンの交響曲第4番は、生で聴いたことがないのです。やったこともありません。(第4楽章を初見大会でやったことだけありますが。)いまだに私はシューマンの交響曲は、第3番と第4番を生で聴いたことがないのです。

休憩後、交響曲第2番でした。すばらしい演奏でした。シューマンの交響曲第2番は、このときよりも前に、あるアマチュアオケで聴いたことがあり、これが2回目でした。そのあとも生で聴いたことはありません。つまり、プロの演奏でシューマンの2番を聴いた唯一の経験です。この曲もやはり東大オケの初見大会で第4楽章をやったことがあります。第1番も初見大会の経験がありますね(確か第1楽章だったと思います)。シューマンの交響曲というものは、皆さん「やりたいけれどもなかなかやれない」曲であったらしいことがわかりますね。私もきちんとやったことがありませんのでわかりませんが、難しいらしい話はよく聞きます(スコアを見ると、木管楽器がずっと弦楽器に重ねて書いてあるのですよね)。とにかく満足して聴きました。トロンボーンのかたが、タチェット(楽章全部休み)のときも、音楽に集中して演奏に参加なさっていたのが印象的でした。

人間の欲とは恐ろしいもので、この日の演奏会は、棚からぼたもちであったにもかかわらず、「どうせなら協奏曲のある日ならもっとよかったなあ」などと思っていたわけです。「交響曲第4番は初稿じゃなくて普通のやつがよかったなあ」とか。あつかましさって無限大ですよね。ばちが当たります。彼はそののち順調に弁護士になり、ある大きな町でいまも活躍しているようです。その日は夕食を食べて満足して帰ったと日記には書いてあります。充実した学部4年のある日の演奏会の話でした。

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