自伝風の読み物 ㉑ 4次元における正多面体に相当するもの

中学のころ、4次元のことについて考えていたと書きました。⑮、⑯、⑱をご覧ください。ここまで、4次元における正多面体に相当するものは、正八体塊と、正五体塊があることが分かっていました。(正多体塊という言い方は、高校2年のときにこれらをレポートにまとめる際に必要に迫られ作った用語です。)それ以外に正多体塊はあるだろうかという問いは、長く私の中にありました。あるとき、以下のような図を見ました。正多面体を平面上にかく方法の一種でした。
正四面体

正六面体

正八面体

同様にして正十二面体、正二十面体の図もあります。正多面体を平面上にかいています。正六面体でいえば、正方形(四角形)が5つあり、いちばん外側の正方形が6枚目なのでした。これは、中央に1つ正方形をかき、1つの頂点に3つずつ正方形(四角形)が集まるようにかいていけば、おのずと正六面体が平面上にかけるのでした。このかき方で1つ次元を上げれば、すべての正多体塊はかけるではないか。そのように思い、高校1年のときの夏休み、これをかいていました。近所の(と言っても田舎なので徒歩30分くらいの)お店で模造紙を買い、自分の勉強部屋の床に敷き、ひたすら線をかいたのです。ここに正四面体がいくつ集まったから、つぎはここに線を引いて・・・というふうに、かいていきました。原理的にこの方法ですべての正多体塊はかけるはずです。正多体塊は全部で何種類あるのかもわかるはずです。しかし、いくら線を引いても収拾がつかず、ついに新しい正多体塊は見つかりませんでした。
別のときの話になります。あるプリントを見たのです。本のあるページのコピーだったかもしれません。私が4次元における正多面体を考えていることを知った大人が見せてくれたものだったかと思います。正六面体の6つの面の真ん中の点(6つ)を頂点とする正多面体があり、それは正八面体であること、このような操作がすべての正多面体でできることが図示されたプリントでした。これは、私は以下のようにとらえました。正六面体の2-skeletonを${S^2}$と見なし、その双対グラフを考えると、正八面体の2-skeletonとなるわけです。したがって、正六面体の頂点の数と正八面体の面の数は一致し(${8}$つ)、正六面体の辺の数と正八面体の辺の数は一致し(${12}$本。正六面体の頂点のつながり方と正八面体の面のつながり方は同じだから)、正六面体の面の数と正八面体の頂点の数は一致する(${6}$つ)わけです。これは、次元を1つ上げて考えることができます。たとえば、正八体塊で言いますと、各立方体の真ん中に頂点を取り、隣接する立方体どうしの対応する頂点どうしを辺で結ぶわけです。すると、正八体塊の辺に、新しい図形の面が対応し(正八体塊は1つの辺に3つの立方体が集まるので、それは正三角形であるはずで)、正八体塊の頂点に、新しい図形の「体」(正八体塊は1つの頂点に4つの辺が集まっているのでそれは正四面体であるはず)が対応するはずです。正八体塊の頂点の数、辺の数、正方形の数、立方体の数はそれぞれ、${16}$、${32}$、${24}$、${8}$でありますので、ここで新しくできた図形は、頂点が${8}$つ、辺が${24}$本、正三角形が${32}$枚、正四面体が${16}$個からなる正多体塊です。これは正十六体塊と呼ばれるべきものです。ここまで考えは及びましたが、自分が当時、正十六体塊というものがはっきり「ある」と言えていたかどうかは定かでありません。少なくとも正十六体塊の図はかけなかったのは確かです。(高校2年のときにまとめたレポートが出てくればはっきりしますが、残念ながらいまのところ出て来ません。高校に問い合わせてももうないそうです。)
これも高校2年のときにレポートにまとめることになりましたが、そのプリントに、「双対」という言葉の紹介はなく、私は、正六面体に対する正八面体の呼び方を編み出さねばならず、これを「配偶正多面体」と呼びました。正六面体の配偶正多面体は、正八面体であり、正四面体の配偶正多面体は、正四面体自身です。当時「配偶者」という言葉は覚えたばかりだったかもしれませんが、配偶者の配偶者は自分自身であることからつけた名前です。
正五体塊の配偶正多体塊は、正五体塊自身です。また、正三角形の配偶正多角形は、正三角形自身です。一般に、正${n}$角形の配偶正多角形は、正${n}$角形自身であるわけです。
私は結局、すべての正多体塊の絵はかけませんでした。正多体塊は全部でいくつあるかも分からずじまいでした。これは、学校の先生の出題した問いではありません。学校の先生の出した問いなら、こちらの実力や、道具のそろい方などから加減がしてあるでしょうが、自分の立てた問いですから、難しすぎることはあります。
(すぐあとに述べる98年1月の日記の書きぶりからして、当時の私は、正多体塊は全部で6種類であることはだいたいわかっていたようです。これは要するに「ほぼそうだと確信しているのだが証明ができない」という状態、つまり、数学で言うところのconjectureという状態だったと思われます。)
少し後日談を書きます。高校を卒業してしばらくたちました。私は(学部生のときも調子の悪い1年がありましたから2回目の)学部3年であった98年の1月、東大数理に、正多体塊の模型が登場したのです。アマチュアの数学者の方が作られたものだということでした。この記事の最初の考えに基づく、すなわち、4次元の正多体塊を3次元に展開した形の模型でした。正十二面体がたくさんで作られた模型は、直径が1メートルくらいある、全体が正十二面体でできた模型であり、非常に細かいものでした。私は高校1年の夏休み、こういうものを模造紙にかこうとしていたことになり、こんなに細かいものは道理でかけなかったわけだと思った次第でした。
(このころ私は日記をつけており、それは残っています。日記から引用します。98年1月8日の日記です。
「(代数の授業が)おわって、へやを出て、ろうかに、正十二面体による4次元での多面体の模型があった。いつぞやのように、もう昔をはずかしいとは思わなかった。むしろ、なつかしく、ほほえましく感じた。もう6年も前か。これ、高校1年か2年の頃考えてたなんて、おませだったなあ。そこには、「6種類あって」と無雑作にかいてあったが、それは分ったものの、具体的な形はかけなかったなあ。こんなにややこしいのか。」

当時、6種類であることはなんとなくわかっていたようですが、具体的な形はかけなかったわけです。高校のときを思い出し、恥ずかしさでいっぱいになった様子がうかがえます。)
いまでも東大数理にこの模型はあるようです。東大数理のリンクをはります。
https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/models/polyhedra.html
つぎの後日談です。同じ年の5月、私は学部4年でした。東大数理では当時、院試を迎える学部4年の夏学期、「概説」という授業が行われていました。1回の授業で2人の先生が、45分ずつ、学部生向けにご自身の専門を語られるのでした。ある代数の先生が、その年の1月に登場した模型の話とからめて、正多体塊が6種類であることは、代数的に示せることをおっしゃったのです。私には身もふたもない証明であるように思えました。それは、かつての自分が具体的に絵をかこうとしていたからだと思います。
(再び当時の日記です。98年5月14日です。「 「概説」は1つは、幾何もけいの話。と中、ねた。100年以上前のゆいしょあるもけいだと知った。おもしろかったが、4次元多面体が6種類であるのを、代数的に証明しちゃうのは、何とも味気なくていただけない(私は)。」)

これよりだいぶあとの後日談です。当教室で、かつての私が考えた4次元のことを、一緒に考えている高校生の生徒さんがおられます。その生徒さんは、この記事の最初のアイデアに基づき、自分で絵をかいて4次元の正多面体を考えました。2024年からその翌年にかけてその生徒さんがかかれた図を、許可を得て載せます。
正十六体塊です。これはその生徒さんはZoomのホワイトボードにかかれました。

正二十四体塊からは立体をかくアプリ(Blender)でかかれました。

正六百体塊

正百二十体塊

