自伝風の読み物 番外編 4次元における2直線の位置関係について、線形代数の知識を仮定して説明する

「自伝風の読み物 ⑯ 4次元における2直線の位置関係」で、私は中学のときに以下のことに気づいたと書きました。2直線の位置関係は、平面上では(1)ぴったり重なる、(2)1点で交わる、(3)平行、の3種類がある。3次元空間では、これらに加え(4)ねじれの位置、がある。4次元に行くと、どういう位置関係が増えるであろうかと思い、しばらく考えて「もう増えない」という結論に達したのです。予想を裏切られたので驚きました。この発見について、のちに人に話しても、なかなか通じないという経験をして参りました。しかしこのことについては線形代数の初歩的な知識があれば説明できます。本日は番外編として、そのご説明をいたします。
4次元の空間に、2直線${l}$、${m}$があるとします。${l}$上に2点${O}$、${A}$をとり、${m}$上に2点${B}$、${C}$をとります。4点${O}$、${A}$、${B}$、${C}$はすべて異なる点とします。点${O}$を始点とする位置ベクトルを考えます。${A}$、${B}$、${C}$の位置ベクトルをそれぞれ、${\boldsymbol{a}}$、${\boldsymbol{b}}$、${\boldsymbol{c}}$とします。

すると、${l}$上の点はすべて、${\boldsymbol{a}}$のスカラー倍で書けます。そして、${m}$上の点はすべて、${\boldsymbol{b}}$と${\boldsymbol{c}}$の線形結合で書けます。すなわち、2直線${l}$、${m}$上の点はすべて、${\boldsymbol{a}}$、${\boldsymbol{b}}$、${\boldsymbol{c}}$の線形結合で書けます。ここで、${\boldsymbol{a}}$、${\boldsymbol{b}}$、${\boldsymbol{c}}$が生成する部分空間を${V}$としますと、${l}$と${m}$は${V}$に含まれています。そして、${\boldsymbol{a}}$、${\boldsymbol{b}}$、${\boldsymbol{c}}$が線形独立のとき${V}$の次元は${3}$であり、そうでないとき${V}$の次元は${2}$以下です。つまり、2直線${l}$、${m}$は常に${3}$次元以下の空間に含まれているため、2直線の位置関係は、${3}$次元までであり得たものしかあり得ないのです。
${\boldsymbol{a}}$、${\boldsymbol{b}}$、${\boldsymbol{c}}$が線形独立であることと、${l}$と${m}$がねじれの位置にあることは同値です。2次元でねじれの位置は起きないからです。
これで通じますでしょうか。私は三十代のときに中高の教員をやり、中高の数学は嫌というほど振り返りましたが、大学の数学を振り返った経験はなく、線形代数は学生時代に習ったきりであり、このたび学生時代の教科書を読みながら以上の証明を書きました。
その記事(「自伝風の読み物 ⑯」)をお読みくださった東北大の長谷川浩司先生は以下のように書かれました。
やはり中学で4次元について考え、正しく推論できるというのは凄いと思います。本来こういう話から線形代数もやるべきかもしれませんし、いわゆるシューベルトカルキュラスなどにも入り口になると思いました。(X、2025年12月13日)
ありがたいことです。シューベルトカルキュラスはインターネットで見ると難しそうで分かりませんが、確かにこれは線形代数なので、本日の記事を書いてみた次第でした。
余談ついでなので以下の話を書きます。このたびの病気で仕事を休み、なかなか普段、勉強できないことを復習する機会だと思い、線形代数や、集合と位相などの教科書を読み返しています。線形代数は、佐武一郎「線型代数学」、斎藤正彦「線型代数入門」で学び直しています。前者は新しく買い、後者は32年前、18歳で使った教科書です。このたび線形空間の復習をして、32年ぶりに後者を読み返し、以下の書き込みを見つけました。
「なるほど・・・いろいろ見えてくるね おもろい 「写像」「変換」バンザイ!」

つまり、自分が中学のころ考えていたことが、ようやく体系だって説明され始めたので、このように書いているのでしょう。「写像」という言葉を生まれて初めて聞いた日かもしれません。「おもろい」という関西風の表現について当時を思い出しますと、この前の年まで私は地元の高校におり、この年から東京に住み、いきなりクラスメイトが全国区となり、クラスにはさまざまな地方の方言が飛びかっていたという状況だったと思うのです。
そのページの下のほう、「(${k}$個のベクトル)${\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_k}$のあいだに自明でない線型関係が存在するとき、${\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_k}$は線型従属であると言い、自明でない線型関係が存在しないとき、${\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_k}$は線型独立であると言う」というところに下線を引いて、大きく「←なるほど」と書いていますが、これも、高校までに習った線型独立の定義(2つのベクトルであれば、0ベクトルでなく平行でないこと)がたくみに一般化されているのを見て(というか、ここで習ったことの高校生向けの特殊化が高校で習ったことだと知って)「なるほど」と書いているのです。

このほか、次のページで、「${\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_k}$が線型独立であり、${\boldsymbol{a}}$が${\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_k}$の線型結合として表わされないならば、${k+1}$個のベクトル${\boldsymbol{a}_1,\boldsymbol{a}_2,\cdots,\boldsymbol{a}_k},\boldsymbol{a}$も線型独立である」ということを著者の斎藤先生が数行で証明してしまっているのを見て舌を巻き、小さい字で「うまいもんだ」と書き込んでいます。

昔の懐かし話はこのへんにしておきます。線形代数もだいぶ忘れていますので、マイペースで復習したいです。
「自伝風の読み物 ⑯ 4次元における2直線の位置関係」のリンクをはります。

