1+2+3+…と折り紙のしゅりけんの種類

私はかつて中高の教員でした。高校で習う数学のひとつである数列を教えていて、いつも授業の準備で悩むことがありました。${1+2+3+\cdots}$という足し算を教えねばならないときがあるのですが(等差数列の和と言います)、これのモチベーションが思いつかないのです。われわれは人生のいつ、${1+2+3+\cdots}$という計算をするのであろうか。

(実際にはそのような授業の準備段階における悩みは無用でした。高校生の皆さんは、問題を出されたら解くものだと認識しておられたからです。「なぜそんな計算をするのですか」という質問をなさった生徒さんはおられなかったものです。)

数年前、かろうじて思いついた例が以下です。${x}$歳の誕生日にケーキのろうそくを${x}$本、吹き消します。生まれてから毎年、ろうそくを吹き消していたら、${x}$歳までに、トータルで何本のろうそくを吹き消したことになるか。${1+2+3+\cdots+x}$本ですよね。これくらいしか思いつかないのです。(節分の日に年齢の個数だけ豆を食べるとして、生まれてから食べたトータルの豆の数も同様です。)

ところで話はいきなり変わります。先日、数学と関係のない集まりで、私に数学の質問をおたずねになったかたがおられたのです。折り紙でしゅりけんを作られるそうです。折り紙のしゅりけんは、2枚の紙を使って作ります。2種類の紙があれば、しゅりけんは3通り作れるそうです。「AA、AB、BB」ということですね。3種類の紙があれば、しゅりけんは6通り、作れるそうです。「AA、AB、AC、BB、BC、CC」ということですね。これは式で表せないだろうか?というご質問でした。いい質問すぎて、その場ではとうてい答えられなかったのですが、以下のように考えることができますね。

紙が1種類であれば、できるしゅりけんは1通りです。紙が2種類であれば、できるしゅりけんは3通りです。紙が3種類であれば、できるしゅりけんは6通りです。紙が2種類から3種類に増えるとき、3枚目の種類の紙(「C」)で、いままであった紙(「AC」「BC」の2種類)と、自分自身(「CC」)の3通りのしゅりけんが増えるのです。つまり、3枚目で3通り増える。すなわち、3種類の紙でできるしゅりけんは、${1+2+3}$通りだったのです!

${1+2+3}$という計算は、ここでするものだったのですね。

${100}$種類の紙があったとして、できるしゅりけんの種類は${1+2+3+\cdots+100}$通りですが、この足し算は、${1}$と${100}$を足すと${101}$、${2}$と${99}$を足すと${101}$、${3}$と${98}$を足すと${101}$、ということで${101}$が${50}$個できて、しゅりけんの種類は${5050}$通りであると計算できます。等差数列の和の計算の仕方が役に立ちました!

そのご質問をなさったかたは、${x}$枚の折り紙でできるしゅりけんの種類の数を${x}$の式で表せないか、とおっしゃっていましたが、以下のように表せますね。${x+1}$かける${x}$の半分なので、${\frac{(x+1)x}{2}}$通りですね。これは、${x}$個の異なるものから重複をゆるして${2}$個とる重複組み合わせと考えてもこうなります(${x-1}$個の「仕切り」と${2}$個の「まる」の並べ方の総数)。${1+2+3+\cdots+x=_{x+1}C_2}$という等式が、意味をもって感じられますね!

いい質問をいただいて、ありがたかったと思っております。こういうのって数学の醍醐味かもしれませんね。

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