自伝風の読み物 ⑮ 4次元における立方体

(2025年12月6日に一度書いて投稿していますが、後から思い出したことも含めて、全面的に書き直しました。)

いつごろから「4次元」というものについて考えていたでしょうか。当時はインターネットがなく、現代のようにたくさんの情報が飛び交うような時代ではありませんでした。おそらく、子供向けの科学読み物のようなものに、ややあやしいような感じで、「4次元」について書いてあったのだと思います。「ドラえもん」のアニメは、小学校に上がる前から10チャンネル(テレビ朝日)で放送されていて、見ていましたので、「四次元ポケット」という言葉は知っていたことになります。その「4次元」というものは、たて、よこ、高さ以外のもう1つの方向があるということだというのが、いろいろな書物に、そういう世界は実際にはないけれどもというような、ファンタジックな感じで書いてあったのだろうと思います。

先ほど、動物図鑑が家にあったと書きました。同じように、魚の図鑑、鳥の図鑑、昆虫図鑑などもあり、よく読みました。「数・形」という図鑑もありました。これは、どうも読んでありがたくない気分になる図鑑でした。いま考えると、これも子供向け科学読み物の一つで、小学生くらいの子供に、数学の内容を、先取りでいろいろ教えようとするものだったわけです。例えば、以下のような内容が書いてありました。数学者のガウスが小学生であったころの話です。担任の先生が、あるとき算数の授業で、1から100までの数を足しなさいという課題を出したのだそうです。ほとんどの子供は、1から順に足していったそうですが、ガウスだけ、ノートに「5050」とだけ書いていたそうです。先生がたずねるとガウスは「1と100を足すと101になります。2と99を足すと、101になります。3と98を足すと、101になります。このように、101が50個できるので、${101\times 50}$で、${5050}$です」と答えたのだそうです。有名な話かもしれません。私はこれを読んだとき、なんとも言えない気持ちになりました。途方もない屁理屈に思えたのです。「5050」という計算結果も、いかにも不自然な気がしましたが、かといって自分で1から順に100まで足して確かめようという気も起きませんでした。5050とだけノートに書いて、そうなる根拠を書いていなかったガウスの態度にもあまりいい感じを受けなかったことも覚えています(ガウスの態度はその図鑑の記述によります)。この図鑑で、統計に関するおもしろい記事がひとつあったことは覚えていますが、それ以外はあまりありがたくない書物でした。いま考えますと、数学についての盛大な「ネタバラシの書」だったからでしょう。

この本に、4次元のことについて、書いてありました。詳細は覚えていませんが、4次元の立方体について、以下のような展開図が書いてありました。

そして、その4次元の立方体そのものについては、4次元だから図はかけない、と書いてありました。いま考えますと、これがかいてなかったことは幸いでした。以下のように、自分で考えることができたからです。

中学生であったときのことです。4次元の立方体について、漠然と考えていたことがあります。どれくらい考えたでしょうか。当時、吹奏楽部に入ってフルートを吹いていましたが、フルートの先生のお宅のある、家から歩いて1時間くらいの、林のある風景をなんとなく思い出します。そういうところを歩きながら、考えていたのでしょう。以下のことに気づいたときのことは、鮮明に覚えています。

点をある方向に動かすと、線分ができます。

線分を、その線分を含む直線と違う方向(垂直な方向)へ動かすと、正方形ができます。

正方形を、その正方形を含む平面と違う方向(垂直な方向)へ動かすと、立方体ができます。

そうすると、立方体を、その立方体を含む3次元の空間と違う方向(垂直な方向)に動かしてできる4次元の図形があるではないか!と気づいたのです。

これに気づき「わかった!わかった!」と心の中で言いながら家に帰って夢中でかいた絵は、以下のようなものでした。立方体が別の方向に動いています。

この図形の頂点の個数は数えられます。上の立方体に8個、下の立方体に8個で、16個です。

この図形の辺の数も数えられます。上の立方体に12本、下の立方体にも12本、立方体の8個の頂点が動いてできる辺が8本、あわせて、12+12+8=32で、32本です。

この図形には、いくつかの正方形があることも分かります。正方形の数は以下のように数えられます。上の立方体に6枚、下の立方体にも6枚、立方体の12本の辺が動いてできる正方形が12枚、あわせて、6+6+12=24で、24枚です。

この図形は、いくつかの立方体でできていました。上の立方体が1つ、下の立方体も1つ、立方体の6つの面が動いてできる立方体が6つで、1+1+6=8で、8個です。

図鑑にあった、この図形の展開図が、立方体8つからできていることも説明できました。

この、「4次元というものは、本によると、あるのかないのかわからない、ファンタジックなものに思えるけれども、よく考えるとあるのだ」というところに興奮させられていたと思います。たとえば、この図形の頂点の数は、16個であると決まっています。辺の数は32本でした。よく考えるとある証拠に、これらの数は定まっているのです。図鑑には、この図形の絵はかけないと書いてありましたが、かけるわけです。

2次元の平面を切った「切り口」は1次元の直線であり、3次元の図形を切った「切り口」は2次元の図形であることを考えると、4次元の図形を切った切り口は3次元の図形になります。また、先ほどの図形は、3次元の図形である立方体8個に囲まれていて、展開図は3次元の図形でした。これらのことは、直感を裏切っていていかにも妙ですが、考えれば考えるほど、このように考えることが自然なのでした。

このようにして、私は、4次元のことをしばらく考えるようになりました。これらは大学に入って体系的にもろもろのことを習うまで、自分で考えるよりなかったことです。(周囲の大人、先生、級友に言っても分かってもらえなかったことです。)

この図形の形ですが、のちに頭を整理させて、以下の図のように描くようになりました。立方体を2次元の紙に描くときの標準的な描き方では、「たて」「よこ」以外の3番目の方向は、右肩上がりの斜めで描くので、もう1つの方向は、右肩下がりの斜めで描くのがいいのだろうということに気づいたからです。

高校1年のとき、この図形について、数学の先生に言ってあったと思います。先生はあるとき、君のかいた通りだもんなあ、と言いながら、本で見つけたという上の図と同じ図を見せてくださいました。私は、自分のように考えれば、この図に行きつくのは当然なので驚かなかったのですが、先生は、いろいろ調べて、本に私の描いた図と同じものが出て来たので、驚かれたのだと思います。

高校2年の冬のことだと思いますが、中学のころから考えた4次元のことなどについて、レポートにまとめる機会がありました。高校(栃木県立宇都宮高等学校)での「自由研究」という、自分で調べたり考えたりしたことをまとめる企画に提出したのです。(金賞をいただくことができました。その時点での過去10年間の金賞受賞者が発表されていましたが、理系の研究で金賞をもらった人は過去10年で私以外にいませんでした。)そのときまでに、4次元における正多面体に相当する図形について、いろいろ考えていましたが、それらを表現する言葉がなく、自分で編み出すよりありませんでした。そこで「正多体塊」と表現しました。正多面体は、いくつかの面に囲まれた体という意味なので、いくつかの体に囲まれたかたまりという意味で、そのように呼ぶことにしたわけです。この文書では、この言い方をさせていただきたいと思います。今回の図形は「正八体塊」と呼ぶことになります。

(先ほど、その「数・形」という図鑑が、この図形についてネタバラシをしていなくてよかったと書きましたが、それを現在の私は、こうしてインターネットでネタバラシしています。現代の若い人に申し訳ないような気が少しだけします。)

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