「どうして、大企業は高学歴しか採用しないのですか?」(統計学のおもしろさ)

「どうして、大企業は高学歴しか採用しないのですか?」かつて、Quoraで見た問いです。皆さん、いろいろ興味深い回答をなさっていましたが、私なりにこのご質問に答えてみたいと思います。

このご質問に答えるに当たり、1年ちょっと前から始まった、当教室でのある授業のご紹介から話を始めたいと思います。このブログ記事の公開に当たり、ご本人様には許可を得ています。

1年ちょっと前にお問い合わせをくださった、大人の生徒さんです。お子さんが数学の問題を解いているのが楽しそう、という動機で、お問い合わせをくださいました。最初の話し合いで、中学の統計分野から教科書に沿って始めることになりました。私は最初に、私は「大学院まで統計をばっちり修めて来ました」という人間ではないことをお断りし(私の大学院での専門は位相幾何学でした)、ご一緒に学ぶということで、開始しました。

毎回、予習が大変です。しかし、非常に勉強になっています。あれから1年とちょっとたち、この生徒さんとは、中学1年、2年、3年の統計分野を学んで参りまして、間もなく中学3年生が終わろうとしています。ありがたい生徒さんです。それで、私は、統計学というものがどういう学問か、自分なりに言語化されて来ました。ひとことで言いますと「数についての数の学問」とでもいうべきもので、どちらかというと、自営業的な、人間の本来の賢さを発揮すべき学問であるということです。(これがお金だったら、経済学という気がします。)その生徒さんも、会社経営がお仕事であるようです。それで、お互いに中学の統計学を楽しく学んで来たわけです。(よく、鋭いご質問をくださいます。私も非常に勉強になります。)

たとえば、中学3年生の教科書の最終問題は「健太さんの家では、みかんを栽培しています」という設定の問いであり、みかん農家の話になっています。自営業と言いますか、経営者の考える問いになっています。そのひとつ前の問いは、養鶏場の卵の重さの話であり、やはり、自営業的です。

それで、最初のQuoraの問いに戻ります。なぜ、企業は学歴で採用するか。これは、サラリーマンとしての優秀さを見ていると思われるわけです。サラリーマンとは、どこかに勤めていて、給料で生計を立てる人のことです。ドラえもんで言いますと、のび太のお父さんは、会社勤めであるようですね。しずかちゃんのお父さんもサラリーマンでしたっけ。スネ夫のお父さんは社長(ということは会社経営)であり、ジャイアンの家は、お店であるようですね。

企業が学歴で採用すると言っていますが、正確には、学歴(どの大学で何を学んだか)よりも、「18歳のときの受験突破歴」で見ていると思います。「東大卒」と言いましても、それは、18歳のときに東大に受かった、ということを見ていると思われるわけです。そして、学校の成績は、言われたことをスピーディーにやる能力が表れていると考えられるわけです。つまり、テストによく書いてある「次の問いに答えよ」というのが、あたかも上司の指示であり、これにいかにスピーディーに答えるか、という能力を見ていると思われるわけです。これが、私なりに考えた、企業が学歴で人材を採用する理由です。

私もサラリーマンでした。中高の教員であったわけです。およそ3年前に仕事を失い、やむを得ず自営業となり、そして、いま自営業の初心者として、お金とか仕事というものについて、根本から見直す時期に来ています。おかげさまで、こういうことにも気づかされたのです。

ただし、大学入試そのものは、いかにスピーディーに課題をこなすか、という視点で出題されているのではなく、学問的な理由から出題されていると思います。私は、社会に出てから、典型的な「使えない東大卒」でしたが、その私が東大(および東大数理)に受かったのは、やはり東大の出題および採点は、学問的な基準だったからだと思われるわけです。(世に言う「使えない高学歴」とは、もしかしたらこういう人材のことかもしれないとも思ったりします。)

こう考えて参りますと、やはり私が得意なのは、統計学よりは、いわゆる狭義の純粋数学(私の場合は位相幾何学)であったと思わされるわけですが、それにしても統計学はおもしろいですね。考えるといろいろなことがわかってしまいます。間もなくこの生徒さんは中学の統計学を修了され、引き続き高校の統計学をご一緒に学ぶことになっています。楽しみです。これからもご一緒に、自営業的な人間の賢さを発揮しつつ、学んで参りたいです。

(ご参考までに、私がこの仕事を2年とちょっとやって、小学校から高校までの、統計学で、いま習うものを、少し書きたいと思います。私は今年、50歳ですが、われわれのころより、いまの学生さんは、ずっとたくさんの統計を学んでおられます。

小学3年生で、ぼうグラフを学びます。
小学4年生で、折れ線グラフを学びます。
小学5年生で、割合を習ったのち、割合のグラフ、すなわち、帯グラフや円グラフを学びます。
小学6年生で、ヒストグラムを学びます。平均値のほか、中央値、最頻値を学びます。
中学1年生で、度数分布表について学ぶほか、相対度数の行きつく先としての、確率を学びます。
中学2年生で、2つの章があり、ひとつは、根源事象が同様に確からしいとして、抽象的に確率を計算する分野であり、それからもうひとつでは、中央値まわりの散らばり具合である、四分位範囲などを学びます。
中学3年生で、標本調査を学びます。ここまでが義務教育ですね。
高校1年生の「数学Ⅰ」で、平均値まわりの散らばり具合である、標準偏差を学び、また、相関というものを学び、また、仮説検定を学びます。「数学A」では、場合の数の計算を習ったうえで、中学2年で習った、抽象的な確率の計算をさらに進めます。
おそらく高校2年生くらいで習う「数学B」で、数学Ⅰと、数学Aを踏まえたうえで、正規分布等を習うようです。これは私がまったく知らない分野であり、ご一緒に学べる人が現れるのを待っている状態です。以上、私のいま分かる範囲で書きました。いろいろな抜けはどうぞご容赦ください。)

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