「指揮者は意外と思い通りに指揮できない」という経験

私は教員だった時期、オーケストラ部の顧問でしたが、その最後の3年間、指揮者でした。たった3年間ですが、いろいろ貴重な経験ができました。いまから書きます2014年11月22日の小さな本番は、学校の講堂で行われた、地域に開かれている無料演奏会で、前半の一部分に、合唱部や吹奏楽部と並んで、15分ほどの持ち時間が与えられたときのミニ本番を指揮したときのことになります。
曲目は以下の通りでした。
ベートーヴェン 交響曲第3番変ホ長調「英雄」より第2楽章
「ユー・レイズ・ミー・アップ」
曲をご存じのかたには、「英雄の第2楽章だけをやるのか」と思われるような選曲ですが、これは、この年度の最後の定期演奏会で「英雄」全楽章をやるために、段階をへて曲を完成させる一歩として、このとき第2楽章が選ばれたというわけでした。選曲は正指揮者であるコーチの先生が行っていました。「ユー・レイズ・ミー・アップ」もコーチの選曲によるポップスでした。「英雄」の第2楽章を、お客さんの前で指揮した唯一の機会です。「ユー・レイズ・ミー・アップ」はこのとき以外にも何度も指揮しました。
本日は、指揮者というものが、意外と思い通りにオケを動かしているわけではない、というお話がしたくて、この記事を書いております。
練習の段階で、私は以下のようなテンポを取りました。全体的に速めのテンポで、とくに下記の楽譜のへ短調の二重フーガからテンポを上げたのです。これは尊敬する大指揮者ストコフスキーの真似でした。

ここでテンポが上がるのは音楽的にまったくおかしくなく、むしろ自然ですが、なぜかストコフスキー以外の指揮者はやらないことです(やっている指揮者がいたらぜひ教えてください)。オケの生徒の皆さんは、すぐに私の意図を理解し、このテンポで演奏を始めました。ところが、そのとき楽器屋さんに行っていてそれから帰ったある生徒さんから、私のテンポに反対の声が上がったのです。やむなく私は、その正指揮者のコーチの先生が取る標準的なテンポに戻しました。
これは、とてもいい経験になりました。私は教師で、オケの皆さんは学生さんです。私はなめられ教師であったとはいえ、少なくともオケでは私を慕ってくださる生徒さんも少なからずおいでになりました。このような上下関係にあっても、なかなかオーケストラが指揮者の言うことを聞くとは限らないのです。私はプロの世界を知りませんが、プロのオーケストラがどれほど指揮者の言うことを聞いておられるのかはわからない次第です。指揮者ってすべてをあやつっているように見えるかもしれませんけどね。
ところで、本番当日は、学生食堂を控室に取ったのはよかったことと、「このところの練習の中では本番が最もよかったと思う」と日記には書いてあります。当時の部長さんと全員の「反省文」を読んだりしています。顧問として、指揮者として、大変でしたが、貴重な経験をさせていただいたものです。
