名を正す。以下の言葉の意味は何か。「円の面積を求める」「方程式を解く」「2つの角が等しい」(2)「方程式を解く」

「名を正す」とは、論語に出てくる言葉で、物事を本来の名前で呼ぶことであると私は捉えています。このたびは、3回のシリーズで「円の面積を求める」「方程式を解く」「2つの角が等しい」という、いずれも学校教育の数学でよく目にする表現について、ブログを書いてみたいと思いました。第2回の本日は「方程式を解く」です。前回のブログのリンクは最後にはります。

方程式は、中学1年生の数学の教科書で最初に習います。「方程式」と「方程式の解」と「方程式を解く」の3つを習います。以下のように教科書に書いてあります。

「まだわかっていない数を表す文字をふくむ等式を方程式といいます」。

「方程式を成り立たせる文字の値を、その方程式の解といいます」。

「その解を求めることを、方程式を解くといいます」。

正確には、解を「すべて」求めることを、方程式を解くといいますが、まだ中学1年生は1次方程式しか習いませんので、こう書いてあります。

また、高校に行くと「直線の方程式」「円の方程式」なども習いますが、それは今回は置いておきますね。基本的に意味は変わりません。点(0次元)が線(1次元)になるだけです。2次元以降も同様です。

このたび、私の気が付いてきたことがあります。「方程式を解く」というときの「解く」という言葉と、世間一般で言われる、とくに学校の教育現場でよく聞く「問題を解く」というときの「解く」という言葉はまったく違う意味なのですが、しばしば混用されている、という点です。

上で教科書に書いてある定義を見ました通り、「方程式を解く」というのは、解(その方程式を成り立たせる値)を求めることを意味する専門用語ですが、「解く」という言葉が、とくに受験業界で、問題を解く意味で使われています。これはけっこう混用されているのではないか。

(ある中学3年生の検定教科書に載っているコラムで、「方程式を解く」の「解く」と「問題を解く」の「解く」が完全に混用されているものも見ました。これがまかり通るということは、かなりの人が、このまったく異なる「解く」を混ぜて使っておられるということだろうと推測いたします。検定教科書は概して非常に質が高いですが、このように本文でないところで、少し隙が見えることがあります。)

「方程式を解く」と同様な意味での「解く」という語の使用例としては「不等式を解く」「漸化式を解く」「微分方程式を解く」などがあります。

この3回シリーズのブログ記事では「名を正す」という論語に出てくる言葉をテーマとしています。言葉を正しい意味で使うのです。たとえば、「恋の方程式」という言いかたは現代もするのかどうかわかりませんが、こういう例や、あるいは「さんまの東大方程式」というような「方程式」という言葉の用例は、私にとっては、ルイボスティーを「ルイボス」と略するのと同じような違和感があります。私は「方程式」という言葉の本来の意味を思い浮かべてしまうからです。

この記事を書くにあたり、「ルイボス」をインターネット検索で調べてみました。やはり植物の名前でしたね。ルイボスティーを「ルイボス」と呼ぶのは、むぎ茶を「むぎ」と呼ぶようなものではないかと改めて思いました。

こう書きますと、私がとんでもないがんこおやじに思われると思うのですが、そこは本来の意味で言葉を使わないと、だんだん意味が逸れていきます。たとえば、大学受験の高校数学の問題集に載っているような問いでも、方程式の本来の意味に立ち返らねば混乱するものはあります。また、先に少し述べましたが、${x+2y=2}$というような、解が無数にある方程式が、${xy}$平面上で、ある図形(この場合、直線)を表していることに最初に気づいた人はとてつもなく偉大ですね(デカルトであると読んだことがあります)。

私は大学院で数学者の夢をあきらめ、中高の教員になろうとしたら徹底的なダメ教員だったわけですが、教員になった初年度、ある仲間の若い教員の授業を見学させていただいたことがあります。その教員は、2次方程式の「解の公式」というべきところで、ときどき「解の方程式」と言っていました。私に「解の方程式」という言葉の意味はわかりませんでした。しかし、生徒さんの誰も質問をしません。なんとも思わない生徒さんが大半であるようでした。またその教員は、3点を頂点とする三角形の重心、というべきところで、3点の重心、と言っていましたが、これも、困惑する生徒さんはおいでにならないようでした。しかし、これではそのうちなんだかわけがわからなくなる日が来ると思います。

ちょっとだけ、こういう話が受験の結果と無関係ではない話もいたします。かつて、学校の事務員だったころ、方程式を解くことの意味のはっきりわかっていた高校生の生徒さんがいました。当時、事務室にいた私のところへ質問に来られたのです。その生徒さんは、非常に名門の大学に進学なさいました。「名を正す」ことは、受験の成功においても重要であるお話でした!

第2話はこのへんまでです。第3話の「2つの角が等しい」をお楽しみに!それではまた!

第1回「円の面積を求める」は以下です。

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