自伝風の読み物 ㉕ 角度の高次元化

今回の記事は、高校2年か3年のころ、自分でガウス・ボンネの定理(の一部)に気が付いていたらしいという記事です。よく思い出してみるとガウス・ボンネの定理の本質は発見することの決してなかった自分の限界を記した記事であるとも言えます。なるべく当時を思い出しながら書きますが、これも微分積分学の基本定理の発見の記事(「自伝風の読み物 ㉔」)と同様、あとから習ったことによって、記号や用語等が、大きく頭に上書きされてしまっていることをお断りしておきます。また、私には大学の教員の経験がなく、三十代のときに中高の教員を経験し微分積分を振り返る機会がたくさんあったのと違って、ガウス・ボンネの定理を教師として振り返った経験がないこともあわせてお断りしておきます。
4次元における正多面体(正多体塊)はいくつあるのであろうか。この問いについて考えたことは、⑮、⑱、㉑に書きました。これは、ラジアンを習うことによって、以下のような進展がありました。当時、おそらくいろいろな方面から考えていたと思うのですが、以下のアイデアは、頓挫することになります。しかし、それを考えることによって、けっこう美しい副産物があった、という記事になります。
大元のアイデアは、以下のものです。これは、小学生であったとき、学校に置いてあった「天才バカボン」の学習マンガに書いてあったと記憶する以下の理屈です。正多面体が5種類しかないということについてのものです。正三角形を1つの頂点に3つずつ集めると、正四面体ができます。正三角形を1つの頂点に4つずつ集めると、正八面体ができます。正三角形を1つの頂点に5つずつ集めると、正二十面体ができます。正三角形を1つの頂点に6つずつ集めると、まったいらな面ができます。${60^{\circ}\times 6=360^{\circ}}$だからです。正三角形を1つの頂点に7つずつ集めると、これも正多面体はできません(※)。正三角形を1つの頂点に8つ以上集めても正多面体はできません。正方形を1つの頂点に3つずつ集めると、立方体ができます。正方形を1つの頂点に4つずつ集めると、まったいらな面ができます。${90^{\circ}\times 4=360^{\circ}}$だからです。正方形を1つの頂点に5つずつ集めても正多面体はできません。正五角形を1つの頂点に3つずつ集めると、正十二面体ができます。正五角形を1つの頂点に4つずつ集めても正多面体はできません。正六角形を1つの頂点に3つずつ集めたらまったいらになります(${120^{\circ}\times 3=360^{\circ}}$)。正七角形を1つの頂点に3つずつ集めても正多面体はできません。正八角形以上の正多角形でも同様です。以上の議論から、正多面体はここまでに出て来た5種類しかないのです・・・。この理屈は秀逸ですが、私は読んでしまったので思いついていません。この理屈が、高校でラジアンを習うことで、以下のような進展があったのです。
ラジアンとは角度の単位であり、角(1つの頂点から出ている2つの辺の作る形)の頂点を中心とした半径1の円の、その角が切り取る弧の長さのことです。たとえば直角の頂点を中心とした半径が1の円の直角が切り取る弧の長さは${\frac{\pi}{2}}$なので、直角は${\frac{\pi}{2}}$ラジアンです。これを高次元化して、「バカボンの理屈」を適用したら、正多体塊が何種類か、わかるのではないか、というふうに思ったわけです。
以下のように考えます。図は、正四面体の頂点の近くです。一般に、三角錐の頂点の近くとしましょう。正八面体の頂点の近くであれば、四角錐の頂点の近くです。これを、3次元的な角(高次元化された角)と考えます。この頂点を中心とする、半径1の球面を考えます。この3次元的な角が、その球面を切り取る部分は、球面上のある図形になります(以下の図で、曲がった三角形のようなもの)。これが、角度の高次元化に相当するものであるはずだと考えたのです。

この考えを実行に移そうとする段階で、おもに以下の3つの気づきがあったということを思い出します。その3つを書きます。
1 高次元化された角の単位球面による切り口には、1次元低い図形が現れる
2 曲がった線のなす角について
3 高次元化された角度は数で表されない
(少し余談ですが、これらを考えていたときの情景を思い出します。その一つは、体育の水泳の授業です。先生は「泳げない者は歩け!」とおっしゃっていました。私は泳げないので、50分間、プールの中を歩いていました。泳げるようにはなりませんでしたが、こういうときに手持ちぶさたなので、漠然とこれらのことを考えていたのでしょう。もう一つは、これも体育の授業ですが、剣道の授業で、正座しながら順番を待っているときの光景です。同じタイミングで、所属していたオーケストラ部の高3のときの文化祭での出し物である、ムソルグスキー=ラヴェルの「展覧会の絵」のことを思い出したりしますので、どうも高2の冬に「自由研究」のレポートを出したあとのことではないかという気もするのですが、そのレポートは出て来ませんし、分かりません。とくに、上記1の気づきは、プールの情景とともに思い出します。)
1から順番に書きます。1ですが、高次元化された角の単位球面(半径1の球面)による切り口には、1次元低い図形が現れることの気づきです。たとえば、上の図では、単位球面に、曲がった三角形のようなもの(「三角形もどき」)が現れていますが、これは2次元での三角形に対応しています。先ほどの「バカボンの理屈」で、正三角形を1つの頂点に3つ集めると正四面体ができると書きました。正三角形を1つの頂点に2つあるいは1つ集めることはナンセンスとされているわけですが、これは、二角形や一角形(二辺面、一辺面)が存在しないことに対応します。また、これをさらに1次元上げますと、4次元の角の頂点を中心とした半径1の4次元の球が、その4次元の角を切り取る切り口に現れる3次元の曲がった図形は、もとの図形が正多体塊であるなら、正多面体である必要があることに気づいたりしたわけです。
さて、先ほどの図で、「三角形もどき」の、3つの辺は、半径1の円(大円)です。なぜなら、その三角錐の側面は、その球の中心を通る平面だからです。(当時、「大円」という言葉は知らなかったかもしれませんが、先述の通り、あとから覚えた用語や記号が私の頭に上書きされています。以下、大円と言います。)
2番目の気づきです。曲がった線のなす角についてです。上に述べた、「三角形もどき」の辺は大円の一部であるわけです。その2つの大円、すなわち2つの曲がった線に囲まれた(普通の意味での2次元の)角もあり得るのかもしれませんが、私はしばらく、ある頂点から出ている2つの曲がった線の作る形(角)の「開き具合」(角度)については、ぼんやりと、測れない(定義できない)気がしていました。分度器をあてても測れそうにありません。ところが、以下のことに、はたと気づいたときがあるのです。その頂点の周辺を拡大すれば、その2辺はほとんど直線である。あるいは、その頂点における2つの曲がった線のそれぞれ接線を考え、その2つの接線のなす角度を、その2つの曲がった線のなす角度と定義すればよい。このようにして、2つの曲がった線のなす角(角度)というものは存在すると気づいたのです。
そうしますと、先述の「三角形もどき」(球面上で、3つの大円に囲まれた形)の、2辺のなす角は、その三角錐の2枚の側面である平面(${P}$、${Q}$とします)の面角であると気づきます。その頂点における単位球面の接平面は、${P}$、${Q}$のいずれとも垂直だからです。(「面角」や「接平面」というような言葉も当時は知らなかったでしょう。)

3番目の気づきです。高次元化された角度は数で表されないという気づきです。しばらく、これら一連のこと(角度の高次元化について)を考えていました。漠然と、普通の意味でのラジアンは、数で表され、それは角が切り取った弧の長さでしたから、その1次元高いものを考えたときは、その角が切り取る球面上の図形の面積だろうと思っていたのだと思います。ところがそれはよく考えると違いました。このことを考えた動機は、小学生のときに読んだ「バカボンの理屈」であるわけです。それを高次元化して、正多体塊の種類を数えたいわけです。その3次元の角が、1つの頂点にいくつ集まると、「オーバー」となるのか。それは、その3次元的な角を、単位球面が切り取る図形の、面積だけではなく、大きさや形も込めて考えなければなりません。つまり、3次元的な角の、ラジアンの高次元化は、その図形の、大きさや形そのものなので、数で表せないのです!
逆に言いますと、普通の意味での角度は、例外的に数で表されるとも言えます。普通の意味での2次元的な角を、その角の頂点を中心とする単位円が切り取る図形は、半径が1の円の、弧です。弧は、1次元的な図形であり、長さで決まります。長さは数で表されます。これが、普通の意味でのラジアン(角度)が、数で表されるという現象です。
(ここまで、曲がった図形のさまざまなことを考えている当時の自分を思い出しながら書いておりますが、当時の私は、高校生的に素朴に、1次元と言えばまっすぐな直線、2次元といえばまったいらな平面のみを考えていました。いま触れた、弧のようなものは、専門的には、曲がっていても1次元と言うわけですし、4次元の球の表面は、3次元球面というわけです。正多体塊を考えることは、3次元球面のセル分割を考えていることになりますが、当時はそういう、曲がった線を1次元と言ったり、曲がった面を2次元と言ったりするという発想はなかったことになります。そもそも「次元」という言葉が高校までに学校で習った言葉ではありません。)
この「3」の気づきによって、この道は頓挫することとなりました。この道は予想以上に厳しいことに気づいたわけです。しかし、私は以下のように考えました。せめて面積は知りたい。だいぶ険しい道だと気づきましたが、目標を下げてみることにしたわけです。
(球面上の大円が、球面上で「まっすぐな線」であることには気づいていたと思います。社会の時間に習った、さまざまな世界地図の話を覚えています。地球上で、たとえば赤道に沿って歩くのは「まっすぐ歩いた」ことになり、北回帰線に沿って歩くのは、「まっすぐ歩いた」ことにならないわけです。普通の意味で、まっすぐな線とは直線のことで、「最も近い道」のことです。しばしば、円柱の側面や円錐の側面の上で、最も短い道のりを計算せよという数学の問題を当時やらされましたが、それは、それらを展開して平面としたときの「直線」の長さであったわけです。球面は平面に展開できず、それゆえにメルカトール図法を初めとする世界地図を平面にかく技法では、どうしても縮尺がどこかで狂います。このことの認識は当時ここまででした。)
三角錐の頂点を中心とする半径1の球面がその三角錐を切り取る形は、3つの大円で囲まれた形(以下「三角形もどき」と呼びます)です。先ほど述べましたように、三角錐の3つの面角を、${\alpha}$、${\beta}$、${\gamma}$としますと、3つの大円のなす角(先ほど述べましたように、曲がった線のなす角の角度は定義されます)は、${\alpha}$、${\beta}$、${\gamma}$となります。(ここでこれはガウス・ボンネの定理をあとから知ったことによるnotationですが、当時の記憶に大きく上書きがされているために、当時の自分がどういう記号で書いていたかは今となっては不明です。)最初、この面積は、積分で求めようとしていました。「自伝風の読み物 ㉔」に書きましたように、当時、積分は見つけていた上に、習っており、この記事の「付録」に書きます通り、半径が${r}$である球の表面積は、${4\pi r^2}$であることは積分によって確かめることができていました。同じように、この「三角形もどき」の面積も、積分で求めようとしていました。ところが、よく考えてみると、以下のように、これは、足したり引いたりするだけで出てしまうのです。
球面上で、大円2つで囲まれた以下のような形を考えます。私が子供であったころ、マンガで、スイカを、中心を通る2つの平面で切って食べている絵をよく見ました。以下のようなイラストです。(これはフリー素材のgahagさんからいただいて参りました。)

実際にはもう少し細かく切らないと食べづらいでしょうが、このようにスイカを切って食べるとすると、以下のような形は、スイカを食べ終わったときのような形となるわけです。この「スイカを食べ終わったときのような形」は、面積がわかるのです。

「スイカを食べ終わったときのような形」の一方の角の大きさを${\alpha}$とします。するともう一方の角の大きさも${\alpha}$です。なぜなら、${\alpha}$は、その2つの平面の面角であり、その2つの点は互いに対蹠点だからです。そして、これは、球面全体の面積の、${\frac{\alpha}{2\pi}}$倍であることに気づきます。なぜなら、2つの点を地球における北極と南極としますと、この図形は2つの経線で囲まれた形であり、その面積は地球の面積の${2\pi}$ラジアンぶんの${\alpha}$ラジアン倍だからです。半径が1の球面の面積は${4\pi}$ですので、角の大きさが${\alpha}$であるような「スイカを食べ終わったときのような形」の面積は、
$${4\pi \times \frac{\alpha}{2\pi}=2\alpha}$$
であると分かります。
ここで、先ほどの、3つの角がそれぞれ${\alpha}$、${\beta}$、${\gamma}$であるような「三角形もどき」の面積を${A}$とします。${A}$が知りたい数です。この「三角形もどき」の絵を以下のようにかきます。

すると、上に見ましたように、2つの大円で囲まれた形の2つの角は等しいので、以下のようになります。(対頂角が等しいことも使った。)

以下のように、球面全体が、8つの「三角形もどき」に分割されていますが、よく観察すると、それらのうち、地球の反対側にある「三角形もどき」は、形も大きさも同じであり、つまり合同であって面積が等しいことに気づきます。これに注意して、以下の図のように、ほかの「三角形もどき」の面積を、${B}$、${C}$、${D}$と名付けます。

角の大きさが${\alpha}$であるような「スイカを食べ終わったときのような形」の面積は${2\alpha}$ですので、図より以下の等式が成り立ちます。
$${(25.1) \qquad A+B=2\alpha}$$
同じようにして、以下の等式が成り立ちます。
$${(25.2) \qquad A+C=2\beta}$$
$${(25.3) \qquad A+D=2\gamma}$$
そして、大円で囲まれた部分は球の半分なので、その面積は${2\pi}$であることから、以下の式が成り立ちます。
$${(25.4) \qquad A+B+C+D=2\pi}$$
(25.1)から(25.3)までの両辺を足して以下の式が得られます。
$${(25.5) \qquad 3A+B+C+D=2\alpha+2\beta+2\gamma}$$
(25.5)から(25.4)を引きます。
$${(25.6) \qquad 2A=2\alpha+2\beta+2\gamma-2\pi}$$
(25.6)の両辺を${2}$で割ります。
$${(25.7) \qquad A=\alpha+\beta+\gamma-\pi}$$
${A}$が知りたかった数なので、(25.7)が結論です。
「三角形もどき」の面積は、足したり引いたりすることで出てしまいました。かなりシンプルな式となったので驚きました。
これが正しい式か、以下のような検算が思いつきます。(もちろん先生に聞いて先生が知っているとは思えず、友達に言って分かってもらえるとも思えないので、自分一人で抱え込むことになります。答え合わせはできないわけです。もっとも、分からないから考えたのだということは言えます。)
球面の半径を非常に大きいものとします。するとこの「三角形もどき」は、ほとんど平面上の三角形と見なせます(大円はまっすぐな線なので、まったいらな面の上だと直線だと見なせます)。その面積は、非常に小さいと見なせますので、いっそ面積はゼロとします。そこで(25.7)で${A=0}$とします。以下のようになります。
$${(25.8) \qquad \alpha+\beta+\gamma-\pi=0}$$
ここで${\pi}$を移項して、以下の式を得ます。
$${(25.9) \qquad \alpha+\beta+\gamma=\pi}$$
これは、平面上で、三角形の3つの角の和が${180^{\circ}}$であることを意味しています。これで私は「確かにおかしくない」と思ったわけでした。
これは、習う前に、ガウス・ボンネの定理の一部に気が付いていたことになるのかもしれません。しかしこれは以下に書きます通り、少なくとも当時の私の認識の限界でもあり、その意味で私はガウス・ボンネの定理の本来の精神には気づいていないとも言えると思います。
さて、ここから考えたことがあります。これをもう1次元、高次元化することはできないであろうか。すなわち、以下の図のように考えるわけです。

半径1の4次元の球の表面(3次元球面)を考えます。その上で、半径1の2次元球面(大球というのでしょうか)4枚にかこまれた「四面体もどき」を考えると、これの体積が、さっきの議論と同じように、足したり引いたりで出るのではないかと思ったわけです。図のように、大球3枚に囲まれた「3次元的な『スイカを食べ終わったときのような形』」を考え、これの体積を考えて、同様の議論をします。ところが、このやり方だと、足したり引いたりで「四面体もどき」の体積は出ないのです。ずっとのち、大学で専門的な数学を学び、こういう場合、奇数次元と偶数次元で、振る舞いが違うことを学びましたが、そのことはこのとき、直観的に実感したことです。(先ほど書きましたように、私には大学の数学の教員の経験がなく、これらのことを体系的にあとから振り返ったことがほとんどなく、頭の中で整理された状況ではありません。)
(このたびこの記事を書くにあたり、三十何年かぶりにこの計算をしてみました。確かに出ません。)
書きながら少し思ったことを書きます。私は先述の通り、高校2年の冬ごろ、4次元について考えたことを、レポートにまとめて高校に提出したわけです。そのとき「正多体塊」「配偶(双対という意味)」というような言葉は、表現するのに必要であることから考え出さねばならなかったわけですが、本日の記事に出る「スイカを食べ終わったときのような形」であるとか「三角形もどき」とかいう言葉は、いかにもぶかっこうであり、もしこれらもレポートに載せるなら新しい言葉を考え出したような気がするため、やはり今回の話はレポート提出後に考えた話であったようにも思えます。いっぽうで、どうも今回の話もレポートに載せたような記憶もあるため、そのレポートが出てこない限りはそのあたり(用語周辺)は確かでありません。
さて、この高校生だったときから三十数年がたち、私の教室のある高校生が今、一緒に4次元のことを考えておられます。その高校生は、正多体塊の図を、私の「自伝風の読み物 ㉑」の最初のアイデアに基づき、アプリで6つの正多体塊の図をかかれました(㉑に載せてあります)。そして、正多体塊が全部で何種類かという問いを考えるにあたり、正多面体がなぜ5種類かを考え、自身で「バカボンの理屈」に到達されました。そして、この理屈を高次元化し、辺にいくつ正多面体を集めて、面角の合計が、${360^{\circ}}$を超えないか、と考え始まりました。これは私の考えよりずっと筋がいいと言えるかもしれません。私は、「頂点に正多面体はいくつ集まるか」と考えたわけですが、「辺に正多面体はいくつ集まるか」と考えた記憶はないからです。余弦定理を用いて、正多面体の隣り合う面の面角のコサインを計算して、その角度があわせて${360^{\circ}}$を超えない正多面体を考えると以下のようになります。正四面体は、3つ、4つ、5つまでであり(それぞれ、正五体塊、正十六体塊、正六百体塊)、立方体は3つまでであり(正八体塊)、正八面体も3つまでであり(正二十四体塊)、正十二面体も3つまでです(正百二十体塊)。私もこの計算をこのたびやってみましたが、初めてやる計算だと思います。もっとも以下のことはあります。学部4年(1998年)のときに輪読で読んだ、W.ThurstonのThree-Dimensional Geometry and Topology (その前の年である1997年刊行ですが、ずっと前からあるThurstonの講義録の書籍化で、当時は3次元ポアンカレ予想の肯定的解決の前です)に、3次元多様体の例として、ポアンカレ十二面体空間(Poincare dodecahedral space)が載っていて、これは、正十二面体の、向かい合う正五角形を、時計まわりに${\frac{1}{10}}$だけ回転させて貼り合わせて得られる3次元多様体ですが、これは1つの辺に正十二面体が3つずつ集まります。そして、ユークリッド幾何的な正十二面体の面角は${116.565^{\circ}}$だそうなので、ポアンカレ十二面体空間は楕円幾何を持つ、というふうに書いてあったりするわけです。当時は、この計算(ユークリッド的な正十二面体の面角の計算)は初等数学であって読み飛ばしたと思いますが、これはこのたび(2025年)、初めてやってみたと思います。
少しだけ当時を振り返ります。高校生のころ考えたこれらの本日の記事の内容は、球面幾何(楕円幾何)の最初のほうの話であるととらえられると思います。あくまで素朴に高校生的に、1次元と言えばユークリッド的にまっすぐ、2次元といえばユークリッド的にまったいら、と考えていた私の当時の限界が、こうして記事にまとめるために思い出して整理してみると、だんだん明らかになります。双曲幾何というような発想は高校生であったころ、まったくなかったわけで、双曲幾何を学んだとき「その発想はなかった」と非常に驚き、また納得したわけです。前掲のThurstonの本で著者のThurstonは、最初のほうで、一定の負の曲率の曲面の近似モデルを、紙で作った正三角形を各頂点に7つずつ貼り合わせて作れと書いています(Exercise2.1.4(a))。これは、この記事の最初のほうに書いたバカボンの理屈の※印のところにありますが、正三角形を1つの頂点に7つずつ集めることで、負の曲率の曲面の近似モデルが得られるわけです。(このThurstonのExerciseは、もちろん本当に紙で作ってみよと言っているわけですが、この輪読のときは、私でないある学生がここを読む当番に当たり、なんと彼はこの工作をやって来なかったのでした!私は見てみたかったので不満でした。ご指導くださっていた先生も不満そうでしたが、先生も実物を見てみたかったのでしょう。このときはこれで通過していますが、ここで、この記事を書くにあたり、28年ごしにこの工作をやってみることにしました。その写真をここにアップしようかと思いましたが、広告の裏紙で作ってしまい、あまり美しくできませんでしたので写真を載せることはしません。)
当時から3次元多様体の幾何は8種類であると言われていました。それはThurstonの予想なのでした(幾何化予想)。これは本当であるとペレルマンによって証明されて、ポアンカレ予想は証明されたのでした。日記によると2003年8月12日に、先日出たポアンカレ予想の証明は本当らしいという仲間のうわさを聞き、2004年1月23日の東大数理のセミナーで、その論文をお読みになった先生のお話をうかがいました。
以下に付録を書きます。㉔の記事(積分の発見の記事。記事の最後に、高校で積分を習って、三角関数の微分積分、また、置換積分等の計算方法を習ったのち、4次元の球の体積を計算したことがあると書き、当時の計算を再現したものを載せました)をご覧になった東北大の長谷川先生が、「ちなみに体積とともに表面積も考えたくなるところですが、その辺については当時いかがでしたでしょうか」とXに2026年1月11日に書かれました。確かに当時、考えました。とくに本論の最後で触れた、「四面体もどき」の体積を足したり引いたりで出そうとした話は、4次元の球の表面積はわかっていることが前提の話となるわけです。そこで、以下に、球の表面積を積分で求めた話を書きます。
以下は、球の表面積について、積分で計算できるという話を、クラスメイトとしゃべっていたという話です。半径が${r}$の球面の中心を原点Oとし、${x}$軸を引き、${x}$軸に垂直な平面で球面を切ったときにできる円周の長さを積分で足し合わせて、球の表面積が計算できます。しかし、これは、球の体積を計算するときのように、${x}$で積分してはいけないわけです。以下に、球面を${x}$軸に垂直な平面でスライスしたとき、${x}$軸で均等に切ったら、球面上でまばらになる(均等にならない)現象を絵にかきます。

これは、その球面上を通る、円の円周(北極と南極を通る直線を${x}$軸としたときの経線)にそって均等に切れば、球面上でも均等になるので、そのように積分すればよいわけです。
以下の図のように、球面上の点をAとし、${x}$軸と線分OAのなす角を${\theta}$とします。Aを通り${x}$軸に垂直な平面で球面を切ったときの切り口の円周の長さである${2\pi r \sin\theta}$を、${r\theta}$で積分したものが球の表面積${S}$です。

$${S=\int^{\pi r}_0 2\pi r\sin \theta d(r\theta) \\=2\pi r^2\int^{\pi}_0 \sin \theta d\theta \\=2\pi r^2[-\cos\theta]^{\pi}_0 \\=4\pi r^2}$$
これは、中学で習った、球の表面積の公式です。
中学の教科書に書いてあった、球の体積の公式を仮定した球の表面積の公式の成り立つ理由は以下でした。球体を、中心を頂点とするたくさんの角錐の集まりと見なして、その角錐の体積の和が球体の体積となり、その角錐の底面積の和が球の表面積となるというものです。
これでちゃんと、学校で習った球の表面積の公式である${4\pi r^2}$と一致する、ということをクラスメイトとしゃべっていました。
(いま考えますと、この話は積分を知っているクラスメイトと共有できるからクラスメイトとしゃべっているわけです。「自伝風の読み物」に書いた多くのことは、級友とも、しばしば先生とも共有できない話題でした。)
少し余談を書きます。のちに、学校のテスト(おそらく校内模試という実力テストみたいなもの)で、以下のような問いが出ました。どういう式で表されるのか忘れていますが、第一象限に、図のような、増加する関数で、増加の度合いも増加する関数のグラフがあり(つまり下に凸なグラフ)、この曲線を${x}$軸にかんして1回転させて得られる曲面の面積を求めよ、というものです。

これは先ほどの球の表面積の計算と同じであるわけです。曲線にそって積分する必要があります。テスト返却のとき、先生は、これができたのはクラスで私を含め4人だったとおっしゃいました。ただし、私以外の3人は最後まで計算できていて、私だけ、式は立てられたのですが、計算ができませんでした。先生は私を、できた人のうちにカウントしてくださったわけです。クラスの残り三十数人は、${x}$で積分して、計算があわなくなったようでした。
(高校時代によく出た、さまざまな3次元の形の体積を、積分を駆使して求めなさいという問いは、3次元の図形は3次元の空間のなかで曲がっていない、すなわち曲率が0なので、問題なく${x}$で積分して出るわけでした。)
ずっとのち、大学生になり、こういう曲面は、曲率が負なのであり、(先ほどの球の表面積で言えば、球面は曲率が正であり、)曲率が0でないものの面積等は、扱いが非常に繊細なのであり、したがって大学の先生は、たとえば高校生向けの出題である大学入試で、こういう問い(先ほどの校内模試のような)はまず出さないのだ、ということをだんだん知りました。
さて、4次元の球の表面積${S}$を積分で求める計算を書きます。先ほどと同じように、半径${r}$の4次元の球の中心を原点Oとし、${x}$軸を引き、球の表面上にある点をAとし、${x}$軸と線分OAのなす角を${\theta}$とします。Aを通り${x}$軸に垂直な3次元空間でその4次元の球を切ったときの切り口である球の表面積である${4\pi (r\sin\theta)^2}$を、${r\theta}$で積分します。
$${S=\int^{\pi r}_0 4\pi (r\sin\theta)^2 d(r\theta) \\=4\pi r^3\int^{\pi}_0 \sin^2\theta d\theta \\=4\pi r^3\int^{\pi}_0 \frac{1-\cos2\theta}{2} d\theta \\=2\pi r^3[\theta -\frac{1}{2}\sin 2\theta ]^{\pi}_0 \\=2\pi^2 r^3}$$
もう一つの計算を書きます。先ほどの中学の教科書に載っていた理屈の高次元化です。4次元の球を、中心を頂点とするたくさんの4次元の角錐の集まりと見なして、その角錐の体積の和が球体の4次元の体積となり、その角錐の底面積の和が4次元の球の表面積となるというものです。
4次元の球の体積を${V}$とし、表面積を${S}$とします。記事㉔より、${V=\frac{1}{2}\pi^2 r^4}$です。
$${V=\frac{1}{4}Sr \\S=\frac{4V}{r} \\=\frac{4}{r}\cdot\frac{1}{2}\pi^2 r^4 \\=2\pi^2 r^3}$$
