自伝風の読み物 ⑬ 0より小さい数

${0}$より小さい数があるらしい、ということは、小学生のころから、漠然と聞いて知っていました。ただ、それがどういったものであるのかは、習うまで混沌としていました。${0}$より小さい数というものはあるらしいと聞いていても、それはずっと混沌の世界でした。いつだったか、地震があって、テレビで震度を言っており、私は「震度いくつ」と言うべきところで間違って「零下何度」と言ってしまい、笑われたことがあります。つまり「零下」と言ってもそれはマイナスと認識しておらず、「零下」という言葉のあとに(絶対値が)正の数が続くように認識していたらしいわけです。それで、中学に入って、負の数を習いました。習ううちに、負の数のほうにも、秩序だった世界が広がっていることをだんだん認識したわけです。習ってみますと、${0}$より小さい数を考えるのは自然な発想だったのでした。これは、三角比を一般の角で定義した人、あるいは、非ユークリッド幾何学を考えた人も同様の気づきであり、そう考えることで、そちらにも秩序だった世界が広がっていることを示した偉大な先達がおられるわけです。(非ユークリッド幾何学の存在に最初に気づいていた人は、ユークリッドさんである気がします。「小さい数から大きい数は引けません」と主張する大人は、負の数の存在を知っているように・・・。)

それで、中学生のころの話ですが、学校でもらった何らかの教材の余談のようなところで、群のような発想について書いてあったことを思い出します。演算として足し算あるいはかけ算を考え、単位元というものがあって、足し算の場合は${0}$、かけ算の場合は${1}$と考えられるというわけです。途方もない屁理屈に思えました。それはまあそうだけど、おかしな考えだなあ、またなんでそんな変なことを考えるのか、屁理屈ではないのか、と感じたわけです。このようなエピソードを思い出すにつけ、私はやはり代数的な発想はしていなかったらしいことが分かるわけです。(群のようなものを考える動機がないままに紹介してあったからかもしれません。)

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