「何となくわかったをやめた」大人の生徒さん

また、当教室での授業の様子を公開させていただきますね。掲載に当たり、ご本人様の許可は得ております。
お問い合わせをくださったのは1年くらい前になる大人の生徒さんです。大学は工学部を出ておられ、大学初年級の微分積分学の学び直しをご希望になりました。
東大の教養学部生向けの初級の微分積分の教材から学び直しを始めました。
開始して数回で、この生徒さんは、もしかして微分の直観的な理解をなさっておられないのではないかということに気づきました。お互いにです。高校までの直観的な微分の理解から、大学に入るとすぐ、微分積分学は極限のとらえ方が厳密になります。そこではなく、まず、高校の直観的な微分の理解、すなわち根本的な微分の理解があいまいなのではないかと思い、「方向性を考える会」(無料相談会)をいたしました。このように当教室では「はじめましての会」が無料のみならず、途中で方向性を考えるときも無料相談です。この「方向性を考える会」で、私はかなり「厳しい」ことをその生徒さんに申し上げてしまったかと思います。しかし、その生徒さんは、あとでくださったメールの最後に以下のようにお書きになりました。
正直に言いますと、2回目の授業が終わったとき、「自分は何も分からないまま大学に進学してしまったんだ」というショックが大きかったです。
そして、方向性を考える回で「高校2年まで戻って、何となくわかったをやめる」と決まったとき、安堵しました。
今日は時間があるので、ゆっくり高校時代の教科書を読むつもりです。
初学者になった気持ちで勉強していきますので、今後もよろしくお願い申し上げます。
ありがたいことです。それで、改めて高校の教科書から微分を学び直しはじめました。ところが、なかなか「微分とはなにか」が理解できない状況が続きました。ご一緒に、何か月も同じところで悩み続けました。この生徒さんは、${\cosh x}$(コサインハイパボリック)のテーラー展開も計算できるくらいに、計算はよくおできになります。しかし、もしかしたら、計算だと${(x^2)^{\prime}=2x}$とすぐに見えてしまうため、かえって「微分そのものはなにか」が見えづらくなっておられるのかもしれません。私もあの手、この手です。積分から攻めたときは、かなり笑顔で「だいぶわかった」とおっしゃってくださいましたが、つぎの回には、またわからなくなっておられるのでした。そんな数か月が過ぎました。
最後の日がやって参りました。3か月、お休みをなさるとおっしゃるのです。私はもうおやめになるのだと思っていました。最終回に、私は、自分が「ほんとうに大学教養数学の微分積分をわかっているのか」を問われたような気がしました。正直に書きます。私は、中高の教員の経験だけあります。大学の教員の経験はないのです。大学教養数学の微分積分は、教えた経験がありません。かなり忘れているでしょう。(ご一緒に学べるかたが現れるのを切に願っています。私にも「相手」が必要です。)その生徒さんの大切な置き土産だと思って感謝してお別れしました。
ところが、その生徒さんは、本当に3か月後に戻って来られたのです!そのメールには「小学校の文章題まで戻る必要もあるかも」と書かれてありました。また無料相談のすえ、今度は、高校の「数列」から学ぶことになりました。これも根本から考える路線で進み、現在は、等差数列の帰納的な定義と一般項との関係をお互いに真剣に考えています。
このような生徒さんもおいでになります。ご入門からそろそろ1年です。極めてありがたい生徒さんです。「数列」が微分と違うところは、自然数の上で定義された関数ととらえられることから、微分に相当する「階差数列」を考えるとき、小学校的に単純な引き算でいいことなどです。これからもご一緒に、「数列」というものを根本的に考えていけたら、と願っています。
