算数・数学が世界の5分の1であるかのように錯覚する現象

1年くらい前、ある数学と関係ないZoomでのお茶会で、私が算数・数学の個人指導をしていることをお知りになって、「小学校の算数から中学の数学になって、抽象化して理解しづらくなりました」とおっしゃるかたがおいでになりました。「中学の数学になって、もう小学校のような『みかんの個数』は出なくなった」とおっしゃっておられました。確かにそうかもしれません。中学からの数学と比べますと、小学校の算数のほうが、具体的なものに根差していました。なぜなのか、最近、少し言葉になった気がしまして、ブログ記事を書いてみたいと思います。
これは、大学でまた具体的な数学に戻るのです。
私には中高の教員の経験がありますので、知っております。教員はあまりしないものの、生徒さんがよく使う表現があります。「主要五教科」「副教科」という表現です。入試で出るものが前者(国、社、数、理、英)、そして、入試で出ない「美術」「体育」「家庭科」「道徳」のようなものを「副教科」と呼ぶのです。(正確には、教員も「五教科」という表現は使ったかもしれません。「副教科」という言いかたは、教員はしなかったかと。)ともかく、世界の5分の1が数学であるかのような錯覚に陥ります。しかし、大学に入るとどうなるか。
「数学を用いる」と思われる専門を、東大のサイトからコピペして、少し挙げますね。
社会基盤学科、建築学科、都市工学科、機械工学科、機械情報工学科、航空宇宙工学科、精密工学科、電子情報工学科、電気電子工学科、物理工学科、計数工学科、マテリアル工学科、応用化学科、化学システム工学科、化学生命工学科、システム創成学科、数学科、情報科学科、物理学科、天文学科、地球惑星物理学科、地球惑星環境学科、化学科、生物化学科、生物学科、生物情報科学科
すみません。よくわからないものも含めてズラッと並べました。私の友人で、これらに進んだ人もたくさんいます。このように細分化されます。このうち、私が行ったような「理学部数学科」という「数学そのものを勉強します」という専門は、かなり偏っているわけです。
たとえば、身近に機械工学が専門だった人がいますので、それを例に取ります。その道で、たとえば金属に力を加えて変形させる技術を学ぶ上で、微分・積分や、指数・対数、三角関数の知識などは必須のようです。それらを知らないと研究できない分野であるそうです。すなわち、数学が、小学校の「みかんの個数」のような「具体的なもの」に戻って来るのが大学の専門であったのです!
そこで思いました。中学・高校の数学は、よくも悪くも、抽象化が進んだものではないか。とくに義務教育でなくなり、そして初等中等教育ではある高校の数学は、かなり抽象化の進んだものではないか。
ある中学の国語の先生は、中学に入って抽象化するのが数学の骨頂、とおっしゃっていましたが、私はどうも言葉にならない違和感をずっと覚えて参りました。ようやく言葉になった気がします。中学や高校の数学が、異様に抽象化していたのです。本来は、背後に意味を感じながらやるものが数学であったのです。それは大学・大学院の専門的な数学でもそうです。
中学や高校での「世界の5分の1が数学に思える」のは錯覚でありました。少なくともその中高で抽象化された数学だけを「数学」と呼ぶならそれは錯覚です。ほんとうの数学はもっと広い意味で、具体的な意味をもって言うのでした。
星くず算数・数学教室がオープンしてから、2年くらいがたつかもしれません。この間にいろいろな学びがありました。私はいまも「算数とはなにか」「数学とはなにか」という問いの前でずっと考えております。
