東大オーケストラ2005年の「第90回記念定期演奏会」

私はかつて東大オーケストラ(東京大学音楽部管弦楽団)にいました。たった2年と1か月弱しかいませんでしたが、貴重な経験がたくさんできました。私は学部と院で合計12年、東大(および東大院)にいましたので、何回も後輩の演奏を聴きました。今回の記事は、2005年1月30日のサントリーホールでの東大オケの「第90回記念定期演奏会」を聴いた思い出話です。
私の東大オケ入団が、1994年、18歳のときです。このときはそれから11年が経過しており、私は29歳になっていました。院に入り、博士課程1年(25歳ごろ)で取り返しのつかないような大病を患いましたが、このころは、もう数学者として生き残るのをあきらめているころで、かつ、まだ就職活動(中高の教員になろうとしました)を開始する前、というタイミングになります。
ここにいま、当時のプログラムがあります。数えきれないほど聴いた東大オケの後輩の皆さんの演奏。私が団員だったころはしばしばプログラムにも「東京大学管弦楽団」と書いてありました。このころは「東京大学音楽部管弦楽団」と書いてあります。その間に、東大にはいろいろなオーケストラが生まれて、他の団体と区別する必要があったのでしょう。私が入団したころは、東大オケと言えばいわゆるこのオケくらいしかなかったのではないかと思われます。
当日は、日曜日であり、私の行っている教会のもちつき大会(新年にはよくもちつき大会がありました)でした。「もちつき大会の案内を出したためか?子供の礼拝もかなり盛況、教会学校もかなり盛況」と日記には書いてあります。私はもちつきはしていないようですが、ここで朝食と昼食を兼ねて食べるために「ものすごくたらふく食べた」と書いてあります。そしていわゆる「大人の礼拝」に出て、終わってすぐサントリーホールに行ったようです。
確か、かなり大入りであり、私は東大オケの当時の仲間と行ったのですが、買おうと思ったときにチケットは買えなかったと思います。当日預かりのVIP席でした。当日のチケットも残っていますが、以下の通り、かなり珍しい手書きのチケットであり、「招待券」と書いてある通り無料であったようで、オーケストラのナナメ後ろ(フルート側、下手)の「置いてある椅子」でした。「そんな席がサントリーホールにあるのか」という席だったことを覚えています。もしかしたら、車いすのかたのためのスペースに、パイプ椅子を並べて、それでどうにかわれわれ二人は聴けたのかもしれません。

プログラムは以下でした。そのまま写します。
W.A.モーツァルト 歌劇「魔笛」より序曲
F.P.シューベルト 交響曲第七番 ロ短調「未完成」
G.マーラー 交響曲第一番 ニ長調「巨人」
指揮は早川正昭先生です。東大オケのOBであられる先生です。この日は、早川先生の、東大オケの指揮者としての最後の演奏会でした。ひとつの大きな区切りであったと思います。
日記を見ると、「魔笛」序曲の感想として、早川先生の速いテンポで、弦楽器が完璧に弾いていたことに非常に感心しています。そして、いまでも思い出すのは2曲目の「未完成」です。かつてないすばらしさだったのです!私も「未完成」はやったことがありますが、この曲は難しい曲です。しかしこのときの「未完成」は見事でした。一緒に行った仲間も「プロでも食っていけるではないか」と思わず言った完璧なホルンなど、聴きどころがたくさんある「未完成」でした。とにかくすばらしかったです。
そして、休憩後に、マーラーの1番です。ほとんどの曲を暗譜で指揮する(気がする)早川先生が、スコアを見ながらの指揮だったことを覚えています。ナナメ後ろの席から聴いていましたので指揮者の早川先生はよく見えました。オーボエやクラリネットのベルアップ(楽器を持ち上げて吹くこと。マーラーがそう指示しています)は、恵方巻に見えたというのはその友人の言ったことです。(節分の近い季節でもありました。)ホルンのベルはこちらを向いており、ホルンの生の音が直撃する席でした。この曲は最後にホルンが立ちますが、それをこのように間近に見たのは初めてであったと日記には書いてあります(そして、このあと私はこの曲を生で聴いていないと思いますので、そのあとにもこういう経験はありません)。
アンコールは、まず、モーツァルトのディヴェルティメント ニ長調K.136の第2楽章でした。これもいきいきした演奏で、非常に印象に残っています。早川先生は再び暗譜に戻ったようでした。そして、「歌声ひびく野に山に」という、早川先生の編曲によると聞く、東大オケがおもにサマーコンサートのアンコールで使う作品を、早川先生じきじきの指揮で演奏して終わりとなりました。この作品は、団員は「ビーシェーン」と呼んでおり、私が学生時代からしばしばサマーコンサートのアンコール用の演目であり、このあとも、おそらく現在にいたるまで、サマーコンサートのアンコール用の出し物ではないかと思います。お客さんに参加してもらって、三部の輪唱を歌ってもらう作品です。早川先生の東大オケ引退ということで、特別に冬の定期演奏会でやったのでしょう。大きな声で歌わせていただきました。
早川先生は、このときで、52年間、東大オケの指揮をなさったということでした。日記には「オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の40年を超えているではないか!」と書いてあります。客席でほかにも先輩や同輩や後輩にお会いしました。
午後4時くらいに終わり、友人の家に行ったりして帰っています。私も29歳であり、仲間のほとんどは社会人です。私は数学者の夢をあきらめ、しかし、就職活動は開始していないころの話でした。それでも、これはいまから19年半くらい前の話ではあります。
東大オーケストラの定期演奏会は、この翌年(2006年)も聴いています。指揮者はどうなるのかと思ったら、客演指揮者として現田茂夫先生がベートーヴェンの第九その他を指揮されました。それは私が東京を去る直前に聴いた演奏会であり、その話はまたいずれいたしますね。本日は、2005年に東大オケの第90回記念定期演奏会を聴いた思い出話でした。
