正十二面体の隣り合う2つの面の面角が90°以上、120°未満であることを、「数学Ⅰ」の余弦定理の知識だけを仮定して証明する

4次元における正多面体に相当するものが何種類あるかを考えるため、正十二面体の隣り合う2つの面角の余弦(コサイン)を計算します。高校1年で習う「数学Ⅰ」の余弦定理の知識だけを仮定して、その面角が90°以上、120°未満であることを証明します。(つまり、正十二面体は1つの辺に3つ集めても360°を超えず、4つ集めたら360°を超えること。)
準備(1)
定義1 直線${l}$が平面Pと点Aで交わっていて、点Aを通る平面P上のすべての直線と垂直であるとき、直線${l}$と平面Pは垂直であるという。(中学1年の教科書より)

命題2 直線${l}$と平面Pが垂直であることを確かめるときには、交点Aを通る平面P上の異なる2つの直線と直線${l}$が、それぞれ垂直であることを示せばよい。(中学1年の教科書より)

定義3 下の図のように、平面Pと平面Qが交わっていて、平面Qが、平面Pに垂直な直線${l}$を含んでいるとき、2つの平面P、Qは垂直であるという。(中学1年の教科書より)

準備(2)
定義4(面角)
2平面P、Qが交わっているとする。P、Qの交線${l}$に垂直な平面をRとしたとき、PとRの交線${l_1}$、QとRの交線${l_2}$として、2直線${l_1}$、${l_2}$のなす角${\alpha}$を、2平面P、Qの面角という。

準備(3)
補題5
$${\cos 36^{\circ}=\frac{1+\sqrt{5}}{4}}$$
証明

1辺の長さが1である正五角形ABCDEの対角線の長さを${x}$とする。
ADとCEの交点をFとする。
△ACF∽△EDF より
${AC:CF=ED:DF}$ ・・・①
${AC=x}$、${ED=1}$
また、AB//FC、BC//AF、AB=BCより、四角形ABCFはひし形であるから、CF=BA=1
また、${DF=DA-FA=x-1}$
これらを①に代入し、
${x:1=1:(x-1)}$
したがって ${x(x-1)=1}$
${x^2-x-1=0}$
この二次方程式を解くと
$${x=\frac{-(-1)\pm\sqrt{(-1)^2-4\cdot 1\cdot (-1)}}{2\cdot 1}}$$
$${=\frac{1\pm\sqrt{5}}{2}}$$
${x>0}$より
$${x=\frac{1+\sqrt{5}}{2}}$$
△ADEで余弦定理より、
$${DE^2=EA^2+DA^2-2\cdot EA\cdot DA\cos\angle DAE}$$
$${1^2=1^2+(\frac{1+\sqrt{5}}{2})^2-2\cdot 1\cdot (\frac{1+\sqrt{5}}{2})\cos 36^{\circ}}$$
$${(1+\sqrt{5})\cos 36^{\circ}=(\frac{1+\sqrt{5}}{2})^2}$$
$${\cos 36^{\circ}=\frac{1+\sqrt{5}}{4}}$$
補題5の証明終わり
準備が終わりました。本題に入ります。準備で使った、点A、B、C、D、E等の名前は、以下の議論で新規まき直しで使います。まぎらわしくてすみません。
本題

上の図のように、正十二面体の頂点に名前を付ける。
正五角形ABCDEの外接円の中心をOとする。
正五角形BFGHCの外接円の中心をO’とする。
正五角形CHIJDの外接円の中心をO”とする。
OからBCに下ろした垂線の足(*)をPとする。
(*)Oを通りBCに垂直な直線とBCとの交点のことを、OからBCに下ろした垂線の足という。
O’からBCに下ろした垂線の足もPである。
OP⊥BC、O’P⊥BCであるから、命題2より、辺BCと平面O’POは垂直である。・・・②
${\alpha=\angle O’PO}$とすると、定義4より、平面BFGHCと平面ABCDEのなす角(面角)が${\alpha}$である。
${90^{\circ}<\alpha<120^{\circ}}$を示したい。(方針:${\cos\alpha}$を計算する)
O’から辺CHに下ろした垂線の足をQとする。
O”から辺CHに下ろした垂線の足もQである。
平面O’POと正五角形BFGHCは交わっていて、②より辺BCと平面O’POは垂直で、正五角形BFGHCは辺BCを含んでいるので、定義3より、
平面O’PO⊥正五角形BFGHC・・・③
同じようにして、平面O’QO”⊥正五角形BFGHC・・・④
O’を通り、平面BFGHCに垂直な直線を${l}$とすると、③より平面O’POは${l}$を含む。
同じように、④より平面O’QO”は${l}$を含む。
つまり、平面O’POと平面O’QO”の交線は${l}$であり、定義4より、平面O’POと平面O’QO’’のなす角(面角)は∠PO’Qである。
${\angle PO’Q=360^{\circ}\div 5=72^{\circ}}$なので、
平面O’POと平面O’QO”のなす角は72°である。・・・⑤
一方で、OO’=O’O”=O”Oから、
△OO’O”は、正三角形なので、∠OO’O”=60°・・・⑥
${\theta=\angle PO’O}$とすると、
△PO’Oに着目して、以下の図より、
$${\alpha=180^{\circ}-\theta-\theta}$$
$${=180^{\circ}-2\theta}$$・・・⑦

以下の議論で正十二面体の大きさは関係ないので、
O’P=1とする。

∠O’PS=90°となるように辺O’O上に点Sをとる

∠O’QT=90°となるように辺O’O”上に点Tをとる
O’P⊥PS、O’P⊥BCより、命題2より、
O’P⊥平面BPCS
したがって、正五角形BFGHCと平面BPCSで定義3より
正五角形BFGHC⊥平面BPCS
交線はBCであり、BC⊥PSであるから、
正五角形BFGHC⊥PS・・・⑧
同様に考えれば、正五角形BFGHC⊥QT・・・⑨
上の図より
${PS=\tan\theta}$・・・⑩
${QT=\tan\theta}$・・・⑪
⑩、⑪より、PS=QT・・・⑫
⑧、⑨、⑫より、PSとQTはいずれも平面BFGHCに垂直で、同じ長さなので、4点P、Q、S、Tは同一平面上にあり、四角形PQTSは長方形である。したがって、PQ=ST・・・⑬
ここで、∠SO’T=∠OO’O”であるから、⑥より、∠SO’T=60°
上の図から
$${\cos\theta=\frac{O’P}{O’S}=\frac{1}{O’S}}$$
したがって $${O’S=\frac{1}{\cos\theta}}$$・・・⑭
同じようにして $${O’T=\frac{1}{\cos\theta}}$$・・・⑮
⑭、⑮より、O’S=O’T
△SO’Tは頂角が60°の二等辺三角形だから、正三角形である。
したがって、SO’=TO’=ST
⑬より、SO’=TO’=ST=PQ・・・⑯

上の図のように、△O’PQは頂点が72°で、O’P=O’Q=1の二等辺三角形である。(⑤より)
PQの中点をRとすると、O’Rは、∠PO’Qの二等分線で、以下の図より、${PR=\sin 36^{\circ}}$

したがって、${PQ=2PR=2\sin 36^{\circ}}$・・・⑰
⑯⑰より、${SO’=2\sin 36^{\circ}}$・・・⑱
⑭⑱より、
$${\frac{1}{\cos\theta}=2\sin 36^{\circ}}$$
したがって、
$${\cos\theta=\frac{1}{2\sin 36^{\circ}}}$$・・・⑲

O’Oの中点をKとすると、以下の図のように、PK⊥O’Oである。

上の図から、${O’K=\cos\theta}$なので、
$${O’O=2O’K=2\cos\theta=2\cdot\frac{1}{2\sin 36^{\circ}}}$$
(⑲より)
$$=\frac{1}{\sin 36^{\circ}}$$
上の図の△PO’Oで余弦定理を用いると
$${O’O^2=PO’^2+PO^2-2\cdot PO’\cdot PO\cos\angle O’PO}$$
つまり
$${(\frac{1}{\sin 36^{\circ}})^2=1^2+1^2-2\cdot 1\cdot 1\cos\alpha}$$
$${2\cos\alpha =2-\frac{1}{\sin^2 36^{\circ}}}$$
$${\cos\alpha =1-\frac{1}{2\sin^2 36^{\circ}}}$$
・・・⑳
三角比の相互関係より
$${\sin^2 36^{\circ}+\cos^2 36^{\circ}=1}$$
であるから
$${\sin^2 36^{\circ}=1-\cos^2 36^{\circ}}$$
$${=1-(\frac{1+\sqrt{5}}{4})^2}$$
(補題5より)
$${=1-\frac{1+2\sqrt{5}+5}{16}}$$
$${=1-\frac{6+2\sqrt{5}}{16}}$$
$${=1-\frac{3+\sqrt{5}}{8}}$$
$${=\frac{8-3-\sqrt{5}}{8}}$$
$${=\frac{5-\sqrt{5}}{8}}$$
これを⑳に代入する。${\frac{1}{\sin^2 36^{\circ}}}$は${\sin^2 36^{\circ}}$の逆数であることに注意して
$${\cos\alpha=1-\frac{1}{2}\cdot\frac{8}{(5-\sqrt{5})}}$$
$${=1-\frac{4}{5-\sqrt{5}}}$$
$${=\frac{(5-\sqrt{5})-4}{5-\sqrt{5}}}$$
$${=\frac{1-\sqrt{5}}{5-\sqrt{5}}}$$
$${=\frac{-(\sqrt{5}-1)}{\sqrt{5}(\sqrt{5}-1)}}$$
$${=-\frac{1}{\sqrt{5}}}$$
ここで${2<2.236\cdots =\sqrt{5}}$より、
$${\frac{1}{2}>\frac{1}{\sqrt{5}}}$$
したがって
$${-\frac{1}{2}<-\frac{1}{\sqrt{5}}}$$
また${-\frac{1}{\sqrt{5}}<0}$より
$${-\frac{1}{2}<-\frac{1}{\sqrt{5}}<0}$$
ここで、
$${\cos 120^{\circ}=-\frac{1}{2}}$$
$${\cos\alpha=-\frac{1}{\sqrt{5}}}$$
$${\cos 90^{\circ}=0}$$
より
$${\cos 90^{\circ}>\cos\alpha>\cos 120^{\circ}}$$
したがって
$${90^{\circ}<\alpha<120^{\circ}}$$
証明終わり。
問6
同じようにして、正二十面体の隣り合う面の面角が、120°よりも大きいことを示せ。(同じ要領でできます。)
ポアンカレ十二面体空間という3次元多様体は、楕円幾何を持ちますが、それは、ユークリッド的な正十二面体は、このブログ記事の計算にありますように、隣り合う面の面角が120°未満だからです。
※間違いが見つかりましたらどうぞお知らせください。
