中学1年生の「関数」を学ぶ大人の生徒さん

当教室での授業の様子を公開させていただきますね。掲載に当たり、ご本人様の許可は得ています。
4分の3年くらい前に、お問い合わせをくださった、大人の生徒さんです。ご一緒に、中学から高校くらいの数学を、いい意味で行き当たりばったり的に学んで参りました。最近、中学1年生の教科書に沿って「関数」を学んでいます。中学1年生は「そもそも関数とはなにか」ということ、それから、関数の基礎的かつ重要な例で「比例」と「反比例」を学びます。それで、最近の短いエピソードをいくつか紹介させていただきます。
教科書に、「${y}$が${x}$の関数であるときには、その関係を式に表すことができる場合もあります」と書いてあります。このあと、式で表せる場合を習うわけですが、この生徒さんは「式で表せない場合があるのですか」と聞かれました。鋭いご質問です。私は、以下のような例を申し上げました。
この生徒さんとは、前に三角比をご一緒に学びました。それで、ある角の大きさ${x}$(単位は「度」でいいと思います)に対して、その大きさの角を持つ直角三角形の、辺の長さの比(比の値)が、${x}$によって一通りに決まるならば(それを${y}$とします)、${y}$は${x}$の関数であると言えると認識できると思うのですが、ただ、それがたとえば「${y=\tan x}$」と書かれるとしたら、タンジェントというものを習っていなければ、「関数だけれども式で表せない」と思うかもしれません、自分でタンジェントを編み出さない限り、と申し上げました。納得してくださいました。でも、私も聞かれなければ思いつかなかった例です。
それで、関数とは何かを学び、関数の例として、比例を学びました。比例のグラフが、直線になることを見ました。座標を書き入れて行きますと、比例のグラフは確かに直線になりました。考えてみますと、これを発見した人はすごいわけです。私は、「勉強とは、先人の発見の、再発見の旅ですね」と申し上げました。この生徒さんは「はい」とおっしゃってくださいました。私も、勉強とは何か、言葉になった気がしました。ありがたい生徒さんです。私も小学校のとき、反比例のグラフが、まっすぐな線にならないことを知ったときは、衝撃的だったものです!
それで、反比例も学びました。教科書に「下の表のどちらかは、反比例の関係を表しています。どちらが反比例の関係でしょうか。また、その理由を説明しましょう」と書いてあります。以下のような表が書いてあります。

その生徒さんは(イ)をご覧になり、「一定の割合で減るものが、反比例であるとは言えないのですね」とおっしゃいました。確かに、日常の用語では、「増えたら減るもの」という意味で、反比例という言葉が使われるかもしれません。(イ)は、${x}$が${1}$から${2}$に変化するとき、すなわち、${x}$が${2}$倍になるとき、${y}$が${\frac{1}{2}}$倍になっていないわけです。これは反比例ではありません。(${y}$は${2}$倍になってもいませんので、比例でもありません。)お互いにいろいろな発見があります。私にはもったいないほど、人間的に尊い生徒さんだと感じています。わからないものはわからないとおっしゃり、新しい発見をしつつ、私の話を聞いておられるからです。
そして、その授業の最後に「先生は、本を読む時間はありますか」とおっしゃいました。ありますと申し上げますと、本を紹介してくださいました。知らない世界を知ることができるのはありがたく、翌日には書店で買い、読み始めました。自分では手に取ることのないジャンルの小説であり、楽しく読めています。じつは、そのタイミングは、ちょっと前に左の脇腹が痛くなり、夜間の病院に行き、エコーやCT、血液検査で、調べたあと、休日をはさんで医師から電話があり、CTで膀胱に1センチくらいのものが見つかった、と言われて、泌尿器科の診察の前、戦々恐々としていたタイミングでの授業であったのです。読書に逃避しているころでした。ありがたかったです。そのあと、泌尿器科での、尿道からの内視鏡の検査では、なにも見つからず、とりあえず生き延びた形です。もう若くないので、体には気をつけようと思ったところでした。
その小説は、まだ読んでいます。ありがたい生徒さんです。これからもご一緒に、数学を楽しく学んでいけたら、と思っています。
