バボラクのホルン・リサイタルを聴いた(1999年10月27日)

1999年に、ホルンのバボラクの初来日時のリサイタルを聴きました。その昔話を書きたいと思います。クラシック音楽オタク記事です。それでもよろしければどうぞお読みください。
ラデク・バボラクは、いまでこそ世界的に認知されているホルン奏者ですが、この1999年という年はどういうころであったかと言いますと、「バボラクという非常にホルンのうまい若者がいるそうだが、誰もその演奏を聴いたことがない」という状態だったころなのです。1999年というと、バボラクは23歳(私も23歳)、CDがまだいっさい出ておらず、しかもその時代にYouTubeなどSNSもありません。ほんとうに、誰もバボラクの音を聴いたことがなかったのです。ただ、うわさが流れていただけのころのこととなるわけです。
そのバボラクが来日して、ホルンの演奏をすることになったわけです。この演奏会は、全国ツアーの最終日としての東京公演であったようです。この日のほか、私は10月15日に日本フィルの演奏会で、バボラクの演奏するリヒャルト・シュトラウスのホルン協奏曲第2番を聴いており(尾高忠明さん指揮)、そちらが私としては「バボラク本命」の演奏会でした。このリサイタルは、思いがけず招待券をいただけてしまった演奏会であり、同じバボラク初来日のときのもう1つの本番も聴けてしまった次第です。
プログラムを書きますね。
リヒャルト・シュトラウス ホルン協奏曲第1番変ホ長調
サンサーンス ロマンス ヘ長調op.36
シューマン アダージョとアレグロ 変イ長調
フロビル ホルン・ソナタ
ブラームス ホルン三重奏曲変ホ長調 ※
アンコール
ドビュッシー ベルガマスク組曲より前奏曲
コフロン ソナチネより第3楽章
ラデク・バボラク(ホルン)
三輪郁(ピアノ)
菅沼ゆづき(ヴァイオリン)※
見るからに「ホルン名曲集」のようなプログラムであると言えましょう。有名なホルンの曲がずらっと並んでいます。
紀尾井ホールで行われました。日記によると、ひどいどしゃぶりであったと書いてあります。
招待券をくれた友人に会いました。客席は、都響(東京都交響楽団)の故・伊藤泰世先生をはじめ、N響とか新日フィルとかの、ホルンの先生がたの姿があちこちに見られました。名前だけ有名で、その演奏を誰も聴いたことのないバボラクの演奏を聴くために、東京中のホルン関係者が集まったのではないかと思うほどでした。東大オケのホルンの先輩にも会いました。
また、そのころは携帯電話の普及の過程にあり「着メロ」という文化がありましたが、休憩時間にロビーで、モーツァルトのホルン協奏曲第3番の着メロを流す人もいました。それくらい、客席はホルン関係者で埋め尽くされていたのではないかと思われました。
日記には「さすがバボラクはすごくうまい」と書かれています。上述の通り、すでに私は日フィルの演奏会で、バボラクの協奏曲演奏を聴いたあとではあったわけです。つまり、私はごく短期間で、リヒャルトの両方の協奏曲を、いずれもバボラクの演奏で聴けてしまったことになります。
私には、ホルンの仲のよい友人がいました。彼はこの場にいませんでしたが、彼との交流で、ホルンの名曲にはだいぶ親しむことができていました。それで、この日のプログラムも、かなり知っている曲が並んでいると認識できたのでした。
サンサーンスのロマンス ヘ長調は、あるときその友人と一緒に出演したミニ発表会で、彼の演奏を聴いたこともあります。ホルン界では有名な小品ですね。
シューマンのアダージョとアレグロも、極めて有名なホルンの作品と言えるでしょう。以下のような場面を覚えています。この「ミスター・パーフェクト」のバボラクが、次のように音を外す場面があったのです。高いファの出てくるところでした。

これは、むしろバボラクの高い音楽性を示すミスであると感じました。「高いファを当てにいくような非音楽的な演奏はしない」ということを示していたと思うからです。
フロビルのソナタは、これらのなかでは有名でない作品でしょう。はじめて聴きましたがいい曲でした。この曲がもう1度、聴きたくて、この日の演奏会のラジオ放送も聴きました。この記事を書くに当たり、もう1度、フロビルのソナタをナクソス・ミュージック・ライブラリで、バボラクの演奏で聴きました(いまはこういうことができる時代)。やはりいい曲ですね。
ブラームスのトリオが、また極めて有名な曲です。東大オケの時代に、室内楽大会で、うまい先輩の演奏を聴いたことがありますが、このたびは世界的な演奏家であるバボラクの演奏です。すばらしかったです。菅沼ゆづきさんのヴァイオリンがまたすばらしいものでした。ピアノの三輪郁さんも、非常にうまいのでした。
アンコールは、2曲あり、まずドビュッシーのベルガマスク組曲の前奏曲が、ホルンとピアノのために編曲されたものの演奏でした。この曲をホルンで聴くのは空前でした。もう1曲がコフロンのソナチネの第3楽章でした。これも、この記事を書くにあたり、上述のフロビルと同じバボラク自身の演奏で聴きました。いい曲ですね!
このあとバボラクはいろいろCDを出し始めてますます有名となり、ベルリンフィルに入団したり、ソリストになったり、いろいろな歩みを続けているようです。私と同い年であるなら、48歳になるはずです。ますますの活躍に期待したい世界的ホルン奏者です。菅沼さんは、現在、都響のヴァイオリン奏者になっておられるようです。皆さんご活躍のようですね。私もがんばりたいと思います!
当時の私は、もっぱら修士論文のアイデアの出ているころであり、また、教会の活動も活発となり、人生初の「教会学校でのお話」をしていたりします。自分のフルート活動もしているようです。このころはレッスンでテュルーのグランソロ第3番を習っています。充実した修士課程1年のある日のことでした。得難い機会でした。
