小澤征爾さんの指揮する武満徹作品

これは、またクラシック音楽オタク話です。武満徹(たけみつ・とおる)さんの音楽について書こうとしています。それでもよろしければどうぞお読みくださいね。

私のブログを熱心にお読みくださっているかたは、私が、武満徹さんの音楽が好きであることはご存じではないかと思います。これは、生で聴いた話ではなく、私がはじめて武満さんの曲を聴いたときのCDの話です。

こんなに大事なCDなのに、私はいま所持していません。だいぶ前、寮の後輩に貸して、返ってこなくなったのです。いまは、ナクソス・ミュージック・ライブラリで聴くことができます。

収録曲は以下の3つです。

武満徹 ノヴェンバー・ステップス

鶴田錦史(琵琶)
横山勝也(尺八)
小澤征爾(指揮)
サイトウ・キネン・オーケストラ

武満徹 エクリプス(蝕)

鶴田錦史(琵琶)
横山勝也(尺八)

武満徹 ア・ストリング・アラウンド・オータム

今井信子(ヴィオラ)
小澤征爾(指揮)
サイトウ・キネン・オーケストラ

これは、中学生か高校生くらいの私が、武満徹のノヴェンバー・ステップスのうわさを聞いて、購入したCDです。とても名曲だという話で、聴いてみたくなったのです。しかし、これは極めて難解な音楽であるように思えました。和楽器が鳴るうえ、オーケストラも謎の響きがしています。当惑したというのが正直なところです。エクリプスも同様です。

しかし、私は3曲目である「ア・ストリング・アラウンド・オータム」に惹かれたのです。なんともいえない魅力のある音楽でした。

ずっとのちに、これは武満徹の後期の作品であることを知りました。武満徹の後期の作品は、調性があり、親しみやすいのでした。そして、なんともいえない、武満徹にしか出せない音色がありました。これは、和音を聴きとれる私には、タネが少し見えていました。武満さんがここぞというときに使う和音は、以下のようなコードネームで書けるのでした。「Daug/C」です。これは、ドビュッシーも使うことのある和音です。私は高校3年のときに文化祭でムソルグスキー=ラヴェルの「展覧会の絵」をやりましたが、「古城」の「ここぞ」というところでも使われている和音です。これは武満さんの音楽の魅力の一端でしょう。

大学生になってから、本格的に武満さんの音楽にハマり始めました。まだ武満さんは存命中でした。以前、このブログでも書きました「海へ Ⅲ」とか「そして、それが風であることを知った」というような作品から、オーケストラ作品では、「夢の時」「ノスタルジア」「虹へ向かって、パルマ」「遠い呼び声の彼方へ!」「鳥は星型の庭へ降りる」などを収録した岩城宏之さん指揮メルボルン交響楽団のアルバムなどを聴いて喜んでいました。そのほかにもいろいろな武満さんの音楽を聴きました。当時は音楽を聴くとしたらCDを買うくらいしかありませんでしたので、いまでもそのころ購入したCDはいろいろあるものです。

そして、最初、当惑をした「ノヴェンバー・ステップス」の魅力にも目覚めるときが来たのです。

きっかけは、寮の後輩でした(先述の後輩とは別人です)。彼は、日本映画のマニアでした。当時、忠臣蔵は、映画とテレビで95作品があると言っていました。彼の影響で、ずいぶんいろいろな日本映画を一緒に見たものです。私は音楽に興味がありますので、たとえばNHK大河ドラマの音楽も彼と聴きました。彼は「武田信玄」の音楽が好きだと言っていました。(それは山本直純さんの作曲でした。)それで、あるとき、武満が作曲を担当した映画を見たのです。さむらいが深夜に一騎打ちをしていました。そこで、琵琶と尺八の音楽となったのです。なるほど、これがノヴェンバー・ステップスの原型か!と、目が覚める思いでした。これは確かに日本映画の一場面にぴったりです。武満はこのあとにエクリプスを書き、そしてノヴェンバー・ステップスを書いて世界的な作曲家となったというわけでした。

武満徹さんは、1996年に65歳で亡くなりました。その作風は進化し続けていました。ほぼ同世代の外山雄三さんが、昨年、2023年まで生きて作曲活動をされたことを考えると、武満さんが長生きしたら、どのような作品が生まれていたかと思います。

指揮の小澤征爾さんは、今年(2024年)、惜しまれつつ亡くなりました。私は小澤征爾さんの指揮を生で聴くことはありませんでした。少し小澤さんの印象的なエピソードを書きます。あるとき、テレビで、長野オリンピックの開会式の練習風景が放送されました。皆さん、開会式の歌を、非常にはきはきと歌っておられます。日本の人にしては珍しい現象だな・・・と思って、会場の中央にいる、ゴマ粒のように映っている指導者のおじさんをよく見ると、小澤征爾さんだったのです。小澤さんはやはり大指揮者なのだ、と思った瞬間でした。

今回は、私にとって忘れられないCDのご紹介でした。

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