中卒の生徒さんと話し合う統計学入門

また、当教室での授業の様子を公開させていただきますね。ご本人様の許可は得ております。

1年とちょっと前から入門なさった大人の生徒さんです。前にもご紹介させていただきました。受験を経験なさっていない生徒さんです。すなわち「中卒」という日本で最も低いと言われる学歴をお持ちの生徒さんです。しかし、この生徒さんの「賢さ」は学力では測れないものがあります。この生徒さんの最大の強みは、受験を経験していないこと、すなわち「勉強すなわちテスト勉強」という観念をまったくお持ちでないことです。

小学3年生の算数から学び始めました。まったく飛ばすこともなく、いまは小学4年生の後半くらいの勉強をご一緒にしております。最近の私の学びを書きたいと思います。

教科書に「安全な学校生活をおくろう」という章がありました(啓林館「わくわく算数4下」p.60以下)。統計の分野です。学校で起きる「けが」が題材になっていました。おそらくは保健室の先生のところへ届け出られた学校でのけがを扱っているということでしょう。1か月のけが調べの3つの表から読み取れることを調べて、安全な学校生活をおくることについて話しあおう、と書かれています。いわゆる「次元」は3つあります。「けがの起きた場所」(運動場、体育館、など)、「けがの種類」(すりきず、つき指、など)、そして「学年」(6学年)です。3つのなかから2つを選んで2次元的に並べてありますので、全部で3つの表になっていました。そこから、お互いに、小学生に戻ったつもりで、いろいろなことを読み取ろうとしました。

その生徒さんは、たとえば「1か月で、階段でねんざしているのが3件もある。これはおそらく階段を1段とばしで降りているからこうなるのだろう。階段で1段とばしはやめましょう」とおっしゃいました。

私の考えたことはこうです。私も3次元的な「表」で日常的に扱うものはあります。この星くず算数・数学教室の「お金の管理」のスプレッドシート(Googleのエクセルのようなもの)です。たてに生徒さんを並べ、横に入金された日、月謝、月の授業回数など、そして、シートで何年何月と、3次元の表になっています。私は自営業の初心者です。最も大切なことは、目の前の数字に一喜一憂しないことだと痛感しています。しかし、これらの表を見てしまうと、月の収入が一目瞭然、生徒数が増えても減っても一目瞭然です。どうしても見た目の数字に一喜一憂してしまいます。でも、生徒数が急に減るときは減るのです。どうしようもありません。一喜一憂しないように気を付けるしかありません。

そこで、この生徒さんと、この1か月のけがの表を見ていて達した結論があるのです。けがというのは、突発的に起こるものであって、意図して起きるものではないのです。われわれには養護教諭の経験はありませんし、この学校の規模すらわからないのです。最も大切なことは「これらの結果を見て、なんらかの傾向を見出し、対策など打ち始めるのが最もよくない」ということでした。これはお互いに同意した結論です。「これらの表からなにかを読み取るべきではないということを読み取った」のです。

その生徒さんは笑いながら、これを実際の授業で言ったら、先生に、もっとちゃんと考えなさいと言われそうだなあ、とおっしゃっていました。私もそんな気がしますが、これは、われわれなりにちゃんと考えた結論でした。これが本当の統計学というものではないでしょうか。

私たち2人は、毎週、このような授業をしています。答えから作られた問い(この場合では、たとえば、いかにも低学年が中庭でけがすることが多いので、4年生たるものは気を付けたほうがよいかのように書いてあるわけです)の答えをすばやく出すことが勉強ではないのです。大きく言えば、地球温暖化問題でさえ、われわれ人類の手に余る問題です。この生徒さんの名言で「意味もなく2×2を計算することはない」というものもありました。われわれは算数や数学で、しばしば意味もなく2×2をし、意味もなく微分や積分をしているのではないでしょうか。

いかがでしょうか。これは当教室での授業のひとつです。どうぞお気軽にお問い合わせをください。皆さんのご連絡を心からお待ちしています。大歓迎いたします!

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