大人になってから統計を学ぶ人へのおすすめの教科書

大人になってから統計を学ぶ人のために、おすすめの教科書の話を書きたいと思います。自己紹介をいたします。2026年現在、50歳の塾講師で、東大理学部数学科卒、東京大学大学院数理科学研究科修士課程修了、博士課程単位取得退学です。専門は位相幾何学です。私立中高での数学科教諭の経験が11年あります。4年前に独立して塾講師をしております。本日は、私の経験から、大人になって統計を学ぶ人に向けた記事を書きたいと思います。
どの教科書がいいと思っているかと言いますと、現代の小学校・中学校・高校の、文部科学省検定済教科書(以下、検定教科書)なのです。現代の初等中等教育の統計の教科書はかなりよく書けています。それで、検定教科書をおすすめする次第なのです。
私自身は、三十代半ばで、高校の教師として統計を教えるようになったのがようやく統計というものを本格的に知るようになった最初です。現在、二十代後半以上の年齢の方は、小中高で統計を習っておられないと思います。私自身の話をいたします。三十数年前、東大に受かったとき、あらゆる科目の教科書・ノートは処分しました。そこまで完璧に理解したからです。ところが、「確率・統計」と書かれたうすい教科書だけ、例外的に残し、それを持って東京に行きました。統計だけ、高校までの勉強で、理解できていない気がしたのです。その教科書を大学以降で使うことはありませんでしたが、それくらい、高校までで理解していなかったこと(ちゃんと習わなかったこと)は統計だったのです。
現代の小中高で習う統計に関することがらの大まかなあらすじを書きます。
小学3年でぼうグラフを習います。小2で少しその前の段階のグラフを習っていますが、小3のぼうグラフが本格的な統計の最初です。私は、どれほどのお子さん、大人の方と、ぼうグラフの勉強をしたでしょうか。
小学4年で、ぼうグラフのてっぺんを線で結んだようなものとして、折れ線グラフを習います。これは、関数のグラフを学ぶことへの布石である面もありますが、統計の勉強でもあります。そのほか、表に整理する勉強もします。
小学5年で、割合を習った上で、割合のグラフとして、帯グラフや円グラフを習います。そのほか、平均を習います。
小学6年生で、代表値という考え方、そして、代表値として、平均値、中央値、最頻値を学びます。度数分布表やヒストグラムも習います。(度数分布表という言葉を習うのは中1ですが、意味としては習っているようなものです。)
中学1年で、度数、度数分布表、相対度数、相対度数の向かう先として確率という概念を習います。
中学2年で、中央値のまわりの散らばりを見る、四分位範囲を学び、箱ひげ図を学びます。また、起きることが同様に確からしいことについて、計算で確率を求める方法を学びます。
中学3年で、標本調査を学びます。だいたい、このへんまで知っていると、かなりの世の中で知るべき統計のことは分かるようになります。私は語学が苦手ですが、よく、中学3年までの英語が理解できると相当な英語の実力があると聞きます。そうだろうと思います。同じく、義務教育までの統計が分かっていると、相当に強いと思います。(私に、ポアソン分布は分かりませんが、それよりは、義務教育までの統計がしっかり分かっていることのほうが大切なのだろうと思います。量子力学が分かるよりも、義務教育までの勉強がしっかり身についている人のほうが賢いというのと同じ現象だろうと思います。)
高校1年で習う統計(数学Ⅰ)は、中学までの知識を踏まえて、まず、数で表せるデータである量的データ、数で表せないデータである質的データの違いを学び、平均値まわりの散らばり具合の指標として、分散や標準偏差を学びます。2つの変量の間の関係を学び、両方とも量的データだった場合の指標として、相関係数を学びます。仮説検定も学びます。
数学Aで、中学2年で学んだ、抽象的な確率の計算の続きを学びます。これは私が学生時代からあった勉強です。
それらを踏まえて、数学Bで、二項分布や正規分布を学びます。すみません、私が教科書を読んだのはここまでで、このあと書いてある、標本調査、推定、仮説検定などは、ここまで出て来たぶんまでしか分かりません。
ここまでが高校までに習う統計分野ですが、これらが、非常に緻密に書かれた教科書が、いわゆる検定教科書なのです。読者である学生に分かりやすく、という理想上の目標よりも、検定を通るため、という現実的な目標のためではありますが、きちんと読めばきちんと意味が分かるように、論理的に緻密に書いてあります。現代の小中学生の教科書は、色とりどりで、かわいらしいキャラクターなど登場し、一見、幼稚っぽい教科書に思えるかもしれませんが、一級の教材です。
少し、教科書のおすすめを書きます。これは、それほどたくさんの教科書は経験していない私の意見ですが、参考までに。
小学校の算数の教科書は、啓林館の「わくわく算数」がすぐれています。統計分野もこれがいいと思います。中学の教科書は、中1、中2、中3とも、「代数分野」(方程式等)、「解析分野」(関数)、「幾何分野」(図形)、そして、統計分野という流れになっていますが、私は、「学校図書」の統計分野が非常によく書けていると思いました。統計分野の著者がすぐれていると感じます。ただ、私が読んだのは改訂前のものです(学習指導要領は今と同じ)。出てくる演習は、すべてやるのが望ましいと思います(たとえば、ペットボトルキャップを500回投げてみよというような課題は実際にやるとためになります)。高校の教科書は、私は数研出版のものを読みました。これも改訂前のものですが、「数研 数Ⅰ/712」「数研 数A/712」「数研 数B/710」というものでした。
これらの検定教科書は、教科書取り扱い書店で買えます。よく調べてみられると、お近くに教科書取り扱い書店はあるものです。Amazonでも買えますが、Amazonだと定価の2倍から3倍の値段がしています。おそらく転売なのでしょう。オンラインで買える教科書取り扱い書店として、広島県教科書販売があります。ここですと、定価プラス送料で買えます(もちろん在庫があれば)。私はオンラインで買える教科書取り扱い書店は、いまのところ、ここしか知りません。
これらの教科書を、きちんと読む必要があります。単に問題を解く/解けたら先に進む、だけではなく、意味を理解しながら読み進める必要があります。意味が分かる人に教わりながら読み進めるのがいいかもしれません。
統計は、学んでみると非常におもしろく、いろいろなことが分かってしまいます。私の専門ではないのですが、ここまでに得た知識を少し書かせていただきました。
