小学校算数で学ぶ大学数学「たてかけるよこ」

星くず算数・数学教室がまわるようになって1年と少しがたちました。私もいろいろな学びがあり、毎日が勉強です。本日の記事は少し長めかもしれません。ある2人の生徒さんとの授業でわかってきたことです。

そのうち、ひとり目の生徒さんは、約1年と少し前から、小学校の算数を3年生の教科書から学び始められました。1年と少しで3年生と4年生の教科書をコンプリートし、最近、5年生の教科書に入った、という、立派なかたです。先日、「体積」をご一緒に学びました。

ふたり目の生徒さんは、これも約1年前と少し前から、ルベーグ積分を学んでおいでです。きちんと大学数学の基礎から学ぼうという、これも立派なかたです。ルベーグ積分とは、大学の理学部数学科の教養のような位置づけの学問であり、解析のほうに進まなかった私にとっては、21歳くらいでお別れした「ちゃんとわかっていない」学問でした。お受けするときはさすがにひるみましたが、それから1年、お互いに少しずつルベーグ積分とはなにか、がだんだん明らかになっていっています。お受けしてよかった、と思う生徒さんです。

おふたりとも、かけがえのない出会いであったと思っています。

小学4年生の教科書では「広さのことを面積と言います」というふうに書いてあります。広さの数値化が面積であったのです。そして、長方形の面積を「たてかけるよこ」で求めるという面積の求め方が書いてあります。

しかし、面積とはいつ使う概念か。

面積を仕事で使いそうなかたとして、どうも、不動産屋さんとか、何ヘクタールかの畑をお持ちの農家のかたくらいしか想像できない私ではあります。そういうかたは、面積について、感覚のようなものをお持ちかもしれません。

体積は、もっと身近ですよね。私はきのうも、2リットルの水を薬局で買って参りました。「リットル」は体積の単位です。小学5年生の教科書には「かさのことを体積といいます」と書いてあります。かさを習うのは小学2年生です。なんと、小学2年生で習った「かさ」が、体積である(たてかけるよこかける高さである)というミラクルのようなことを学ぶことになります。この世界が3次元だからで、それを満たすのが体積だからでしょうね。神秘です。

これが、ルベーグ積分となりますと、「たてかけるよこ」というのは、面積の「求め方」というより、「面積の定義」となっていきます。「たてかけるよこ」をもって面積の定義となるのです。体積も同様です。

そのひとり目の生徒さんは、体積を学び、「人間の体の水分は、どれくらいの体積か」考え始められました。(これはありがたいことです。私が申し上げると、すべて「算数の先生が言っている算数の問題」に聞こえてしまうのかもしれません。残念なことですけれども。この生徒さんのこの問いは、ご自身の疑問から発していますので、本来の意味での問いです。)人間の体の60%が水であることは検索で調べられ(もっとも体積の60%なのか重さの60%なのか、あとから考えるとはっきりしません。ここは大ざっぱに考えることにいたします。私もその場では気が付かなかったと言いますか)、人間の体重をだいたい50キログラムとし、だいたい1キログラムを1リットルとして、30リットルが「人間に含まれる水の体積」ということになりました。これは3万立方センチメートルです。これは立方メートルを単位とすると単位が大きすぎます。これは、3万立方センチメートルというか、あるいは、30リットルというふうに言うのが素直だということになりました。

つぎの話題です。以下のような形の体積を求める問題が出て来ました。

これは、面積のときも出て来ました。以下のような形の面積です。

これは、私はずっと「不自然な問いだ」と思って来ました。長方形の形をしたもの、あるいは、直方体の形をしたものは、身近にいろいろあります。段ボール箱は、のきなみ直方体ではないでしょうか。もっとも直方体の体積を求めることも、あまり日常的ではないと言えるのかもしれません。水槽の水のかさを考えるときくらいかもしれません。しかし、このような不自然な形のものは身近にないと思います。これらの体積や面積を求めることは、あからさまに言うと「私立中学の入学試験対策の一環なのではないか」と思っていたのです。これが下種の勘繰りであったことに気づかされたのです。

これは「区間塊」というものでした。(おそらく「くかんかい」と読む?)体積が計算できる典型的なユークリッド空間の部分集合でした。

「区間」は、線分、長方形、直方体のようなものです。それらの有限の和で書ける区間塊は、すぐに体積(長さ、面積)が計算できる、基礎的な図形でした。

ここまで考えて小学校の算数の教科書は書いてあったのか!と驚くばかりでした。

区間塊の有限の和は、区間塊になります。区間塊の無限和まで考えると、いろいろな形を近似できることになります。ルベーグ可測集合というと思います。(私もルベーグ積分は初心者です。きちんとわかっていないことをさらしています。)

さて、みたびそのひとり目の生徒さんに戻ります。5年生の教科書で、たて20センチ、よこ50センチ、深さ30センチの水槽の容積を求める問いがありました。これを計算すると、3万立方センチメートルとなりました。すなわち、先述の、「人間に含まれる水の量」となりました。30リットルです。この「たて20センチ、よこ50センチ、高さ30センチの直方体」というものは、想像してみると、だいたい人間の体の体積の60%くらいであろうと、想像ができます。それほど予想から外れているわけではありません。ここからわかることがあります。

体積は、直方体の体積で「近似」することが多かったのです!

私の母校である高校は、12万平米(平方メートル)であったようです。かなり広い高校です。しかし、「12万平米」で通じないことが多いのでした。(先ほど書きました通り、面積でぴんとくるお仕事と思われるのが、私は不動産か農業くらいしか思いつかないわけです。)

これもこの1年で思ったことですが、「120メートルかける1000メートルの長方形の面積」といえば、少し感覚的に「広いな」ということが伝わるだろうということです。また「300メートルかける400メートルの長方形の面積」というと、少し違う伝わり方をしそうです。とにかく、面積を、「長方形の面積」で近似して伝えていることになります。

これもルベーグ積分の考え方であり、ようするに「たてかけるよこ」が面積の定義となるわけです。すべて長方形の面積、立方体の体積で、近似しているのでした。

このたびは、おふたりのまったく異なる生徒さんのおかげで、私は面積や体積の理解が少しずつ深まってきているのを感じます。「小学校算数で学ぶ大学数学」です。

ありがたい出会いに感謝しています。これからもご一緒に学んでいけたら、と願っています。

(投稿前に読み返すと、やはり私はルベーグ積分がちゃんとわかっていませんね。恥をさらしてこの記事をブログに載せます。皆さん、あまり信用なさいませんよう・・・^^)

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