就職活動開始の直前に聴いたオーケストラと室内楽の演奏会

以下はまたクラシック音楽オタク話となりますが、あまりクラシック音楽に興味のないかたにもなるべくお楽しみいただけるように書きたいと思います。よろしくお願いいたします。

数学者になる夢をあきらめ、中高の教員になろうとしていた時期の話になります。2005年の頭です。日記を見ると、3月22日に、東京都教育委員会の説明会の抽選に落ちています(翌2006年の就職を目指しています。実際、私は2006年の4月にある中高に就職しました)。2005年3月24日に、都響(東京都交響楽団)を聴いています。すでに就職していた(私はこのときすでに29歳であり、同級生のほとんどは就職していました)東大オケ時代の友人が仕事上でもらったという招待券で、都響を聴けることになったのです。当日は、上野の東京文化会館に行きました。

プログラムは以下です。

マーラー アダージェット(交響曲第5番嬰ハ短調から)

ウォルトン ヴィオラ協奏曲

ベートーヴェン 交響曲第7番イ長調

スティーヴン・スローン(指揮)

タベア・ツィンマーマン(ヴィオラ)

これは、当時のプログラムに紙がはさまっていますが、1曲目は、本来は、ブリテンの「4つの海の間奏曲」だったのです。そのはさまった紙には以下のように書いてあります。「当楽団音楽監督ガリー・ベルティーニ氏は、テル・アヴィブにて現地時間3月17日朝、逝去されました。享年77歳」。これで、ベルティーニの追悼で、1曲目が変わったわけです。こういう招待券で行った演奏会の常として「ブリテンが聴きたかったなあ」と思ってしまうわけです。あつかましさは無限大ですね。結局、私はいまのところ、ブリテンの「4つの海の間奏曲」を生で聴いたことはありません。

なお、私はベルティーニの指揮するところを聴いたこともありません。ベルティーニが都響の指揮者になったときは、東京のクラシック音楽ファンから非常に歓迎されていましたけれども。

さて、演奏会です。日記には「すばらしい!」と書いてあります。スティーヴン・スローンという指揮者は知りませんでしたが(いまだにこの演奏会以外で聞いたことのない名前です)、ヴィオラのタベア・ツィンマーマンと夫婦だそうです。つまり、2曲目のウォルトンのヴィオラ協奏曲は、夫婦共演だったことになります。私は、タベア・ツィンマーマンの演奏は、このときしか聴いていません。ウォルトンのヴィオラ協奏曲を生で聴いた唯一の機会でもあります。貴重な機会でした。

(この記事が予約投稿される前夜、なにげなく「スティーヴン・スローン」で検索して知った事実をここに書き足しますね。スローンって、ベルティーニの弟子だったのです!なるほど、ベルティーニ追悼にふさわしい指揮者ですね。19年ごしに知った真実です!)

後半はベートーヴェンの交響曲第7番です。意外にもこの曲をプロの生演奏で聴いた私にとって唯一の機会だと思います(アマチュアオケでは何度も聴いていますけれども。ずっとのちに指揮することにもなる曲です)。現在、この曲は「年末ジャンボ宝くじ」の宣伝に使われているそうですね?(最近、若い人と聴いていて知った話です。「のだめ」は古くなりにけり。)日記には、とにかく寺本義明さんがうまかったことがこれでもかと書いてあります。寺本義明さんは、当時、非常にうまいことで知られていた、都響の首席フルート奏者でした。自分の楽器ばかり聴くという、アマチュアにありがちな(?)悪癖が発揮されております。2000年に都響に入団なさっています。それより前に寺本さんがいたオケは名古屋フィルでした。寺本さんの名古屋フィル時代は、私はテレビで名古屋フィルの演奏する、このときと同じベートーヴェンの交響曲第7番を観ています(指揮は故・飯守泰次郎さん)。そのころから、ぼんやりと、都響に寺本さんが入団したら最強だな、とは思っていたのですが、ほんとうに都響に入って来られた!というわけです。

2000年から寺本さんは東京が拠点となり、アマチュアオケの指導もなさっていました。仲間で寺本さんの指揮で演奏した人などいました。「こんなに音楽的にすぐれた指揮者のもとで演奏できるとは!」と感激していました。2024年現在は、寺本さんは都響もおやめになっており、本格的に指揮活動に注力なさっているようです。

この演奏会のプログラムで、以下の室内楽の演奏会を知りました。翌3月25日、同じ東京文化会館のロビーで、無料の室内楽の演奏会が開かれること。なんと、その寺本さんを含む、フルート四重奏の演奏会でした。それも行くことにしました。

都響メンバーによるティータイムコンサート

寺本義明(フルート)
奥田雅代(ヴァイオリン)
中山洋(ヴィオラ)
田中雅弘(チェロ)

モーツァルト フルート四重奏曲第1番ニ長調

モーツァルト(ヴェント編曲)歌劇「魔笛」より
「何という不思議な笛の音だ」
「復讐の心は地獄のように胸に燃え」
「恋人か女房があればいいが」

モーツァルト フルート四重奏曲第4番イ長調

アンコール モーツァルト(ヴェント編曲)「おいらは鳥刺し」

という四重奏の室内楽でした。ヴァイオリンの奥田雅代さんがマイクを持ってトークを担当なさいました(少しだけ寺本さんもしゃべりました)。平日の昼間であったこともあり、近くにある芸大の学生さんと思われる人が多かった気がしました。チャイコフスキーの「ロミオとジュリエット」の大きなスコアを見ている人などいたものです。この日のプログラムはオール・モーツァルトで、有名なフルート四重奏曲ニ長調、それからイ長調のほかに、ヴェントという人の編曲による、「魔笛」の抜粋でした(フルート四重奏のための編曲です)。ヴェントの編曲は、魔笛の初演から10年くらいのものだということでした。私は日記に「うまい!同じ楽器をやってるのがやんなっちゃうくらいである」と書いています。ほんとうに寺本さんはうまいのです。

私が印象的に覚えているのは、以下の楽譜のように、ニ長調の四重奏曲で、前打音の処理を、寺本さんが間違いかけた、そしてそれで少し動揺なさったらしく、そのあと少し音を外された、ということでしょうか。とにかくすばらしい演奏でした。

(1行目のように吹こうとされ、間違えて2行目のように吹きかけて、ちょっとトチられた感じだったわけです。)

このモーツァルトのニ長調のフルート四重奏曲をプロの生で聴く機会は何度かあり、マティアス・リュッタースとN響の皆さんによるすばらしい演奏も、これより8年前の、1997年に聴いています。イ長調の四重奏曲をプロの生演奏で聴いたのはこれが唯一の機会です。

このあと私は、いよいよ就職活動が本格化し、あちこち受けて、あちこち落ちる日々となります。そしてようやく決まった学校では、徹底的なダメ教員だったのでした。この日、寺本義明さんのソロが聴けたのは、貴重な思い出になっています。

(このほか、このときのヴァイオリンの奥田雅代さんが、松岡みやびさんのハープ・リサイタルにゲスト出演するのを聴いたこともあります。都響を聴いたのもこのときだけではありません。いつかそれらもブログ記事にできたら、と思っています。)

(ブログのサムネに当日のプログラムを使うことは、東京都交響楽団さんの許可を得ました。ありがとうございます!)

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