2人乗り浮き輪を変形させて120°回転対称にできますか?

これは、一見、専門的に見える数学の話ですが、よく読んでいただきますと、小学生の皆さんから考えていただける、楽しい算数の問いです。よろしければどうぞお読みください。

きっかけは、私が学部4年のときのセミナーで、サーストン(W.Thurston)の「Three-Dimensional Geometry and Topology(3次元幾何学とトポロジー)」を読んでいたときのことです。サーストンの「種数2の閉曲面を、3重の対称性を持つように3次元ユークリッド空間に埋め込め」という問いがあり、私がある解釈に基づいてそれを発表すると、それを聞いていた先生は「それは違うと思うよ。120°回転対称に埋め込め、という意味だと思うよ」とおっしゃいました。少しかみ砕いて書きますね。

以下のような、当教室のロゴがあります。これ、ロゴにして思ったのが、白目をむいている人間の顔に見えてなかなか不気味だな(笑)、ということでしたが、とにかくこれは「2人乗りの浮き輪」を意味しているとお思いください。(私は1度だけ「2人乗り浮き輪」の実物を見たことがあります。こういう研究に入ってすぐの修士課程1年の夏、ある友人の家に招かれ、近所の海へ海水浴に行ったところ、こういう浮き輪が貸し出されてあったのです。「2人乗り浮き輪」の実物を見たのはそのときだけです。)「縫い目」や「色」は無視してくださいね。

これが、いくらでも伸び縮みする材質でできているものとお思いください。ただし、切ったり貼ったりすることはできないものとします。それで、これをくにゃくにゃと変形させて、ある軸(直線)について、120°回転対称(120°回転させるともとの形にぴったり重なる)になるように、変形させてください、という問いです。私の言っていることは通じますかね?(これ、通じさえすれば、小学生でも意味がわかりますよね?)

私はその先生に聞かれて1分くらい考え、黒板に絵をかきました。その先生は「かかせてみるものですねえ!」と言いながら笑顔になられました。そして、「同じことだけど」と言いながら、ご自身の「模範解答」をお示しになりました。基本的に私と同じアイデアでした。

これは、ずっとのちにある地方都市で中高の教員をしていた時代に、一般のかたも参加できる夏休みの問いとしてお出しし、ある大学の数学の先生(ご専門は幾何ではないと思います)は、考えてみられて、思いつくのに3日かかったとレポートに書いてくださいましたが、これは考えれば小中学生でも思いつけると思います。

(※これが数学的に意味を持つのは、種数2の閉曲面の写像類群の元で、位数が3のものが、視覚的にわかりやすいもので存在する、ということでしょう。)

さて、いかがでしょうか?思いついたらお返事をくださいね。そして、思いつかなかったかたはどうぞお問い合わせをください。お答えいたしましょう!本日は以上です!

目次