その金額が税込み価格であるか否かを瞬時に判断する方法

2019年、私はある学校で総務をしていました。向いていない仕事でしたが、必死にがんばっていました。その年の10月に、消費税が10%に上がりました。いろいろ職員の皆さんの通勤手当の計算のし直しなどしたものです。そして、私はいろいろな請求書も書いていましたが、消費税が10%に上がってすぐ、「その金額が税込み価格であるかどうか」をかなり正確に、しかも瞬時に判断できるワザに気づき、それをひそかに仕事に活かしていました。それは以下の、高校の「数学A」で習う数学に基づいています。なるべくシンプルにご紹介いたしますね。(久しぶりに「数学がちがち」な記事になるかもしれません。もう少し気楽な記事をお読みになりたいかたは、どうぞ別の記事をご覧くださいませ…。)
34,650円はかなり高い可能性で税込み価格です。18,480円もかなり高い可能性で税込み価格です。21,260円はおそらく税込み価格ではないでしょう。これはすぐに見破れます。「${11}$の倍数かどうか」です。
税抜き価格が100円の品物の、消費税10%込みの値段は、110円となります。本体の100円の10%が税で、10円ですから、税込み110円となるわけです。このように、税込み価格は、税抜き価格の${1.1}$倍となるわけです。
したがいまして、たとえば星くず算数・数学教室の、1か月で2回までの月謝は、税込みで15,000円ですから、これの領収書を書く場合は、私は15,000円を1.1で割り、税抜き13,637円と書くわけです。これに税が1,363円(端数切捨て)加わって15,000円となるわけです。このように端数が出る場合は別なのですが、私が総務として扱った金額のほとんどすべては、端数が出ませんでした。税抜き価格の一の位が${0}$である場合(つまり税抜き価格が${10}$の倍数である場合)、${1.1}$をかけて、税込み価格は${11}$の倍数となるのです。
そして、${11}$の倍数の見分け方として、有名なものがあります。一の位、百の位など、奇数番目の位の数の和と、十の位、千の位など、偶数番目の位の数の和、の2つの数の差が、${11}$の倍数となったら、それは${11}$の倍数なのです。逆に、それが${11}$の倍数にならなかったら、もとの数も${11}$の倍数ではありません。
先ほどの例で見てみましょう。${34650}$という数は、奇数番目の桁(一万の位、百の位、一の位)の和が、${3+6+0}$で、${9}$です。偶数番目の桁(千の位、十の位)の和が、${4+5}$で、これも${9}$です。${9}$と${9}$の差は、${0}$です。${0}$も${11}$の倍数ととらえます。つまり、この${34650}$という数は、${11}$の倍数であることがわかるのです。実際、この数を${11}$で割ってみますと、${34650\div 11}$で、${3150}$です。つまり、税抜き価格が31,500円の、消費税が3,150円で、あわせて34,650円である可能性が高いわけです。
次の例です。${18480}$の奇数番目の位の和は、${1+4+0=5}$です。偶数番目の位の和は、${8+8=16}$です。その差は、${16-5=11}$です。${11}$は${11}$の倍数です。したがって、この額も、税込み価格である可能性が高いわけです。16,800円の税込みで、18,480円ですね。おそらく。
3番目の例です。${21260}$ですが、これは、奇数番目の桁の和が${2+2+0=4}$、偶数番目の桁の和が${1+6=7}$、その差は${7-4=3}$であり、${11}$の倍数ではありません。したがって${21260}$は${11}$の倍数ではなく、税込み価格である可能性は非常に低いのです。
理由をご説明いたしましょう。目にした金額を${A}$(円)とします。簡単のために4桁の数としましょう。もっと桁が大きくても同様の議論となります。千の位を${a}$、百の位を${b}$、十の位を${c}$、一の位を${d}$としましょう。こうしますと、${A=1000a+100b+10c+d}$とあらわすことができます。これを以下のように変形します。
$${A=1000a+100b+10c+d}$$
$${=(1001a-a)+(99b+b)+(11c-c)+d}$$
$${=(1001a+99b+11c)+(b+d)-(a+c)}$$
$${=11(91a+9b+c)+(b+d)-(a+c)}$$
ここで、${91a+9b+c}$は整数なので、${11(91a+9b+c)}$は${11}$の倍数です。そこで、${A}$が${11}$の倍数である必要十分条件が、${(b+d)-(a+c)}$が${11}$の倍数であることになるのです。${(b+d)-(a+c)}$は、偶数番目の桁の数の和と、奇数番目の桁の数の和の、差です。こういうわけです。(私がこうして書くよりも、興味をお持ちのかたは、ご自分でおやりになってみて、納得なさるほうがよさそうですけどね!)
私が総務で扱った額は、大きいもので100万円を超えるくらいでした。原理的には、${22}$になることもあり得るのですが、実際、私の半年ちょっとくらいの経験では、その差は、${0}$か${11}$にしかなりませんでしたね。
どうして私にとってこのワザが重要だったかを申しますね。私は非常に不注意な人間であり、請求書には税込み価格を書かねばならないにもかかわらず、違う金額、とくに税抜き価格を写してしまうことが多々ありましたので、これは非常に役に立つ検算であったわけです。(もちろん万能ではなく、とくに、たまたま税抜き価格が${11}$の倍数であることはあったりしましたけれども。)
この話題は、消費税が10%になって4年以上がたつにも関わらず、長いこと興味をもって聞いてくださるかたはあまりおいでにならなかったわけですが、星くず算数・数学教室では、ときどき興味をお持ちくださるかたがおいでになりますので、ブログ記事を書いてみる気になった次第です。皆さん、このワザは、かつての私のような実用的な意味ではなく、「${11}$の倍数の見分け方」という点で、興味を持たれるみたいですけどね。本日は以上です!
