都立大のオーケストラを聴き感激した日(1998年5月24日)

学部4年のときのことです。都立大のオケを聴いて感激した日があります。その日のことを日記と鮮明な記憶から書きますね。

1998年5月24日のことです。この日は、東大オケの友人が、聖心女子大のオケにエキストラとして出演する日でした。ベートーヴェンの「エグモント」序曲と、シューベルトの「未完成」をやったそうです。日記には記されていませんが、もう1曲はシューマンの交響曲第4番であったと思います。こういうとき普通はその友人の出演するオーケストラを聴くものでしょうが、私はこの日は以下の都立大のオケを聴いたのでした。以下に書きます通り、ソリストとして出演されるフルートの故・中野富雄さんを聴くのが目当てでした。

この日は、午前中はゆっくりして、午後から都立大オケを聴きに多摩へ行きました。パルテノン多摩というホールで、私もこの少し前に出演したことのあるホールでした。電車の乗り換えもスムーズで、ちょうどいい時間に着きました。(スマホで乗り換え等が調べられる時代ではありませんよ。)入口で、4年ぶりくらいに会うオケの友人がいました。でも、すぐにお互いに気づきました。彼女も大学4年でしたが、出演はしないとのことでした。私が明らかにフルートの中野さんを聴きに来たのがわかって笑っていました。

プログラムを書きますね。

ベートーヴェン 「エグモント」序曲

モーツァルト フルート協奏曲第1番ト長調

シベリウス 交響曲第2番ニ長調

中野富雄(フルート)
増井信貴(指揮)

エグモント序曲は、その聖心のオケでエキストラ出演する友人もやっている曲だということになります。「エグモントは久しぶりに聴き、とりはだが立った。やはり名曲である」と日記には書かれています。

つぎの曲がモーツァルトのフルート協奏曲第1番です。モーツァルトにはフルート協奏曲が2曲あり、圧倒的に演奏頻度は第2番のほうが高いです。それは、オケの難易度と編成上の問題、そして、ソリストにとっても第1番のほうが難しかったりするというような理由です。以下に難易度の問題を書きますが、第2番がニ長調であるのに対し、この第1番はト長調であり、ホルンは当たり前のように高いレを出し続けなくてはなりません。これだけでも充分にモーツァルトのフルート協奏曲第1番が難しい理由となります。それから、編成上の問題としては、この曲は、オーボエが第2楽章タチェット(全休止)、フルートが第1、第3楽章タチェットです。明らかにモーツァルトの時代はオーボエの人がフルートに持ち替えていたのでしょう。現代ではオーボエとフルートは分業であるため、無駄に休みがあることになります。などのいろいろの事情で、なかなかモーツァルトのフルート協奏曲第1番はやらないのです。実は、私もこの曲を生で聴いたのは、このときが人生で一度だけであります。しかし、非常にいい思い出となりました。すばらしい演奏だったのです。

先述の通り、オケのパートには難しい点がたくさんあります。でも皆さん健闘されていました。ソリストの中野さんは、当時、N響(NHK交響楽団)の首席フルート奏者であられました。都立大のオケは、N響の先生との結びつきが強く、トレーナーの先生の多くがN響の先生でした。私は自分の楽器の先生から、中野さんのうまさを話に聞いていました。一度、生で聴いてみたかったのです。

日記によると「とにかく中野さんはものすごくうまかった。本当にすばらしかった。カデンツァは3つとも難しいものを選び、しかも、実に軽やかで鮮やかであった。実にすばらしかった」と書かれています。確かにすばらしかったです。終始、ピッチを高めに取られていました。とてもいい思い出となりました。

中野富雄さんは、若くして(60代くらいで)亡くなられたと思います。惜しいことでしたが、このときの演奏を聴けたのは貴重でした。

仲間のように付き合っていただいていたプロのフルートの先生(私の先生とは異なります)が、中野さんと親しく、中野さんのもろもろの「天才的」エピソードなども聞いたのですが、そういうものを披露するのはまたの機会にいたしますね。本日のブログ、これだけで充分に長めですので・・・。

さて、休憩となりました。モーツァルトで満足してしまったので、帰ろうかとも思いましたが、残って後半のシベリウスの交響曲第2番も聴きました。これもすばらしく、「またとりはだが立った」と日記には記されています。コントラバスのかたの一生懸命な弾き方も印象的でした。すばらしいシベリウスでした。

じつは、都立大のオケはこの4年前、大学1年のときに聴いています。そのころはまだ日記をつけておりませんでしたが、ここにプログラムが残っています。以下の通りです。

ウェーバー 「魔弾の射手」序曲

グリーグ ピアノ協奏曲イ短調

チャイコフスキー 交響曲第5番ホ短調

弘中孝(ピアノ)
増井信貴(指揮)

1994年12月4日 
武蔵野市民文化会館大ホール

これもよく覚えています。弘中孝さんのピアノ演奏を聴いた唯一の貴重な機会になりました。また、このときも、チャイコフスキーの交響曲第5番で、コントラバスのかたの一生懸命な弾き方が印象に残っています。

ところで、私は増井信貴先生の指揮するCDを持っています。いまもここにありますが、日本の吹奏楽の作品を集めた東京佼成ウインド・オーケストラのCDです。大学2年のときにやった真島俊夫さんの「波の見える風景」のCDが欲しくて買ったCDでした。購入時「都立大の指揮の先生だ!」と思った記憶があります。

さて、友人がエキストラ出演した聖心女子大のオケの話です。ほとんどの友人はそちらを聴きに行っていました。彼は私と違って留年していないので当時修士課程1年だったでしょう。非常にうまかったらしく、皆さん絶賛していました。演奏がうまいうえに面倒見がよく、聖心の学生の皆さんにアドバイスをしたり、一緒に練習したりして、周囲の尊敬を一身に集めていたとのこと。(女子学生にモテていたのだなあ。うらやましいなあ。)この演奏会も、都立大オケと日程が重ならなければ、行きたかった演奏会だったと言えましょう。

聖心女子大のオケは、このあと、2回ほど聴きました。当時、東大オケからよくエキストラに行く大学オケだったのです。そんな話もまたいたしましょう。本日は、1998年5月24日に、都立大のオケを聴いて感激した日の話でした。

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